日立市の公共施設
 日立市は、人口の減少を見据えて、市内の公共施設を削減することを決め、2040年度までに全体の面積を15%程度削減するとした基本方針「公共施設マネジメント基本方針」をまとめました。
 日立市は、高度経済成長期の人口増加に伴い、市営住宅や教育施設を中心に公共施設の整備を進めた結果、公共施設の市民1人あたりの床面積が全国平均に比べて7.4%多くなっています。
 施設の多くは老朽化が進み、今後、改修や建て替えなど維持コストがかさむ一方、人口の減少と高齢化により財政の悪化が懸念されるとして日立市は公共施設を削減する方針を決めました。
 日立市がまとめた「公共施設マネジメント基本方針」によりますと、2040年には、人口が今のおよそ18万6000人からおよそ14万9000人に減るとした推計をもとに、公共施設の全体の面積を15%程度削減し、1人あたりの延べ床面積を全国平均並みに抑えるとしています。 日立市は今後、教育や福祉など分野ごとにそれぞれの公共施設の必要性を見極めた上で、統合や廃止、民間への譲渡など具体的な削減方法を決めることにしています。
参考:日立市公共施設マネジメント基本方針を策定しました
日立市の公共施設
【日立市の公共施設<いわゆるハコモノ>について】
 日立市では、高度経済成長期の昭和30年代から、国内電力需要の増加に伴う発送電設備の製造や、鉄鋼・金融・交通など社会インフラや各家庭の電化などにより、市内大手事業所の生産拡充が進み、従業員の採用増などで大幅に人口が増加しました。
 こうした人口増に見合う住宅需要を賄うため、昭和30年代後半から昭和50年代前半にかけ、日立市は県とともに公営住宅の建設や住宅団地の造成に取り組みました。
 あわせて、教育、民生部門の需要に対応するため、昭和40年代後半から昭和50年代後半にかけて、学校施設や福祉施設、文化・体育施設の整備を進めました。
 特に昭和40年代には、法人市民税収などが豊かであったことを背景に「シビル・ミニマム」の充足を図るため、他の自治体に先駆けて障害者福祉施設や特別支援学校の整備を進めたことは特筆に値すると思われます。
 さらに、地域衛生の改善のための下水道整備に着手し、昭和50年代から整備を本格化して他市に先駆けて推進してきました。
 昭和60年代からは、小学校区ごとに展開されてきたコミュニティ活動の拠点となる集会施設(現在の交流センター)の整備を進めてきました。
 平成に入り、地域活性化をテーマとした駅前開発事業、奥目立きららの里などの観光施設や健康づくりの拠点としての保健センターの整備、清掃センターの更新など、大規模施設の整備を進めてきました。また、これまでの市民生活に密接に関連する公共施設整備に加え、幹線道路の整備促進を重点として推進してきました。
 現在、平成23年3月11日に発生した東日本大震災で日立市の公共施設も被災を受けたことから、平成23年9月に策定した「目立市震災復興計画」に基づく被災施設の復旧や、避難所となる学校施設等の整備を重点的に進めています。
【日立市の公共施設の特徴】
  • 日立市の公共施設の特徴は、昭和30年代から50年代に大半が整備されており、施設の老朽化が進行していることです。平成23年(2011年)に築30年超となった施設は約61%であり、全国平均約43%に比べて約18ポイントも上回っています。老朽化の進行に伴い、施設の機能低下や安全上の問題、維持更新費用の確保などに取り組むことが必要となっています。
  • 日立市の人口一人当たり公共施設の延床面積は4.051平方メートルで、全国平均3.771平方メートルに比べて、約7.4%上回っています。その内訳は、学校教育系施設(32.9%)と市営住宅(31.1%)を合わせると、全体の約6割を占めています。
  • 昭和30年代からの急激な人口増に伴う公共サービス需要の拡大に対応するため、公共施設の建設を最優先に進めてきたことなどから、公共施設用地の約35%が借地です。平成24年度の借地料支出は約6億1千万円。公共施設用地に借地が多いことは、経常収支比率の硬直化の一因ともなっています。
  • 日立市の公共施設を今後40年間、現状で維持するために必要となる更新(建替え)費用の推計額は、約3,400億円程度と見込まれます。これを40年で割り返して1年当たりの平均額を求めると、約85億円程度となります。これは、過去5年間の公共施設に係る投資的経費の平均額(約40億5千万円)の2.1倍に当たります。将来の人口推計を踏まえた今後の財政状況の推移などを勘案すると、今後、この平均投資額水準を維持することは難しく、現有施設の全ての維持更新は、推計上極めて困難と言えることから、統合・廃止・減築に取り組むことが求められます。
  • 日本の人口は、平成17年(2005年)以降減少し、平成52年(2040年)に総人口は1億728万人、高齢化率36.1%と推計されています。平成52年には、平成17年に比べて約7割の市町村で20%以上人口が減少し、約5割の市町村で高齢化率が40%以上になると推計されています。
    日立市の平成52年(2040年)の人口は約15万人となり、平成17年に比べて26.5%減少し、高齢化率が38.4%になると推計されています。将来の人口減少や少子高齢化の進行の推計を踏まえ、公共施設の規模、役割、機能の見直しなど、公共施設に対する長期的需要動向を勘案した対応が求められます。