衆議院予算委員会北側一雄副代表質問 7月14日、衆院予算委員会は安倍晋三首相らが出席して「外交・安全保障政策」に関する集中審議を行い、公明党から北側一雄副代表が質問に立ちました。北側副代表は、1日に閣議決定された安全保障法制整備に関する基本方針に関し、武力行使がこれまで通り自衛目的に限定されたことについて見解を求め、政府は他国防衛は認めないとの考えをあらためて強調しました。
 また、自民党の高村正彦副総裁、民主党の海江田万里代表、岡田克也副代表など、各党を代表する論客が登壇。それぞれの立場から、安倍総理、内閣法制局長官に閣議決定の内容をただしました。
 しかし、民主党をはじめとする野党の質問は、マスコミ・ウケを狙ってか、表面的なものがほとんど。質疑の結果が今後の日本の安保法制議論に議事録として残されていくという、責任感や重みに欠けたものとなったのは非常に残念です。

衆院予算委で7・1閣議決定に関する集中審議
 北側副代表は憲法9条の下で許容される自衛の措置に関して、閣議決定に盛り込まれた自衛権発動の新3要件について、他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とした「いわゆる集団的自衛権の行使を認めたものかどうか」と政府の見解を求めました。
 横畠裕介内閣法制局長官は今回の閣議決定について、あくまでもわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、「一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるもの」と指摘。「(他国防衛の権利として)観念される、いわゆる集団的自衛権の行使を認めるものではない」と明言しました。
予算委員会で答弁する安倍首相 さらに北側副代表は、自衛権に関する政府の憲法解釈の基礎となっている1972年見解を示した上で、閣議決定には「この基本的な論理は、憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない」とある点を紹介。「今回の閣議決定は憲法9条のこれまでの規範性を維持しているのかどうか」と尋ねました。
 これに対し横畠長官は、新たな閣議決定がこれまでの憲法9条をめぐる議論と整合する合理的な解釈の範囲内のものであり、「憲法の基本原則である平和主義をいささかも変更するものではない」と言明。新3要件を超える武力の行使を認める場合は、「憲法改正が必要」との考えを示しました。
 一方で北側副代表は、国民の中にある「日本が守ってきた専守防衛が維持されていないのではないか」「海外派兵が許されてしまうのではないか」との批判を取り上げ、首相の見解をただしました。
 安倍晋三首相は、憲法9条の下で許容されるのは、「国民の命と平和な暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置としての武力の行使のみ」であると強調。他国の防衛それ自体を目的とするものではなく、専守防衛を維持し、海外派兵は許されないという原則は全く変わらないとした上で、「かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してない」と断言しました。

参考写真 憲法第9条の解釈は、まさしく国会と政府側との長年のやりとりの中で、作られてきた。この中で極めて論理的に答弁している最初の政府見解というのが1972年(昭和47年)10月に参院決算委員会に提出された内閣法制局作成の「集団的自衛権と憲法との関係」という資料だ。
 数ある憲法第9条に関する政府見解の中で、72年見解がベースになるものだと私は理解している。今回の閣議決定の中に、自衛権行使の新しい3要件が記された。72年見解と新3要件との間に、論理的な整合性は確保されているのか。

参考写真 今般の閣議決定は、武力の行使が許される場合は「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」もこれに当たるとしたものであり、その限りにおいて、結論の一部が変わるが、72年の政府見解の基本論理と整合すると考える。

参考写真 第9条下で許される「自衛の措置」の一番、肝要な部分が、この新3要件だ。今後、検討される法案の条文にきっちり書き込まれるものだと私は認識している。長官いかがか。

参考写真 具体的な法整備の検討はこれからだが、新3要件はご指摘の通り、憲法上許容される武力の行使の要件そのものなので、実際の自衛隊の行動の法的根拠となる自衛隊法などの中に、その趣旨を過不足なく規定すべきものと考える。

参考写真 新3要件の第一に、「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」と定めている。どういう事態を指すのか。どんな要素からそれが判断されるのか。

参考写真 新3要件は、72年の政府見解における基本論理、およびその考え方を前提としている。第1要件の「明白な危険がある」とは他国に対する武力攻撃が発生した場合、そのままでは、国家としての究極の手段である武力を用いた対処をしなければ、国民に、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な、深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であると解される。この要件に該当するかどうかについては、実際に他国に対する武力攻撃が発生した場合において、事態の個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、わが国に戦火がおよぶ蓋然性、国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することになる。
 なお、「明白な危険」とは、その危険が明白であること。すなわち単なる主観的な判断や推測等ではなく客観的かつ合理的に疑いなく認められるというものであると解される。

参考写真 今の答弁は、政府の恣意的な判断が入る余地はないということで理解したい。次に第2要件だ。新たに、「我が国の存立を全うし、国民を守るために」という言葉が入った。なぜ、この要件が入ったのか。

参考写真 第2要件においては、この度、第1要件で他国に対する武力攻撃の発生を契機とするものが加わったことから、これまでの単に「これを排除するために他の適当な手段がないこと」としていたのを改め、「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき」とし、他国に対する武力攻撃の発生を契機とする武力の行使についても、あくまでもわが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置に限られ、当該他国に対する武力攻撃の排除それ自体を目的とするものではないということを明らかにしていると考えている。

参考写真 新3要件は、72年見解で言っている「いわゆる集団的自衛権」の行使を認めたものか。

参考写真 72年見解における「いわゆる集団的自衛権」は、まさに集団的自衛権全般を指していると考える。その意味で丸ごとの集団的自衛権を認めたものではないという点では今回も変わっていない。
 今般の閣議決定は、国際法上、集団的自衛権の行使が認められる場合の全てについて行使を認めるものではなく、新3要件のもと、あくまでもわが国の存立を全うし国民を守るため、すなわち、わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるもの。いわゆる集団的自衛権の行使を認めるものではない。

参考写真 今回の閣議決定は、憲法第9条のこれまでの規範を維持しているのか。

参考写真 今般の閣議決定は、平和主義を具体化した規定である憲法第9条の下でも例外的に自衛のための武力の行使が許されるという72年の政府見解の基本論理を維持し、その考え方を前提としたもの。その意味でこれまでの憲法第9条をめぐる議論と整合する合理的な解釈の範囲内のものであり、憲法の基本原則である平和主義をいささかも変更するものではないと考える。
 その意味で72年の政府見解の基本を維持し、今回の閣議決定に至ったわけであるが、そこで示された新3要件を超える、それに該当しないような武力の行使については、現行の憲法第9条の解釈によってこれを行使することを認めることは困難と考えており、そこに及ぶ場合には憲法改正が必要であろうと考えている。

参考写真 日本の周辺で自衛隊と一緒になって日本の防衛のために現に活動している米艦船に対して武力攻撃があった場合に、日本の自衛隊が守れるのに、守れないというのは日米防衛協力体制の基礎を大きく損なってしまうのではないか。

参考写真 日本を守るために、平時において協力している米艦船に対する攻撃をわれわれは止めることができなければ、これは日米の同盟関係、いわば絆、信頼に大きな影響力、場合によっては致命的な影響力を及ぼすかもしれない。何十年に1回かもしれないが、起こるものにしっかり備えていくことによって、日米の絆はより強くなり、そうした事態を結果として防ぐことにつながっていくと思う。

参考写真 わが国の防衛は、自衛隊と、日米安保条約に基づいてわが国に駐留する米軍、この2つの実力組織によって、わが国の安全を確保していくのが基本だ。その米軍がわが国の防衛のために行動していて、そこで何らかの攻撃を受けた場合に、やはり自衛隊が排除する必要性がある。新3要件の下で、平時から有事に至るまでの切れ目のない法整備ができる。国民を守るための万全の備えが大切だ。
 また、わが国防衛のための日米協力の実効性、信頼性を一層確保するとともに、平素からこれで日米間の緊密な連携ができるようになると思う。そのことによって、わが国を守る抑止力が向上すると理解する。

参考写真 このように、切れ目のない、日米の協力体制が出来上がるということは、米国側の日本に対する、いわば現場においてもそうだが、信頼関係がより強固になる。事前にさまざまな活動を行っていく上においても、日本側に前もって情報を提供しながら、この地域、あるいは日本を守るためにさまざまな活動をしていこうという機運は高まっていくことは間違いないと思う。米側からも今回の閣議決定によって、「より日米関係は強化されていくことになる」というコメントをもらっている。

参考写真 今回の閣議決定の後、さまざまな批判をいただいている。たくさんあるが例えば、「専守防衛が維持されないのではないか」「海外での武力行使をしないと言っていたが、これを変えたか」「海外派兵が許されてしまうのではないか」だ。首相はどう考えるか。

参考写真 今回の閣議決定において、憲法第9条の下で許容されるものは、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置としての武力の行使のみだ。従って、「我が国」または「我が国と密接な関係にある他国」への武力攻撃の発生が大前提である。また、他国を防衛すること自体を目的とするものではない。このように、引き続き憲法の精神に則った、受動的な防衛戦略の姿勢であることに変わりはない。政府としてわが国の防衛の基本的な方針として、「専守防衛」を維持していくことに変わりはない。また、「海外派兵は一般に許されない」という従来からの原則も全く変わらない。自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してないと断言しておきたい。