茨城港日立港区の自動車輸出 茨城県内の港湾は、北関東自動車道の全通により、貿易や物流の拠点として関東でも大きな位置を占めるようになりました。高速道路と接続する茨城港(日立港区、常陸那珂港区、大洗港区)は、首都圏の新たな玄関口として京浜地域に集中混雑する物流を分散し、効率化する役割を担い始めています。各港区は特長を生かし、多様な物流拠点となっています。
 北関東道を通じて常磐自動車道につながる日立港区は、4万トン級の自動車専用船に対応し、メルセデス・ベンツ日本の輸入基地になり、日産自動車が栃木工場で生産する北米向け車両の輸出拠点でもあります。
 すでに、国内の輸入港を日立港区一箇所に集約したベンツを中心とする外国車の輸入高は全国第3位となっています。また、日産自動車は、2010年5月から年間5万台前後の北米向け輸出を行っています。日立港区では日産専用のモータープールを整備するなど、自動車の輸出に特化した手厚いバックアップを行っています。
 さらに、日立港区は、東京ガスのLNGガスの輸入港、エネルギー基地として整備され、日本最大級のLNGガスタンクの整備も進んでいます。
 日立港区は、自動車関連用地、東京ガス関連用地で手一杯になってしまいました。港湾計画を変更し、第5埠頭に集中していた両機能のうち、自動車の輸出入は第3埠頭の水深12m岸壁の延伸して、第3埠頭で行うことになりました。これでも、今後増加する自動車の輸出入の重要に対応できるか、心配な状況です。
 井手県議らが進めていた富士重工(スバル)の完成車の北米輸出拠点を日立港区に誘致する計画は、実質的に不可能となってきました。
常陸那珂港区の活用、スバルの輸出拠点を念頭に 
 このような中、10月17日、橋本昌知事は、富士重工の近藤潤副社長と都内のホテルで会談。この席上、県と富士重工は、常陸那珂港区を利用する方向で調整し、検討していくことで一致しました。
 地元紙、茨城新聞の報道によると、橋本知事は「決定ではない」とあらかじめ断った上で、「(富士重工の副社長から)『何とか使わせてもらえないか』と話があり、『何とか使ってもらえればありがたい』と、お互いにそちら(利用)の方向で頑張ろうとなった」と語りました。
 富士重工は群馬県内の工場で、スバルブランドの自動車を製造しています。富士重工は北米向けを中心に輸出が好調で、現在利用している京浜地区の港湾ではカバーしきれず、新たな輸出港を探していました。北関東自動車道を使うことで、群馬県の工場からダイレクトに陸上輸送することができます。
 常陸那珂港区は中央埠頭の耐震強化岸壁(水深12m)が、当初2016年度としていた完成時期を、15年度中に前倒しして整備中です。岸壁の供用開始のめどが立ったことで、常陸那珂港区利用を本格的に検討する環境が整ったことになります。
 富士重工の受け入れには、岸壁の供用開始に合わせた荷さばき場やモータープールの整備が不可欠となります。県は、富士重の利用を念頭に早急に整備を進める方針です。
 富士重のまとめによると、2013年度のスバル車の輸出実績は前年度比30.2%増の49万9194台で、好調な販売が続く北米市場がけん引役となっています。直近の今年8月も前年同月比8.6%増の3万8017台と、引き続き北米向けが好調で、8月単月としては過去最高となり、19カ月連続で前年超えしています。
 日立港区にとっては、残念な誘致失敗ですが、港のキャパが足らないのでは致し方ありません。茨城の港湾全体にとっては大きな朗報です。