ALS協会総会の模様 来年(2015年)1月1日より、難病患者に医療費を助成してきた国の制度が、約40年ぶりに大きく変わります。新たな難病医療法によって、対象となる病気の数は56から約300になり(1月1日から110疾病、夏から300疾病に拡大)、医療費助成を受ける対象者は78万人から150万人程度に増えます。子どもの難病についても、改正児童福祉法の施行で、約11万人から15万人程度に拡大する見通しです。
 難病に対する助成制度は1970年代初めから、法律に基づかない治療研究事業として行われてきました。しかし、支援の対象や内容は十分とはいえず、予算の確保も課題でした。法制化によって、財源確保と対策の充実に期待が集まっています。
 しかし、限られた財源をより多くの難病患者で分配するわけですので、患者の自己負担が増えるケーズもあるのが現実です。
 新制度では、70歳未満の難病治療の自己負担割合を、3割から2割に下げます。その上で、市町村民税非課税者にも新たに自己負担を求めます。
 現行制度では、収入が多い患者であっても月の自己負担上限は1万1550円ですが、新制度では年収約570万円以上(夫婦2人のモデル世帯)では、自己負担の限度額を月4万4400円とします。年収150万円程度の所帯では、月額負担は現状のゼロが最大6000円に。重症患者も、全員が全額免除とはならず、所得に応じた負担が求められます。院外処方の薬にも自己負担を求められます。生計中心者が難病患者の場合、負担限度額を基準額の半分にする制度も廃止されます。
 現在、難病指定を受けている患者は、今年中に申請することで、3年程度の経過措置(激変緩和策)が適用されます。
 出来れば、すべての患者さんにの治療費負担をなくすということが理想です。しかし、財源を考えると、公平な負担をすべての難病の患者さんにお願いしていくというよう観点で、今回の制度が設計されました。今回の法整備が、これからの難病対策のスタート地点になる意義は非常に重いものがあります。
 こうした制度の拡充は、さまざまな患者の声を受け止めてきた公明党の提言を反映しています。難病を抱える患者や家族の安心につなげていかなくてはなりません。

難病対策には医療以外の課題解決も重要
 厚生労働省の調査によると、患者の約7割が就職を希望しています。しかし、実際に働く場合、通院の保障や緊急時の対応など、疾患の特性と症状に応じた勤務体制をとる必要があるため、就職しても職場の理解を得られず、退職するケースも少なくありません。
 患者が無理なく仕事と治療を両立できる職場が見つかるよう、日常生活や療養などの相談に応じる「難病相談・支援センター」とハローワークの連携を強化する必要があります。病気に対する誤解や偏見をなくす取り組みも欠かせません。
 一方、難病に苦しむ子どもたちも悩みは少なくありません。例えば、長期の入院生活を送った場合、復学に向けたきめ細かな支援が必要になりますが、どこまで後押しできていているでしょうか。また、子どもの難病は、成人の難病と対象範囲が異なるため、多くは20歳になると公費助成が打ち切られてしまいます。成人後も支援が受けられるよう検討すべきです。
 政府は今後、医療の提供体制の整備や医薬品・医療機器の研究開発の推進、療養生活の環境整備など、具体策を進めるための基本方針を定めます。就労・生活支援策の充実のほか、難病患者のデータベースを構築して原因解明や治療法の開発に役立てる考えです。
 患者・家族の視点に立って検討し、充実した対策を実現する必要があります。

難病患者の負担の変化