井手よしひろ県議らが昨年12月取材させていただいた、つくば市の“みずほの村市場”の記事が公明新聞(1月8日付け)に掲載されました。みずほの村市場を運営する長谷川久夫社長、タイ・バンコクで海外事業を展開する井戸英二さんとは、茨城農業のあり方について、様々な建設的なご意見を伺い、茨城県議会公明党の農業政策にも反映させていただいています。このブログでは、公明新聞の記事を掲載させていただきます。写真は取材時に井手県議が撮影したものです。
みずほの村市場

価格競争から品質競争へ転換/農家が値段を決定
 “衰退産業”のイメージが強い農業だが、見方を変えると成長への可能性が高い分野でもある。その潜在力を引き出すために何が求められているのか。徹底した品質向上と異例の価格設定方法などで売り上げを伸ばし、海外にも販路を広げる「株式会社農業法人みずほ」の挑戦を追った。
 「みずほの村市場」(茨城県つくば市)にはコメやレンコン、トマトなど県産の農産物がずらりと並ぶ。株式会社農業法人みずほが運営する農産物直売所だ。価格はスーパーよりも2〜3割ほど高めだが、評判は上々。都内から訪れた女性は、試食品のダイコンを口にほおばると「甘みがあっておいしい。高くても他とは“モノ”が違う。まとめ買いしちゃいますね」と語る。
 「みずほの村市場」は「価格競争から品質競争へ」を掲げ、1990年に開設。以来、東日本大震災の影響で落ち込んだ時期を除き、売り上げは右肩上がりだ。今では年間延べ30万人が訪れる。農産物を販売する生産農家は50軒程度で、売り上げの85%を生産農家が受け取る。1農家当たりの年間売り上げは平均800万円と安定している。
 厳しい品質管理に加え、農家が経営感覚を培ったことが成功につながった。その柱は「生産者が販売価格を決める」というルールを徹底すること。具体的には、参入する農家に対し、(1)年間360万円の売り上げ目標(2)新規参入の農産物は先に参入していた農家と同じか、それ以上の価格を付ける――といった条件が課せられている。品質改良に遅れをとると、新規参入組に押されて、売り上げを落としかねない。結果として農産物の品質向上を促す農業技術の競争になる。
 より栄養価の高い農産物をめざし、同社生産研究部のスタッフが参入農家を定期的に回り、糖度計診断や養分分析などの生育診断を行い、助言するなどサポート体制も取っている。

生産者は経営感覚が必要
 安定収入につながる農業とあって、新規就農者も誕生している。ある30代の男性は5年前に脱サラして農業の道へ。2年間の研修を経て独立し3年目を迎えた。「売り上げはこれからだが、『村市場』のやり方に魅力とやりがいを感じる。品質改良に励んでいきたい」と意気込む。
 同社の長谷川久夫代表取締役社長は「今、農業に求められているのは、原価計算に基づき、再生産できる値段で売ることができるかどうか。言い換えれば、生産農家が経営感覚を持てるかどうかだ」と強調。その上で、「生産現場が販売価格決定権を持って、社会的責任を負う中で、ルールのある品質競争を通して、継続的に働ける場が必要だ」と、「みずほの村市場」開設の意義を語った。

バンコクにも出店、中間層への安定販売をめざす
みずほの村市場バンコク店 「みずほの村市場」は海外進出にも挑戦。昨年4月には、タイの農業法人と提携し、同国の首都・バンコクのスクンビット地区に常設の販売店舗を開設した。
 入荷は毎週金曜日の週1回。茨城県産の農産物がバンコクの店舗に届くと、ただちに店頭に並べられる。金〜日曜日の3日間合計で毎週平均30人が来店し、客1人当たりの購入平均単価は約5000円。昨年12月の売り上げは100万円を突破した。
 店舗の中心者である井戸英二氏は「今は、事業として成り立つための仕組みづくりの段階。5〜10年の長期的な視点で取り組んでいくことになる」と語る。
 昨年末から今年初めにかけての主力商品はイチゴだ。輸送コストなどが重なり、販売価格は日本と比べて約5倍も割高だ。井戸氏は「アジア地域では富裕層が農産物を購入しているというイメージがあるが、実際は“一度きり”の購入にとどまっているケースが多い。継続して購入してもらえる適正な価格を設定することで、生産者の収益増につながる事業になり得る」と中間層への浸透を強調する。
 イチゴの場合、試験販売を重ねた結果、人口構成が分厚い中間層に対し、1パック480バーツ(約1700円)だと、継続的に購入が見込める価格だと判断。今月から本格的に販売する。品質が落ちないように、店頭に並べず一定の温度・湿度を保つ保冷庫で管理したり、買い物客に食べ方などを伝えることも怠らない。井戸氏は「購入者の満足度を高め、リピーターにつなげたい」と今後の抱負を語っていた。