フランス「シラ国際外食産業見本市」に、県内納豆メーカー5社が「豆乃香」ブランド出展
シラ国際外食産業見本市2015
 茨城県の特産物といえば、ズバリ“納豆”。県と県内納豆メーカーは、産学官の共同研究・開発により商品化した“ネバらない納豆”について、海外での販売に挑戦しています。海外での日本食は、今や一大ブーム。しかし、納豆のネバり(糸引き)は、外国人にもどうしても受け入れられないといいます。そこで、特有のネバりやにおいを抑制した納豆を開発。県内納豆メーカー7社が「豆乃香(まめのか)」という統一ブランドで商品化に成功しました。
 和食ブームに乗って、栄養豊かな発酵食品の納豆の良さを知ってもらい、海外で料理の食材として売り出す戦略を打ち出しました。
 今回、フランス・リヨンで開催中の世界最大級の外食産業向け展示会に出展し、世界デビューを果たしました。まさに、『納豆のフランス革命』です。
 今回出展したのは、「シラ国際外食産業見本市」。1月24日〜28日の5日間、世界各国から食品や食材の業者や外食関係者らが参加します。茨城県は、県納豆商工業協同組合がブースを設け、朝一番(土浦市)、金砂郷食品(常陸太田市)、ひげた食品(土浦市)、菊水食品(日立市)、トーコーフーズ(常陸太田市)の5社が自社商品を展示しています。
豆乃香 糸引きの少ない納豆は、「いばらき成長産業振興協議会」が進めるプロジェクトの一貫。県産納豆の消費拡大を図るのが主な目的です。県工業技術センターが独自に開発した、ほとんど糸を引かない納豆菌を使い、納豆メーカーが2014年から商品化を進めています。
 「豆乃香」は、かき混ぜても表面に少し粘り気が出る程度で、箸でつかむとぽろぽろ落ち、においも少ないのが特徴です。大豆を熟成させた香りを楽しめるとして、統一ブランドを「豆乃香」として、ロゴは筑波大芸術系の原忠信准教授と学生のチームが制作しました。
 今回の展示会には、茨城県の食のアドバイザーで、ヨーロッパの“食”事情にも精通する藤原浩さん、日立市出身の“HATAKE AOYAMA”のシェフ神保佳永さんらも会場を訪れ、積極的に「豆乃香」をPRしています。
 神保シェフは、調理法を提案するため、豆乃香を使用したバターやフランス南西部の伝統的豆料理「カスレ」を含む3品の試食を行います。
 藤原氏のfacebookによると、「新納豆の豆乃香は、予想を遥かに超えた試食数となっていて、評価も高い状況です。JPPANパビリオンで唯一フランスの外務大臣が立ち寄り試食してくれたのも豆乃香のブースです。NHKやメディアの映像にバッチリ収録されました」と、現地の盛り上がりをレポートしています。(このブログの写真は、茨城県食のアドバー藤原浩氏、金砂郷食品代表取締役永田由起夫氏の撮影によるものです)

豆乃香
特有のネバりやにおいを抑制した納豆を「豆乃香(まめのか)」という統一ブランドで商品化。

豆乃香の調理例
見本市で提供される「豆乃香」の試食料理。豆乃香入りのバター。

豆乃香の調理例
見本市で提供される「豆乃香」の試食料理。フランス南西部の伝統的豆料理「カスレ」


 2月19日、金砂食品の永田由紀夫社長をはじめ県納豆商工業協同組合の関係者、県の食のアドバイザー・藤原浩さんらが、県が開発したネバネバが少ない納豆「豆乃香」について、フランスの見本市での好評ぶりを、橋本昌知事に凱旋報告しました。
 今回出品した「シラ国際外食産業見本市2015」では、トータルで119件の引き合いがあり、現地の食品メーカーとの具体的な価格交渉など5件の商談が進んでいることが報告されました。
 藤原さんが「フランスでは日本の健康食品が人気で、血液をサラサラにする納豆も注目度が高かった。最初は豆乃香から入ってもらい、のちのちは糸が引く納豆も日常的に食べてもらうようにする」と、今後の具体的な戦力を知事に説明しました。
 イタリアンレストラン・ハタケ青山の神保佳永シェフの発案による豆乃香を混ぜ込んだ発酵バターなどを試食した橋本知事は、「ワインと良く合う。納豆の臭いが苦手な人でも食べやすい」と話しました。
 知事への表敬を終えた一行は県庁記者クラブを訪ね、マスコミ関係者の取材を受けると共に、「豆乃香」の試食を行いました。



 2月21日付けの朝日新聞のコラム「天声人語」に、「豆乃香」が紹介されました。
朝日新聞「天声人語」2015/2/21
▼今度は、混ぜてもポロリと箸から落ちる納豆の登場だ。粘り成分は通常より25%少なく、混ぜる時の抵抗は3分の1程度という。国内の消費が細る中、「水戸納豆」で知られる茨城県が県内の企業と組んでフランスへ売り込んだ▼豆を煮込む伝統料理「カスレ」に使ったり、ペースト状にしてパンにのせたり。先月、リヨンであった見本市に出品して提案したところ、関心を持たれたそうだ。美食自慢の国に受け入れられるか、楽しみである▼糸引きの弱い納豆とは何か頼りない感じもするが、和食を世界に発信する挑戦の一つとして頼もしくもある。「納豆ぉ〜」と呼ぶ声が響いてくる。(天声人語:納豆をフランスへ)