老朽化した原発 3月18日までに、日本原電、関西電力、中国電力、九州電力の国内4電力事業者は、老朽化原発5基の廃炉を決めました(敦賀第1、美浜第1、美浜第2、島根第1、玄海第1)。また、四国電力も伊方第1の廃炉を決める方針です。今回の決定は、原発依存度を可能な限り低減させる政府方針に沿う第一歩となるものです。再稼働や運転延長に係わる出費が多大で、採算性が悪い原発の廃炉が進んでいます。
 2012年の法改正で運転開始から40年を過ぎた原発は、原則的に廃止することが決まっています。今後15年の間に運転開始40年を迎える原発は、国内に現存する48基のうち30基に上り、多くの原発が、これから廃炉の判断の時期を迎えます。
 廃炉を進めるためには、乗り越えなければならない課題がたくさんあります。その一つが原発の解体で発生する放射性物質を含む、がれきやごみなどの処分です。既に廃炉に着手している日本原子力発電の東海原発や中部電力の浜岡原発1、2号機も処分地が決まっておらず、作業の大きな妨げになってます。原子力規制委員会は、現在検討中の埋設施設の安全対策について、取りまとめを急ぐ必要があります。
 廃炉作業の工程では、原子炉建屋内のプールにある使用済み核燃料を他の場所に移さなければなりません。その行き先も決まっていません。このままでは本格的な廃炉作業に入れず、工程が遅れてしまいます。
 廃炉の実績で日本の先を行く米国では、ドライキャスト(空冷式保管)という方式で、保管施設を敷地付近に設ける例があります。わが国でも先進事例を参考に議論を深めていくことが求められます。
 原発周辺地域への支援も忘れてはいけません。立地自治体には政府の交付金が支給されていますが、廃炉になると打ち切られるため、地元経済への影響を懸念する声が強くなっています。井手よしひろ県議らは、立地地域の支援策として、必要な技術の研究・開発や作業員の雇用、使用済み燃料の保管料など、廃炉に関する事業をビジネスとして確立すべきと主張しています。
 今後、廃炉に取り組む事業者は、廃止措置計画を策定し原子力規制委員会の認可を受けることになります。
 原発の廃炉は、多額の費用と30年近い年月がかかる大事業です。事業者は、計画策定にあたり、しっかりとした展望を示し、着実な作業の進展につなげていかねばなりません。
 と同時に、単に経済性だけではなく、茨城県東海村の東海第2原発のように、30キロ圏内に100万人が住むようなリスクの高い原発は、再稼働をさせずに廃炉を選択すべきです。日本原電は全ての事業用原発を失うことになりますが、日本原電自体を廃炉ビジネスの中心として再編することを提案します。