罹患率と死亡率 3月26日国立がん研究センターは、主ながんの種類ごとに、がんのなりやすさを示す罹患状況を全国平均と比べた地域別の分析結果を初めて発表しました。
 いままで、都道府県別のがんの罹患状況を示す数値は公開されていませんでした。今回の分析には、がんの種類や進行度、治療内容や治療後の経過などの情報を集める「がん登録」のデータが使われました。がん登録は、公明党が2006年に、がん対策基本法の制定を主導した際、強く推進を訴えたものです。がん登録に対する関係者の期待は極めて大きなものがあります。今まで、がん患者数などは推計値が用いられていました。2016年1月からは全国でがん登録が義務化されるため、正確な数が分かるようになります。
 また、がん登録で集められた情報は病院にも還元されるため、がん情報の蓄積が進むほど、現場の医師らは、より有効な治療法を選択できるようになります。がん治療の研究に使える情報も格段に増え、新たな知見の発見にもつながります。
 今回情報が公開されたのは、2011年に地域がん登録のデータを提出した40道府県のうち、精度が十分ではなかった鹿児島県を除く39道府県です。人口構成の違いをなくした標準化罹患率を計算しました。全国平均は、特に精度が高い14県のデータから推計しました。2011年にがんと診断されたのは全国で85万人でした。。
 発表によると、胃がんのほか、肝がんは山梨県と西日本地方、大腸がんは北海道、東北、山陰地方で罹患率が高い傾向が見られました。肺がんは、男性が北海道と青森県、近畿地方で高く、胃がんは食塩の摂取量が多い地域、肝がんは肝炎ウイルスの感染者が多い地域と重なる傾向がありました。
 厚生労働省の人口動態統計をもとにした死亡率とも比べました。全部位の罹患と死亡の状況を比べてみると、今回の国立がん研究センターの発表では、長野県と広島県では、がんになる人の割合が全国に比べて高い一方で、がんで亡くなる人の割合は低いという結果になりました。検診でがんを早く見つけて死亡率を抑えている可能性が高いことになります。
 がんの発症は、たばこや飲酒、食事といった生活習慣に大きく左右される、といわれています。生活習慣の改善や検診受診率向上など地域別に求められる対策の検討を早急に進める必要があります。
 例えば、詳細な分析を進めれば、有効な治療法や食事、生活習慣が明らかになり、全国に展開できる可能性もあります。
 実際、米国では1990年代に、がん登録が義務化されて以降、がんによる死亡率は目に見えて低下しています。
 これまで以上に、がんの実態を正確に把握できるようになれば「わが県に肺がんを治療できる医師は何人必要か」「どの年代の人に、どのようながん検診を行うのが効果的か」などの判断にも役立ちます。
 がん登録の成果が現れつつある今、これからは患者数、死亡者数を減らすための対策の具体化を、地位毎に明確にしていく必要があります。
参考:全国がん罹患モニタリング集計