イメージ写真 少子化対策の柱として、子どもの医療費の助成対象を広げる市区町村が急増しています。“医療福祉費支給制度”といわれるこの制度は、一般的には“マル福制度”と言われています。厚生労働省の昨年の1742市区町村への調査では、通院で中学卒業またはそれ以上まで助成する自治体は1134市区町村(65%)に上っています。2004年は11自治体しかなく、10年で103倍に増えた計算になります。
 子どもの医療費は小学校就学前まで公的な医療保険で8割を賄い、2割は自己負担。小学生からは大人と同様に自己負担は3割負担になります。この自己負担分を何歳まで助成するかは都道府県や市区町村で異なります。
 厚労省が昨年4月1日現在の状況を調べたところ、中学卒業まで助成する自治体は930、高校卒業までが201ありました。最長は22歳の学生まで助成する北海道南富良野町。一方、4歳未満や5歳未満を含め小学校就学前までの市町村が353、小学校卒業までが185あり、地域格差が広がっています。また、市区町村の8割近い1373市区町村が所得制限を設けていません。
 一方、厚労省の2004年の調査では、3123市区町村のうち小学校就学前までに助成が終わる自治体が2988(96%)に上っていました。
 この10年のマル福制度の拡大の流れをリードしたのは、東京都でした。都と区が自己負担分を折半し、2004年まで通院は小学校就学前までで23区は横並びでした。2005年1月に品川区が小学校卒業まで無料化すると、同年4月には港区と台東区が中学卒業まで無料化を始めました。23区で中学卒業まで無料化が広がったのは、2007年の統一地方選です。都知事選で石原慎太郎氏が公約に掲げて当選し、都は2007年10月、中学卒業まで助成を拡大しました。これを機に全23区が所得制限なく中学卒業まで無料化で足並みをそろえことになりました。23区の動きは全国に及び、前回統一選の11年には小学校就学前までに助成が終わる自治体(657)と中学卒業かそれ以上にも助成する自治体(696)と逆転したのです。
 茨城県では2015年4月1日現在で、日立市と常陸大宮市を除く42市町村が中学校卒業までマル福を拡大しました。この2市も15年10月から中学卒業まで拡充します。

マル福拡大の隘路となっている国の国保補助ペナルティ!
 こうしたマル福制度拡大に流れに、竿を差す国の動きがあります。これが、国保の“ペナルティ制度”です。市町村が子ども医療費の窓口払いの撤廃など、窓口負担軽減のための地方単独事業を行った場合、国民健康保険会計への国からの補助を減額する措置が実施されているのです。30年前(昭和59年)に創設された古い制度です。この間に、少子化などの社会状況は大きく変化したにもかかわらず、現在も存続しています。地方単独事業といっても、すでに多くの自治体で実施され、時代に即した制度へ見直しを行う時期に来ています。
 公明党は、2月18日の山口那津男代表の本会議質問や3月17日の参議院予算委員会における西田実仁議員が取り上げました。これをきっかけに、国はやっと検討会を立ち上げて議論を行うこととなりました。
 今回の動きは、山口代表が地方創生の観点から議論を開始したことに大きな意義があります。地方において人口減少問題に真正面から取り組むとして、各自治体に地方版の人口ビジョンや総合戦略の策定を求めていながら、乳幼児医療の助成制度を行えば国庫負担金が減らされるということは理論的に矛盾しているからです。地方創生の新たな交付金は子どもの数が多い自治体を評価して配分するということまで言っているわけですから、股裂きの政策立案となっているわけです。
 厚生労働大臣は、少子高齢化が進行する中、子育て支援、地方創生、地域包括ケア等の幅広い観点から検討する場を設け、関係者を交えて議論すると明言しました。
 時代に対応した新たな制度になるよう見直しを進めていくべきです。平成30年には国保の財政運営が都道府県単位になるわけですから、見直しをする大きなチャンスです。