東海第2発電所 2014年5月20日、日本原子力発電(日本原電)は、原子力規制委員会に対して東海第2発電所(東海第2原発)の再稼働のための新規制基準適合審査の申請を行いました。この1年間で開かれた審査会合は計8回。その間、規制委員会が示した28項目の主要な論点の多くは議論は、ほとんど行っていません。東海第2原発は沸騰水型原発。加圧水型原発の審査が優先され、さらに審査の件数が増えたことなどから、今後の見通しは未だ経っていません。
 昨年6月17日、安全審査の初会合が行われ、日本原電が申請概要を説明しました。その後、7月4日に規制委が28の主要論点を示しました。ケーブルの束に防火塗料を塗るなど電源ケーブルの防火対策を新基準での大きな焦点と位置付け、本格的な審査をスタートしました。
 審査は「原発設備」と「地震・津波対策」の二つに分けて実施。昨年8月の第3回会合で、原発設備に関する事故対策設備「フィルター付ベント」の審査が行われ、その後も原発設備の審査が続きました。地震・津波対策については今年2月13日の第8回会合で取り上げられただけです。審査は当初、月1〜2回のペースでしたが、2月会合以降は3カ月以上、開かれていません。
 沸騰水型特有のフィルター付きベントの議論が辛うじて始まったものの、最大の焦点となるケーブルの防火対策に加え、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)の設定の議論は、全く手つかずです。
 規制委員会は、実質的に審査に合格した九州電力川内1、2号機(鹿児島県)や関西電力高浜3、4号機(福井県)など、新規制基準施行直後に申請が相次いだ加圧水型の審査を優先しています。新基準でフィルター付ベント設置などの対応が求められる沸騰水型の審査は、東海第2原発を含めて議論が後回しになっています。
 川内、高浜両原発に関しては、適合判断までに川内で60回以上、高浜で70回以上もの審査が行われました。
 さらに規制委員会は1月からは、沸騰水型の原発の審査申請が増えたため、沸騰水型を審査するチームを二つに分割しました。東海第2原発を審査するチームは、東北電力東通(青森県)と北陸電力志賀(石川県)両原発の敷地内にある断層評価などにも携わっています。規制委員会は東海第2原発の審査について「この先の見通しは全く立っていない」としています。

 東海第2原発は、1978年11月28日に稼動し、2018年に40年を迎えます。政府は原発の稼動を原則40年としていますので、残り3年半です。規制委員会の審査に目処が立たない中、プラントの改修に係わる時間や費用などを考慮するときに、再稼働させる経済的な価値があるのか、大いに疑問が残ります。さらに東海第2原発については、たとえ新たな安全基準を満たしたとしても、重大事故に対して30キロ圏内の住民100万人の避難体制が整備できない限り、再稼働は認められないと考えます。現状では、こうした大規模な住民避難体制の整備は実質的に不可能であり、当然、再稼働は困難と考えるのが妥当です。

沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉
 国内の商業用原子炉は全て軽水炉(普通の水)を使用し、蒸気を発生させる仕組みで沸騰水型と加圧水型の二つが使われています。沸騰水型軽水炉(BWR)は、炉心を循環する冷却水を沸騰させてできた蒸気で発電タービンを回す方式です。原発事故を起こした福島第1原発はこの方式です。
 一方、加圧水型軽水炉(PWR)は、冷却や減速材に軽水を使用し一次冷却材である加圧水(圧力の高い水)を熱して蒸気発生器に通し、発生した軽水(二次冷却材)の高温高圧蒸気により発電タービンを回します。国内の原発は43基で、改良型を含めたBWRは22基、PWRは21基です。

【日本原子力発電(株)東海第二発電所の申請内容に係る主要な論点】
 新規制基準に対して提出された原子炉設置変更許可申請等に関し、これまでの審査会合やヒアリングを通じて確認した結果、主要な論点が以下の通りに整理されました。
(地盤・地震関係)
  • 敷地の地下構造を把握するのに実施した調査・分析について、特異な傾向の有無を確認するため、全ての評価結果を提示すること。
  • 敷地内破砕帯について、その活動性の評価に係る詳細な調査結果を提示すること。
  • 敷地周辺陸域の断層の評価において、破砕帯の固結のみで活動性否定の根拠としている場合は、異なる手法による活動性否定の根拠も示すこと。
  • 原子炉建屋等の耐震重要施設に加え、重大事故等対処施設の基礎地盤及び周辺斜面の安定性評価に関わる検討内容を示すこと。
  • 基準地震動Ss−Dについては、具体的な設定根拠を示すこと。
  • F1断層と北方陸域の断層の同時活動性を考慮するに当たり、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響を踏まえたF1断層の再評価の内容及び断層両端の止めに関する評価結果を提示すること。
  • プレート間地震について、地震規模、震源領域等の設定に関わる検討内容を示すこと。
  • プレート内地震について、ディレクティビティ効果等を考慮した不確かさに関する検討内容を示すこと。
  • 東日本大震災による敷地におけるはぎとり波の応答スペクトルは、一部の周期帯で基準地震動を上回ったことを踏まえ、基準地震動や耐震設計の策定にあたり、どのような考慮がなされたか示すこと。
  • 「震源を特定せず策定する地震動」に関して、基準地震動評価ガイドにある地震観測記録収集対象事例の16地震について、観測記録等の分析・評価を実施すること。

(火山関係)
  • 敷地への降下火砕物等の堆積量に関して、詳細な評価結果を提示すること。

(津波関係)
  • 津波の評価について、波源の位置、波源の特性等の設定に関わる検討内容を示すこと。
  • 東日本大震災に伴う津波により、施設が大きな損傷を受けたことを踏まえ、基準津波や耐津波設計の策定に当たり、どのような考慮がなされたか示すこと。
  • プレート間地震の波源として、東日本大震災によって、宮城沖〜福島沖の領域を含めないこととした検討内容を詳細に説明すること。

(プラント関係)
  • (竜巻)竜巻影響評価に関し、飛来物への防護策に関する妥当性等を説明すること。
  • (火山)降下物(火山灰)の性状を踏まえた建物、機器への影響を説明すること。
  • (内部火災)火災防護対策の区画設定、火災感知設備、消火設備等の妥当性を説明すること。特に、防火塗料を塗布した非難燃性ケーブルについては、‘馭灰院璽屮襪箸瞭嬰性、∋楾性及び施工管理、B儺彑、に媛佚瀕舛療鰭曚砲茲覦影響、ジ’Юに関し説明すること。
  • (内部溢水)循環水ポンプ停止及び復水器水室出入口弁閉止インターロックの設置等による、既存施設への影響について説明すること。
  • 確率論的リスク評価(PRA)の手法及び実施結果について、説明すること。
  • PRAの実施結果を踏まえ、重大事故等対策の有効性評価における事故シーケンスグループ抽出等の妥当性、格納容器破損モード等に関する評価の十分性、対策に用いられる資機材や体制整備・手順等に関する妥当性について、プラントの特徴を踏まえて検討の上、説明すること。
  • 重要事故シーケンス及び評価事故シーケンスに対する対策等のシナリオ(事故状態、使用できる設備等)を想定する際の深層防護の考え方について説明すること。
  • 可搬型重大事故等対処設備の台数及びその配置場所の考え方について説明すること。また、アクセスルートに事業者の管理下にない国道を使うことについて、成立性を説明すること。
  • 格納容器圧力逃がし装置(フィルタ付ベント)の基本性能(よう素除去効率を含む除染係数、排気を妨げる要因がないこと等)の根拠となる実験データ等を説明すること。
  • 格納容器圧力逃がし装置の運用方法、各運用方法に応じた放射性物質除去性能、作業環境、操作性等の成立性を説明すること。事故後の周辺作業環境等復旧作業を制約する要因がないことを説明すること。
  • 格納容器圧力逃がし装置使用時の一般公衆の被ばくをできる限り低減する方策が取られていることを説明すること。
  • プルーム通過中に中央制御室から待機所に避難している間、プラントの運転操作ができなくても支障がないことを説明すること。
  • 大規模損壊時等の対策に用いられる資機材や体制整備・手順等に関する妥当性について、プラントの特徴を踏まえて検討の上、説明すること。
  • 安全を確保・向上させるための原子炉主任技術者等の権限・体制、協力会社を含め全社的体制を説明すること。