総合ディレクターに森美術館館長の南條史生氏
南條史生氏 5月15日、水戸市内の三の丸ホテルにおいて、(仮称)県北国際アートフェスティバル実行委員会設立総会及び第1回総会が開催されました。
 県北国際アートフェスティバル実行委員会は、平成28年秋頃開催予定の県北国際アートフェスティバルに向け、県、地元市町、関係団体等が緊密な連携のもと一丸となって開催準備や円滑なフェスティバル運営を行うために設立されたもので、総合ディレクターには森美術館館長の南條史生氏が選出されました。
 県北国際アートフェスティバルは、北茨城、高萩、日立、常陸太田、常陸大宮、大子の6市町が対象。アートを通じた地域活性化が主な目的で、実行委員会は、開催期間や会場、参加アーティストなどの実施計画を策定していきます。
 この事業は、県や各市町による県北地域振興の目玉施策で、県が国際的な芸術祭を開くのは初めてとなります。昨年秋に有識者の研究会と準備委員会を立ち上げ、開催に向けて検討してきました。
 主な事業内容は、著名アーティストによる作品の制作・展示のほか、天心記念五浦美術館での特別展開催、6市町内への展示拠点設置などを想定しています。
 国内での国際芸術祭は、「瀬戸内国際芸術祭」や「越後妻有アートトリエンナーレ」を含む8カ所でそれぞれ2、3年おきに開かれています。県北国際アートフェスティバルは、豊かな自然環境や地域資源といった県北地域の特性を生かして開催します。
 実行委設立総会では、会長の橋本昌知事が「県北の海や山の素晴らしい景観や地域資源を活用すれば、面白い試みができる。アートで県北地域を元気づけたい」とあいさつ。総合ディレクターに選ばれた南條氏は、国内外のさまざまな芸術祭でディレクターを務め、守谷市を中心に海外の若手アーティストを招く「アーカスプロジェクト」にも初期から関わってきました。就任に当たり、「人が驚き、感動するような作品を生み出し、海外からも集客していく」と意気込みを語りました。
(仮称)県北国際アートフェスティバル開催にあたり
総合ディレクター 南條史生
海と山の豊かな自然、地域に根ざした生活
そこから生じる新たな創造活動
 芸術祭会場に想定されている茨城県の北部(茨城の県北部に所在する6市町:日立市、高萩市、北茨城市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町)は風光明媚な海浜部と自然が豊かな山間部の双方が複合して独自の世界を形作っている。そこは、伝統的な文化・社会に根ざした生活が営まれている一方で、巨大都市東京の周辺に位置し、現代の新しい技術、文化からも至近距離にある。
 山と海の二つのエリアを統合する一つの視点は、神話に登場する「海彦と山彦」である。海の民は海で漁をし、異国との交易を生業とした。一方山の民は山間部に定住し、農業を基盤とした生産業を支えてきた。現代の日本の経済にもこの二項対立は継承されているといえるだろう。
 一方自然は、しばしば現代の技術と対立するものとして見られてきたが、いまやこの考え方は古いものとなりつつある。IT技術は人々にどこにいても情報、知識、文化を手に入れることを可能にしたが、次世代の技術を担うバイオテクノロジーは、自然と技術と人間を結びつけ、人間の存在そのものを第三の新たな道に導こうとしている。
 統合を可能にするのはアートである。アートは、海と山、自然と技術といった対立項を統合し、解放された人的交流と創造的な思考、新旧の技術によって支えられた制作活動によって、新しい人間社会のヴィジョンを描くことを可能にする。
 こうした現実認識の上に立って、茨城県北の芸術祭は、多様な交流の基盤の上で新しい制作方法、技術、視点に基づいた驚きと感動を誘う芸術作品を招聘し、海と山の自然、生活、歴史、文化、そして地域経済に根ざした、「今ここで」なければ生まれてこない独自の芸術祭としたい。

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