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この度、平成23年1月から27年1月までの4年間の茨城県議会公明党の活動記録を『復興から創生へ』とのタイトルで記録誌にまとめました。このブログでも、その内容を紹介します。
第4回目は、井手よしひろ県議のレポートです。

東海地区を廃炉技術発信の拠点に再整備
 日本原子力発電東海第2発電所(以下、東海第2原発)の再稼働問題は、茨城県にとって非常に大きな課題です。
 2011年3月11日、東日本大震災が発生。東海第2原発は、震度6弱の地震によって緊急停止。一時的に全ての外部電源が喪失。津波によって非常用自家発電源の3系統のうち1系統が冠水し喪失。もし、津波があと70センチ高かったら福島第1原発と同じような深刻な事態となる可能性がありました。
 茨城県議会公明党は、東海第2原発の再稼働に対して、繰り返し現地調査を行うと共に、事業者から説明聴取を行ってきました。また、事故を起こした福島第一原発、震災で大きな影響を受けた福島第2原発、女川原発、六ヶ所村の再処理施設なども現地調査しました。こうした、調査と党の基本的な原子力政策をもとに、「東海第2原発は再稼働させずに廃炉にすべき」だと主張しています。
東海第2原発
公明党は“原発ゼロ社会”をめざす
 公明党の基本的な考え方は、原発への依存度を徐々に減らして、将来的に「原発に依存しない社会・原発ゼロ社会」をめざすということです。そのために原発の新規着工は認めない方針です。また、建設後40年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用します。
 できるだけ速やかに原発ゼロ社会をめざすために、省エネルギーや、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入推進を図り、火力発電の高効率化を進めていきます。燃料電池(水素発電)など新たなエネルギー源の開発を進めます。
 既存の原発の再稼働については、原子力規制委員会が策定した新しい規制基準を満たすことを前提に、国民の理解と原発立地地域の住民の理解を得て再稼働するか否かを判断します。安全に十分ということはなく、今後も不断の努力が必要ですが、新基準による規制は信頼にたる内容だと考えています。
 一方、東海第2原発については、たとえ新たな安全基準を満たしたとしても、重大事故に対して30キロ圏内の住民100万人の避難体制が整備できない限り、再稼働は認められないと考えています。現状では、こうした大規模な住民避難体制の整備は実質的に不可能であり、当然、再稼働は出来ないと考えています。
 また、使用済み核燃料の再処理については、立地地域への配慮は欠かすことなく、使用済み核燃料を再処理せずにそのまま地下に埋める「直接処分」も含めて見直しを提案しています。また、廃炉にする原子炉に関しては、引き出した燃料棒をドライキャスト方式で、敷地内に保管することも検討すべきです。

福島県浜通り:イノベーションコースト構想
 先日、福島県のいわき市や相馬市を視察しました。福島県の浜通りでは、東日本大震災の福島第一原発事故を受けて、国が新しい取り組み「イノベーションコースト構想」を推進しています。これは、福島県の浜通りに液化天然ガスの大規模なエネルーギー基地を建設し、原子炉の廃炉に係わる新たな産業を育成しようというものです。すでに相馬港では、天然ガスのエネルギー基地の起工式が行われています。原子炉の廃炉に関する取り組みも具体的にスタートしています。いわき市役所の担当者は「イノベーションコースト構想は、浜通りだけでは推進することはとてもできません。廃炉の技術やその人材は、茨城県に頼らなくてはなりません」と語っていました。
 日本で最初に原子の火がともった茨城県。そして原子力発電の重要なノウハウや人材を有する県北地域。廃炉の技術はこれからの大きなビジネスチャンスともなると考えます。茨城県に集約した廃炉の技術や人材を、地域の活性化のために、日本の新たな成長戦略の中に位置づけるために、努力してまいります。

日立港は新たなエネルギー基地に
 また、現在茨城港日立鉱区の第5号埠頭で進められている東京ガスのLNG基地が、平成27年度中に稼動します。日立LNG基地のタンクは、地上式のものとしては世界最大級。基地が完成すれば、北関東及び首都圏の新たなLNGの供給拠点となるだけでなく、日立港区がエネルギー関連港湾として発展する可能性や、新たなエネルギー関連産業の立地につながることが期待されています。さらに、東京ガスではもう1基現在と同規模のLNGタンクの建設を計画しています。
 民間企業が県北地域に1000億円を超える投資を行ってくれたわけですので、茨城県としてももっと有効にこのエネルギー基地を活用すべきです。例えば、日立港からのLNGガスを利用して真岡市には60万キロワット級のLNG発電所が計画をされています。日立港周辺部にも、大規模なLNGの火力発電所の誘致を提案します。
 また、国は燃料電池を中心とする「水素タウン構想」を進めています。LNGから水素を生成することは比較的簡単ですので、県北の臨海部を「水素タウン」と位置づけ、様々な先進的なプロジェクトを誘致すべきです。

国主導で日本原電の再編を推進
 東海第2原発を再稼働させないと、地域経済に影響が出て、地域の活力が奪われるという懸念があります。
 日本原電は1957年に電力9社と電源開発が共同出資して設立した原子力発電専業の事業者で、1966年に国内初の商業用原発となる東海原発(東海第1原発)の営業運転を開始しました。東海原発は1998年に運転を終了し、国内商業用原発で初めて廃炉作業に入っています。現在は東海第2原発、敦賀原発1・2号機の3基を保有しています。しかし、この3基の原発の再稼働も非常に困難な状況です。
 地域の活力を維持するためには、日本原電の経営形態それ自体を見直すことが必要です。
新たな収益源の本命とみられるのが、廃炉支援ビジネスに他なりません。日本原電は東海原発で廃炉のノウハウを蓄積している日本唯一の企業です。政府は原発の寿命を運転開始から原則40年に決めています。老朽化の目安となる稼働後35年以上の国内原発は10基以上あります。日本原電に廃炉作業自体を請け負わせることも検討すべきです。
 また、日本原電を原発の運転・保守の「受け皿会社」とする考え方もあります。日本原電は発電を行う会社から、原発を持たずに運営などを請け負う会社に再編することも選択肢の一つです。
 いずれにせよ、国が責任を持って日本原電の今後の方向性を示すことが必要です。賢明な選択が行われたならば、東海地域は新たな発展のエンジンを持つことになると確信します。