つくば市の小中一貫教育のイメージ 6月17日、「学校教育法等の一部を改正する法律案」が、参議院本会議において賛成多数で可決、成立しました。これによって「義務教育学校」の名称で、小中一貫校が正式に制度化さらます。平成28年4月1日から施行されます。義務教育学校は国公私立のいずれも設置でき、希望する自治体では順次導入していくことになります。小学校6年、中学校3年の「6・3制」の変更を可能にする、この法改正は1947年の学校教育法制定以来の大きな改革となります。
 小中一貫校は、今までも特例として認められ、先行実施している自治体で成果を挙げています。文部科学省の調査では、一貫教育の実践校のうち9割近くが「成果が認められる」と回答、利点として(1)中学校入学に伴う環境の変化で不登校などを起こす「中1ギャップ」の解消(2)子どもの学力や生活態度の向上(3)小・中学校の教員同士の交流による授業内容の改善――などが挙げられています。
 小中一貫校を視察した公明党議員にも「少子化で一人っ子が増える中、中学生が小学生を弟や妹のように気に掛け、小学生が悩みを相談するなど情操面でも良い影響がある」などの声が寄せられています。
 2011年度から小中連携を進める埼玉県入間市では、2009年度に22人いた中学1年生の不登校が昨年度、他市から転入した2人を除きゼロとなりました。
 しかし、課題も幾つか残されています。その一つが教職員の負担の問題です。一貫校では、英語教育を早期に始めるなど小・中学校の間で授業の順番を一部入れ替えるといった柔軟な授業編成も可能になります。小学校と中学校では、子どもの発達段階に応じて、学習指導、生徒指導の方法が異なるため、教員は双方の指導内容に精通していかなければなりません。
 当面は経過措置が認められますが今後、義務教育学校の教員は小・中学校両方の免許が必要になります。現役教員が、もう一方の免許を取得しやすくする仕組みを、検討しなくてはいけません。
 特定の小学校の児童が全て同じ中学に進学するとは限りません。学年の区切りが異なる地域に転校が必要になる場合に、不安を感じる保護者もいます。学校の統廃合が検討されている地域では、さらに事情は複雑になります。自治体は、地域の実情に合わせた取り組みを進め、子どもや保護者が不安を抱かないように円滑に導入を進めるべきです。

小中一貫校96%で効果あり
 文部科学省が発表した「小中一貫教育等についての実態調査」の結果によると、義務教育9年間を見通した学力・学習意欲の向上や、「中1ギャップ」への対応として進められている小中一貫教育を実施する211市区町村のうち、96%で成果が認められていることが明らかになりました。特に、中1ギャップが緩和されたと多く回答されていることが報告されています。
 この調査は、全都道府県、全市区町村、小中一貫教育を実施している全国の国公立小・中学校1130件を対象に実施されました。小中一貫教育の推進状況や取組み内容、成果、課題などについて、平成26年5月1日時点の状況を調べたものです。
 都道府県による小中一貫教育の推進状況は、「国の検討や他の都道府県の取組みを注視」が33都道府県ともっとも多く、「現時点での特段の取組みはない」7都道府県、「積極的に推進」4都道府県、「積極的な推進を検討」3都道府県が続きました。また、小中一貫教育を推進するための方針等の策定状況は、「今後国において推進策案等が示された場合、対応を検討」がもっとも多く37都道府県にのぼっています。
 市区町村による小中一貫教育・小中連携教育の実施状況は、「小中連携教育のみ実施」がもっとも多く66%、ついで「実施なし」22%、「小中一貫教育実施」12%。小中一貫教育推進のおもなねらいは、「中1ギャップの緩和など生徒指導上の成果を上げる」「学習指導上の成果を上げる」「9年間を通して児童生徒を育てるという教職員の意識改革」が9割を超えました。
 小中一貫教育を実施している211の市区町村の総合的な評価は、「成果が認められる」76%、「大きな成果が認められる」20%、「成果があまり認められない」4%で、「ほとんど成果が認められない」と回答した市区町村はありませんでした。特に「いわゆる中1ギャップが緩和された」「中学校への進学に不安をおぼえる児童が減少した」「小・中学校共通で実践する取組が増えた」といった項目で一定の成果が認められました。