タムラインの事例 今年は例年に比べ、梅雨明け前から台風が多く発生しました。5月上旬段階で7号を数えたのは、1951年の統計開始以降で最も早くなっています。
 気象庁によると、台風の半分以上は例年8〜10月に集中(81〜2010年の平均)しており、これから本腰を入れた対策が必要になります。国や地方自治体は、事前防災を徹底し、被害を最小限に食い止めるめる努力が必要です。
 全国の市町村で導入が広がっているのが、事前防災行動計画「タイムライン」です。これは、大規模災害の被害を抑えるため、行政や企業、住民などが事前に「いつ」「誰が」「何をするのか」を明確にしておくものです。
 2012年に米国東海岸を襲ったハリケーン・サンディでは北米で130人以上の犠牲者が出ましたが、ニュージャージー州沿岸部の一部地域では4000世帯が被災したものの、タイムラインによる事前防災行動を迅速に行った結果、犠牲者を出さずにすみました。
 今回の台風11号で試験的にタイムラインを運用した高知県大豊町は、豪雨や暗い中での避難が困難な高齢者らを想定し、雨が降る前の明るい時間帯から早めの避難を呼びかけました。
 大豊町の担当者は「地域の区長を通じて呼びかけた効果もあり、今までなら応じなかった人も避難してくれた。経験を今後に生かして、タイムラインを改訂していきたい」と語っています。
 国も積極的な情報発信に取り組んでいます。台風11号で気象庁は、土砂災害の警戒情報を広範囲に発令しました。これを受け、市町村が早めの避難勧告・指示を出したことが台風被害の軽減につながったとみられます。
 一方で、過去には、大雨警報と土砂災害警戒情報が発令されていたにもかかわらず、町が避難勧告を出さずに被害が拡大したケースがありました。同じ失敗を繰り返さないよう、国と地方自治体は連携を密にして事前防災対策を進めるべきです。

台風接近で、JR早めの全線運休
 JR西日本は2014年10月12日、台風19号の接近に備え、13日午後から京阪神地区で全線運休することを決定しました。「タイムライン」(事前防災行動計画)の考え方から、先手を打った対応が注目されています。
 JR西日本は10月上旬に台風18号が接近した際にも、一部区間の運休を事前に公表したすたが、京阪神全域では、台風19号の事例が初めてでした。「あらかじめ周知することで、外出計画を変更してもらう方が安全」と、JR西日本の担当者は説明しています。防災の専門家は「交通機関が率先して動けば、社会が事前対応を決めることができる」と評価しています。
 防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏は「主要交通機関が早い段階で運休を予告することで、企業や学校に警戒を呼びかけることになり、混乱を軽減することができる」と話しています。