石破茂地方創生担当大臣講演会 8月2日、石破茂地方創生担当大臣が日立市、高萩市、北茨城市を現地調査し、北茨城ふれあいセンターで講演を行いました。井手よしひろ県議は、講演会開催前に名刺交換し、やる気のある地方自治体への積極的な支援を要望しました。
 石破大臣は昭和32年生まれ、農水大臣、防衛大臣などを歴任しています。地方創生が日本の今後を左右する大事な取り組みであることを、石破大臣の講演から再確認しました。「人口減少問題は静かな有事」との言葉が印象的でした。
 以下、講演の概要を速記メモから書き起こしました。あくまでも趣意ですので、正式な発言として引用などはしないで下さい。写真は主催者の了解を得て撮影しました。

『地方創生』に「この取り組みに失敗したら日本の国はなくなる」という危機感
 安倍内閣の地方創生は、今までの政権の取り組みとどこが違うのか、今回の地方創生は「この取り組みに失敗したら日本の国はなくなるのだ」という危機感を持っています。
 国民がどんどん減り始めたら国家そのものがなくなってしまいます。人口が減り始めているのをどのように止めるのか?人口減少はある意味で”静かな有事”ともいえる事態であると思っています。
 この人口が減少するという事態を指摘したのが、増田寛也元総務大臣、元岩手県知事です。”地方消滅”という論文で警鐘を鳴らしました。それ以来、地方創生がクローズアップされるようになったのです。あの論文のすごさは、1718の全国すべての市町村で、今のままでいった場合の、25年後の2040年における20代〜30代の女性人口の予測を明らかにしたことです。これら世代の女性の数が8割減る、7割、6割減るという市町村が、たくさんあるわけで、それらの地域はこのままでは、地域としての持続可能性を持ち得ないであろうということです。
 茨城県では大子町で72.8%、河内町66.1%、稲敷市66.3%、若い女性の数が減少します。日立市は53%で、高萩市で62%、北茨城市57%減ります。私の選挙区では若狭町で80%減ると推計されています。
 限界集落が限界市町村になる。こうした傾向にどう歯止めをかけるかが大きな問題です。

東京圏の高齢化が大きな課題
 もう一つは東京をどうするかということです。昭和30年から45年にかけて、15年の間に東京に何が起こったか。人類で誰も経験したことのない人口増、500万人の人口増加が起こった。500万人が、地方から住み替えたのです。
 今年は昭和90年。15歳で東京に移り住んだ人が後期高齢期に差し掛かるのです。これから人類が経験したことのない規模とスピードで、東京が超高齢化していく。今までは若い街であったから、医療とか介護とか、急性期や高度医療を除く一般医療は十分でなくてもやれたのです。これからはそうは行きません。
 それに反して、地方、特に西の方は高齢化が早く起こっていますので、高齢者の数自体は少なくなってきます。こうした地域は、医療とか介護が相当手厚くできているので、医療とか介護の人材が余り始める。地方が余り、東京が不足すると、東京への人の動きが大きくなります。
 東京は残念ながら食料が作れません。再生可能エネルギーが作れません。出生率はダントツの全国最低です。東京は、食料もエネルギーも人材も消費する都市なので、生産する地方が衰退すると、東京だけが生き残るということはありえないのであります。
 東京は世界の金融の拠点、文化や芸術の発信の拠点としての機能があります。直下型大震災にも対応しなければなりません。人口の集中や高齢化に対応するなど、その負荷は莫大なものがあります。国家的な課題なのです。
農業・漁業・林業、サービス業などに大きな可能性
石破大臣講演 全国の地方が1970年台から80年代までの十年間、人口が増えた時期がありました。この要因は、間違いなく公共事業と企業誘致にあると思われます。さて、もう一度同じことができるでしょうか?優先順位の高いの公共事業はやりますが、公共事業で地方に雇用と所得をもたらすことはできないと断言します。
 同じものをたくさん安く、大勢の人でつくるというというビジネスモデルはもはや日本には向きません。日本が貿易で勝てない国、フランスやイタリア。なんでこの国に勝てないか?酒、食べ物、ファッションなどで太刀打ち出来ない。じゃあ、日本の酒や和食や伝統工芸が、フランスやイタリアに劣っているか。そうではありません。
 日本ほど農業、漁業、林業に向いている国はありません。農林水産業は土と光と水と温度の産業です。この4つの条件に恵まれている国は日本だけです。このような条件に恵まれている日本の農業が、なぜこのような状況になったのか?どっかで政策が時代に合わなくなったのにもかかわらず、そのままやってきたからと言わざるを得ません。
 北茨城は漁業の一大拠点。漁業で言えば、日本の排他的経済水域の広さは世界で6番目、深さまで計算にいれて体積で比べると世界4位。こうした豊かな漁場がありながら、漁獲高がピークの半分以下。これは、資源管理のあり方が時代に合わなくなったからです。
 高萩は、その面積の85%が森林です。世界中で木の切りすぎで困っているのですが、日本は木の切らなすぎで困っている珍しい国です。一年間で成長する木の量で、日本の一年間の木材消費などは楽に賄えるのに、林業はこんなにダメになったのか?これは、政策が合わなくなったからといわざるを得ません。日本国中、木造10階建てのホテルというのは見たことがありません。木造10階建のアパートというのは見たことがありません。木造10階建ての事務所というのを見たことがありません。当たり前です。ないのですから。だけど、ヨーロッパに行けば当たり前のようにあります。これは、山のことであれば林野庁が、建物のことは国交省がそれぞれバラバラやっているので、技術開発が遅れたのです。CLTという技術は今や常識です。色んな所の建物を国産材で作ったら、ずいぶんと山の事情は変わるはずです。
 間伐材や木の枝で暖房を行う、調理を行うことでエネルギー需要は大きく変わってきます。
 農業、漁業、林業に伸びる余地はいっぱいあるはずです。
 農業やサービス業などは、先進国の中で稼ぐ力が最低に近いのです。ということは、そこにものすごく伸びる可能性があるということです。
 海外からの観光客が1350万人を超えました。GDPに占める観光の割合は、日本が先進国中最低です。人口より観光客が多い国フランス。おもてなしという言葉は大事ですが、フランスは決して愛想のいい国ではありません。じゃあ、なんで人が来るか、自然、気候、文化、食べ物の4つで目一杯外国に売り込んでいます。
 北茨城でも、高萩でも、四季、自然、文化、食べ物もフランスに負けるものではありません。いろんな人を伸ばす要素を伸ばしていく。こうしたネタは、地方にたくさんあります。「なんにも無いけどね」という場所に人は来ません。その地域の人がいいと思わない場所に人が来るはずがないのです。いま、北海道に外国人が多く訪れています。北海道の素晴らしい風景や食べ物を、インドネシアにはインドネシア語で、タイにはタイ語で、ベトナムにはベトナム語で、外国の民放に映像を流させています。現地の言葉で対応できなければ、外国の人は来ません。

地方創生の具体的な計画作りには“産官学金労言”の連携がキーポイント
石破茂地方創生担当大臣講演会 来年の3月30日までに、各市町村に「あと5年間でこうしますよという計画を作ってくだいさい」とお願いしています。今度作る計画のポイントは、"産官学金労言"という言葉です。
 "産"は地域における産業界、商工会など。"官"は県庁、市役所、町役場の役所。"学"は地方大学、高校の学者や学生さん。"金"は地方銀行、信用金庫などの金融機関。"労"は労働組合です。
 第2子、第3子、第4子と子どもを生む割合とご主人が掃除、洗濯、育児をする時間とが見事に比例するのです。 女性の就労率を高め、女性の働き方を変えることは、男性の働き方を変えることでもあり、それには労働組合が参画してくれなければどうしようもないのです。
 "言"は言論機関、地方から情報発信をされている方々です。
 つまり、総合戦略の策定は市町村、役所だけでやることではなくて、どれだけ大勢の人、多種多様な方々が参画するかが大切です。国は”リーサス(地域経済分析システム)”という仕組みを提供しました。今まで、「ひと・かね・もの」の流れは、行政しか情報を持っていませんでしたが、パソコンをつなげばだれでも見えるようにしました。
 そして、新型交付金は、まさに県を越えた取り組み、官民を越えた取り組み、そういうもの対して支援をさせていただきます。

「今だけ、ここだけ、あなただけ」というところには、必ず人が集まる
 私たちは、この国を次の世代に残す責任をもっています。今、日本で起こってていることはやがて、韓国や中国で起こります。タイやインドネシアでも起こります。日本は課題先進国であります。どうやってこれを乗り越えるかを示すことは、日本人が世界に向けて果たすべき責任でもあります。
 どうか、ここに集まった市民の皆様が「お任せ主義ではなく」(地方創生の具体的計画づくりに)取り組んでいただきたい。先進地域では高校生も一生懸命参加しています。公共事業に頼ることもない、交付税に頼ることもない、新しいまちづくりとはどういうことなのか取り組んでいます。
 JR九州では“七つ星”という超高級列車を運行し、成功を納めました。3泊4日で75万円。切符を売り出すと同時に売り切れます。何でそんなに売れるのか。世界一の列車をつくったからです。そしてそこにおいて提供される肉も、コメも、果物も、野菜も九州一のものか出さない。そして、九州一の寿司職人が寿司を握る、九州一のシェフが料理をつくる、これが秘訣です。
 世界一のものであれば人が集まります。「今だけ、ここだけ、あなただけ」というところには、必ず人が来ます。でも、「いつでも、どこでも、だれにでも」のところには、交通の発達が必ず徒になります。
 全知全能を用いて、この国家の難事に取り組んでまいりますので、どうぞ皆さま方のお知恵、お力をお貸し下さい。