山梨県:職業紹介まで含めて積極的な移住獲得策
ふるさと回帰支援センターで開かれた北杜市の移住説明会 8月6日、井手よしひろ県議は山梨県の北杜市と山梨市を訪れ、地方創生の取り組みの中でも、特に、移住促進策(定住促進策)について担当者から聴きとり調査を行うとともに、意見交換を行いました。北杜市の地域課・仲嶋敏光課長、山梨市のまちづくり政策課・深澤秀史課長などから貴重なお話を伺うことが出来ました。北杜市議会議員・内田俊彦氏にもご同席いただきました。
 東京や大阪などの大都市に住む人の地方移住をサポートしている認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」の調査によると、2014年の「田舎暮らし希望地域ランキング」第1位に山梨県が輝きました。長野県が2位、岡山県が3位と続いています。このランキングは2014年1月〜12月の1年間、「ふるさと回帰支援センター」が運営する「ふるさと暮らし情報センター」利用者に対するアンケートを集計したもので、延べ2885人が回答しました。
 ふるさと回帰支援センターでは、山梨県がトップになった理由を、「東京に近い点がやっぱり強み。特急列車1本ですぐに帰郷できます。そして自然環境、山梨に足を運んだことがないという人は少なくて、一度は山梨を訪れたことのある方たちがほとんどです」と語っています。
 ふるさと回帰支援センターでは、ほぼ毎月、山梨県の市町村がセミナーを開催しています。2014年6月には生活や住宅、就職の相談に対応した窓口『やまなし暮らし支援センター』がオープン。県の労働局も人員を配置しており、ハローワークの端末が有楽町の支援センターのブースから検索できるという、他府県にはない積極的な取り組みを展開しています。
八ヶ岳、清里などのブランド力で勝負する北杜市
北杜市のクラインガルテン 山梨県の中でも、人気の市町村は北斗市です。その理由は、テレビや映画などで紹介され、知名度も高い小淵沢や清里といった観光地があるからです。八ヶ岳の姿は、東京から中央線に乗って西へ進むと、最初に高原の空気が感じられます。さらに、「八ヶ岳リゾートアウトレット」などの人気の大型商業施設もあります。自然環境と田舎暮らしを満喫しつつ、車を少し走らせれば都市型の便利な生活もできる点が高く評価されています。
 実際に平成26年の北杜市の人口社会動態(社会増減)は、転入者数(年間1712人)に対して、転出者数(年間1539人)を上回っており、地方都市では稀な社会増となっています。特に県外からの転入者の割合が7割と高く、北杜市は移住先として人気の高い地域であることが実証されています。
 こうした状況の中、北杜市はさらに移住促進策を打っています。北杜市では、移住者を受け入れるための住居を探すことが難しい状況があります。空き家バンク制度はありますが、まず北斗市内に住んでもらいための賃貸物件が圧倒的に不足しています(50件のうち38件が売り物件、賃貸物件は12件)。他の市町村と比べて、物件の価格が高いことも大きな欠点となっています。
 このために北杜市では、子育て家族が新たに市内に住宅を建設したり、中古住宅の清掃費に助成金の創設を検討しています。地方創生の総合戦略の中で、空き家の清掃費として20万円を上限に、新築は100万円をベースに最高150万円程度の助成金制度を9月議会に提案する予定です。
 また、子育て支援の充実にも力を入れています。出産祝い金として、第2子5万円、第3子30万円、第4子以降50万円(一人あたり)が支給されます。また学童保育なども充実しています。

空き家バンクを充実し、生活基盤そのものの整備を進める山梨市
山梨市を現地調査 山梨県の最北部、山梨市の定住促進策(移住促進策)は、北杜市のそれとは一線を画します。北杜市が風景や観光など魅力ある環境を売りに移住を呼び込もうとしているのに対して、山梨市は普通の住環境の良さを強調しています。山梨市の特徴は、1.首都圏から100km圏内という交通の利便性、2.1年を通して温暖な気候に恵まれ災害の少ない地域、3.総合病院をはじめ多くの医療機関がある、4.食料品店を中心とした商業地が形成、5.豊かな自然環境、美しい景観に恵まれた快適な居住空間、などがあげられます。
 こうした地域の魅力を活かして、移住を進めるために山梨市では早くから「空き家バンク」制度に取り組みました。平成18年9月には宅建業組合と連携の上、「空き家バンク」が設立されました。これまでの実績は、利用登録者数:458人(延べ993人:平成27年8月4日現在)、登録物件:26件(延べ152件)内、交渉中:2件
、成約件数:71件(売買26件、賃貸45件)となっています。全国の市町村でもトップクラスの実績です。また、リフォームのための補助金(最高額10万円)などを導入しました。
 その上で、子育て環境や教育、交流基盤の充実など、オーソドックスな手法で移住促進を図る考えです。
 具体的には、◯子ども医療費無料化制度を中学校3年生まで拡大する、◯健やか育児支援祝金(第3子以降の出生に20万円の祝金)、◯市立(公設民営)の産婦人科医院を建設する、◯教育環境を充実させるために小中学校の全教室にエアコンを整備する、◯全小中学校にALTを配備し英語教育を充実させる、などです。交流人口を拡大するために、リニア新幹線の開通を前提に、リニア甲府駅へのアクセス道路整備などにも取り組みます。
 こうした政策は平成26年度から28年度までの3カ年計画である「山梨市チャレンジコミッション」として明確化され、この計画をもとに「地方創生総合戦略」の素案がすでに取りまとめられています。
 市民生活のレベル向上の延長線上に、定住促進策(移住促進策)があるといった考えかたが読み取れます。

 地方創生とは、全国の市町村がその強みを活かし、弱みを克服しながら人口減少と大都市圏への一極集中に歯止めをかけようとする取り組みです。山梨県の取り組み、北杜市、山梨市の取り組みから画一的な政策展開ではない、地方の生き残りをかけた真剣な挑戦が始まっていることを実感しました。