イメージ 井手よしひろ県議は、動物愛護行政の推進について、9月県議会の代表質問で取り上げる予定です。
 茨城県の平成25年度の犬の殺処分頭数は、前年比1019頭減の2158頭となり、8年連続の全国最悪を脱出しました。しかし、最下位を脱出したとはいえ、いまだ多数の殺処分頭数があるという現状には変わりはありません。
 平成26年度の状況は、犬が1751頭、猫が2218匹と合計で3969頭が処分されています。犬が407頭減、猫が555匹減、合計で962頭減という結果は、動物指導センター、県獣医師会を始め数多くのボランティアの皆さまの献身的なご努力の結果であると敬意を表します。
 県においては、動物愛護普及啓発の事業の強化や県の枠を超えた広域譲渡の試行的実施、飼い主のいない猫への不妊去勢手術の実施など、新たな試みも含めて、殺処分ゼロを目指す活動を展開しています。
 私は、こうした取り組みの上に、次の2点を早期に対応すべき課題だと思っています。

水戸市、つくば市との連携で動物愛護の拠点施設を整備
ハローアニマル(譲渡犬室) まず、動物愛護の拠点施設の整備です。2007年9月議会の一般質問で、県議会公明党の田村けい子議員は、動物指導センターとは別に、動物愛護啓発のための拠点施設を整備することを提案しました。井手県議も2009年10月の保健福祉委員会で「動物愛護センター」の整備を再び提起しています。
 私はこの夏、群馬県の動物愛護センターを現地調査しました。お盆明けには、神奈川県、政令指定都市である横浜市の動物愛護の拠点施設を現地調査する予定です。(これまでにも、長野県の動物愛護センター「ハローアニマル」、栃木県動物愛護指導センターなどを調査しました)
 群馬県は今年7月1日、これまで殺処分中心だった県動物管理センターに代わる施設として「群馬県動物愛護センター」を県南部の玉村町に開設しました。群馬県動物愛護センターは、犬・猫等の動物の保護や苦情相談に加え、保護期間が過ぎた犬・猫について、感染症の有無や社会適応性のチェックを行い、譲渡可能と判断した場合は、希望する県民に譲渡したり、動物愛護及び動物福祉の啓発事業を中心に業務を行います。また、動物愛護に対する県民の啓発事業の拠点として、様々な活動を行う施設です。
 建築費は約1億4000万円。年間の運営経費は約5750万円です。鉄筋コンクリート造、平屋建て、敷地面積7463平方メートル、床面積は380平方メートル。全室冷暖房完備です。大変コンパクトな設計ですが、使い勝手は良いようです。
 群馬県は、今回新設された愛護センターを中心に、3箇所の出張所(渋川、富岡、太田)で、動物愛護関連の行政を行うことになります。また、中核市である前橋市と高崎市は、独自に愛護の拠点施設を持っており、県と連携を取りながらきめ細かな動物愛護行政を推進していくことになります。
 一方、神奈川県では、動物保護センターに収容された犬の殺処分が、平成25年度にゼロになりました。平成26年度も犬の殺処分ゼロを継続し、さらに、猫についても初めて殺処分ゼロを達成しました。平塚市にある神奈川県動物保護センターは、横浜、川崎、相模原の3政令市と横須賀市、藤沢市を除いた県全域を所管しています。動物保護センターには42のボランティア団体や個人が登録し、譲渡先を探したり子猫や子犬を育てたりする活動をしています。こうした善意の団体との連携強化が殺処分ゼロの原動力となっています。神奈川県は、この7月、この動物保護センターの建て直しを決定しました。
 新たな動物保護センターは、犬猫の殺処分ゼロ継続を目指し、保護した犬猫を「生かすための施設」と位置付けています。殺処分室の廃止や収容室の個室化、ボランティアの活動場所提供も進め、2018年度末の完成を目指しています。総工費は11億円を予定しており、全額寄付で賄うという条例を成立させました。
 こうした動物愛護の拠点施設整備は、もはや殺処分ゼロのためには必要条件となりつつあります。保護された犬猫の譲渡を進めるための施設。ボランティアの活動拠点として施設。動物愛護の啓発活動の中心施設。県民と動物が触れ合うための施設。愛玩動物の大規模災害時などへの対応の拠点施設など、多目的に活用できる施設がどうしても必要です。
 整備手法については、今後、水戸市やつくば市が中核市として保健所機能を担っていくことも充分想定できますので、水戸市やつくば市との連携も視野に入れるべきです。

市町村毎に動物愛護条例の制定を呼びかけ 
 2つ目の課題は、市町村との連携強化です。そもそも住民に一番近い自治体である市町村には、狂犬病など動物由来の伝染病などの担当部署はあっても、動物愛護の担当部署がありません。動物愛護に責任を持つ職員自体がいないのです。茨城県内での殺処分ゼロを達成するためには、茨城県だけの力で運動を進めるには限界があります。殺処分ゼロを達成した多くの自治体は、政令指定都市、中核市となっています。また、県にあっては、県内に政令指定都市や中核市が存在する自治体です。つまり、住民に身近なところで、動物愛護の精神の啓発や譲渡活動が目に見える形で行われている自治体が多くなっているのです。
 県内市町村でも、動物愛護条例を制定し、独自に動物愛護行政を進めている、守谷市や牛久市、阿見町などの自治体があります。こうした市町では、明らかに殺処分数が減っています。市町村との連携がいかに重要なのか、その証左であると考えています。
 できれば、県内のすべての市町村が条例を制定し、動物愛護の体制を整備することが理想であると主張します。県は、昨年度から「動物愛護地域連絡会議」を設置し、市町村との連携強化に力をいてていますが、知事の積極的なリーダーシップに期待するところは非常に大きなものがあります。

 この他にも、課題はたくさんあります。ボランティアとの連携のあり方、ペット業者や繁殖業者の規制のあり方なども大きな宿題です。出来る事から官民挙げて全力で取り組んでまいりたいと思います。