150814abe 8月14日、政府は臨時閣議を開いて、戦後70年にあたっての総理大臣談話を決定し、安倍総理大臣が記者会見で発表しました。
 安倍総理大臣は「わが国は先の大戦における行いについて繰り返し痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた。こうした歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」と述べ、いわゆる「村山談話」などを引き継ぐ方針を明確にしたうえで、積極的平和主義の下、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献していく考えを表明しました。
 70年談話では、過去の「村山談話」と「小泉談話」に盛り込まれた歴史認識を巡るキーワードをどう引き継ぐのかに注目が集まっていました。つまり、『植民地支配』『侵略』『痛切な反省』『お詫び』との4つのキーワードです。このすべてを使いながら、歴代内閣の立場を継承する姿勢を明確にしてことは評価に値します。
 その上で、今後の日本の歩みについて、各国の人々の「寛容の心」の心によって、日本が国際社会に復帰できたことに感謝の意を示したうえで、「日本では、戦後生まれの世代が今や人口の8割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお、私たち日本人は世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」と表現しました。「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との表現が、もう謝罪は必要ないとの意味であれば、違和感を感じますが、その後段に「私たち日本人は世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」との表現で、一度犯した過ちへの“謝罪の念の継続”を表現したものと受け取りたいと思います。
 結びに、「私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ我が国は、いかなる紛争も、法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的・外交的に解決すべきである。この原則をこれからも堅く守り、世界の国々にも働きかけてまいります。我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値を揺るぎないものとして堅持し、『積極的平和主義』の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄にこれまで以上に貢献してまいります」などと語り、談話を締めくくりました。
 村山談話、小泉談話はおよそ1300字程度でしたが、今回の談話は3000字を越える分量となっています。その分、主語と述語の関係があいまいで、一読して分かりづらい文章です。段落の構成も、次から次に話題が進み、関連が読み取りづらくなっています。『植民地支配』『侵略』『痛切な反省』『お詫び』とのことばや、歴代内閣の立場を継承する姿勢が明確になったことは事実ですが、それを安倍総理自身を主語として、明確に簡潔に表現してもらいたかったと思います。
参考:安倍総理の戦後70年談話(首相官邸のHP)

安倍首相の70年談話を受けて、公明党山口那津男代表のコメントです。

安倍晋三首相は8月14日、首相官邸で記者会見し、戦後70年談話を発表しました。以下、その全文を掲載します。
首相談話全文(安倍談話・2015/8/14)
 8月は私たち日本人にしばし立ち止まることを求めます。今は、遠い過去なのだとしても、過ぎ去った歴史に思いを致すことを求めます。政治は歴史から未来への知恵を学ばなければなりません。戦後70年という大きな節目にあたって、先の大戦への道のり、戦後の歩み、20世紀という時代を振り返り、その教訓の中から未来に向けて、世界の中で日本が、どういう道を進むべきか。深く思索し、構想すべきである。私はそう考えました。
  同時に、政治は歴史に謙虚でなければなりません。政治的、外交的な意図によって歴史が歪められるようなことは決してあってはならない。このことも私の強い信念であります。ですから、談話の作成にあたっては「21世紀構想懇談会」を開いて、有識者の皆様に率直かつ徹底的なご議論をいただきました。それぞれの視座や考え方は当然ながら異なります。しかし、そうした有識者の皆様が熱のこもった議論を積み重ねた結果、一定の認識を共有できた。私はこの提言を歴史の声として受け止めたいと思います。そして、その提言の上に立って、歴史から教訓をくみ取り、今後の目指すべき道を展望したいと思います。

 100年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が広がっていました。圧倒的な技術優位を背景に植民地支配の波は、19世紀アジアにも押し寄せました。その危機感が日本にとって近代化の原動力となったことは間違いありません。アジアで最初に立憲政治を打ち立て、独立を守り抜きました。
 日露戦争は植民地支配の元にあった多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました。世界を巻き込んだ第一次世界大戦を経て、民族自決の動きが広がり、それまでの植民地化にブレーキがかかりました。この戦争は、1千万人もの戦死者を出す悲惨な戦争でありました。人々は平和を強く願い、国際連盟を創設し、不戦条約を生み出しました。戦争自体を違法化する新たな国際社会の潮流が生まれました。当初は、日本も足並みをそろえました。
 しかし、世界恐慌が発生し、欧米諸国が植民地経済を巻き込んだ経済のブロック化を進めると、日本経済は大きな打撃を受けました。その中で日本は、孤立感を深め、外交的、経済的な行き詰まりを力の行使によって解決しようと試みました。国内の政治システムは、その歯止めたりえなかった。こうして日本は世界の大勢を見失っていきました。
 満州事変、そして国際連盟からの脱退、日本は次第に国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした新しい国際秩序への挑戦者となっていった。進むべき進路を誤り、戦争への道を進んでいきました。
 そして、70年前、日本は敗戦しました。戦後70年にあたり、国内外に倒れたすべての人々の命の前に、深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに永劫の哀悼の誠を捧げます。先の大戦では、300万余の同胞の命が失われました。
 祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら戦陣に散った方々。終戦後、酷寒のあるいは灼熱の遠い異郷の地にあって飢えや病に苦しみ亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などによって、たくさんの市井の人々が、無残にも犠牲となりました。
 戦火を交えた国々でも、将来ある若者たちの命が、数知れず失われました。中国、東南アジア、太平洋の島々など、戦場となった地域では戦闘のみならず、食糧難などにより、多くの無辜の民が苦しみ、犠牲となりました。戦場の陰には深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも忘れてはなりません。
 何の罪もない人々に計り知れない損害と苦痛を我が国を与えた事実。歴史とは実に取り替えしのつかない苛烈なものです。一人一人にそれぞれの人生があり、夢があり、愛する家族があった。この当然の事実をかみしめるとき。今なお言葉を失い、ただただ断腸の念を禁じえません。
 これほどまでの尊い犠牲の上に、現在の平和があり、これが戦後日本の原点であります。二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない。植民地支配から永遠に決別し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない。
 先の大戦への深い悔悟の念と共に、わが国はそう誓いました。自由で民主的な国を作り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを堅持してまいりました。70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たちは静かな誇りを抱きながら、この不動の方針をこれからも貫いてまいります。

 わが国は先の大戦における行いについて、繰り返し痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンをはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。こうした歴代内閣の立場は、 今後もゆるぎないものであります。
 ただ、私たちがいかなる努力を尽くそうとも、家族を失った方々の悲しみ、戦禍によって塗炭の苦しみを味わった人々のつらい記憶は、これからも決して癒えることはないでしょう。ですから、私たちは心にとどめなければなりません。
 戦後600万人を超える引き揚げ者が太平洋の各地から無事帰還でき、日本再建の原動力となった事実を。中国に置き去りにされた3000人近い日本人の子どもたちが無事成長し、再び祖国の土を踏むことが出来た事実を。米国や英国、オランダ、豪州などの元捕虜の皆さんが長年にわたり、日本を訪れ、互いの戦死者のために慰霊を続けてくれている事実を。
 戦争の苦痛を嘗め尽くした中国人の皆さんや日本軍によって耐えがたい苦痛を受けた元捕虜の皆さんが、それほど寛容であるためには、どれほどの心の葛藤があり、いかほど努力が必要であったか。そのことに私たちは思いを致さなければなりません。寛容の心によって、日本は戦後、国際社会に復帰することができました。
 戦後70年のこの機にあたり、わが国は和解のために力を尽くしてくださった、すべての国々に、すべての方々に、心からの感謝の気持ちを表したいと思います。

 謙虚な気持ちで過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任がある
 日本では戦後生まれの世代が今や人口の8割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。しかし、それでもなお私たち日本人は世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。
 謙虚な気持ちで過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。私たちの親、そのまた親の世代が、戦後の焼け野原、貧しさのどん底の中で命をつなぐことが出来た。そして、現在の私たちの世代、さらに次の世代へと未来をつないでいくことが出来る。
 それは先人たちのたゆまぬ努力と共に敵として熾烈に戦った米国、豪州、欧州諸国をはじめ、本当にたくさんの国々から恩讐を超えて、善意と支援の手が差し伸べられたおかげであります。
 そのことを私たちは未来へと語り継いでいかなければならない。歴史の教訓を深く胸に刻み、よりよい未来を切り開いていく。アジアそして世界の平和と繁栄に力を尽くす。その大きな責任があります。
 私たちは、自らの行き詰まりを力によって打開しようとした過去をこの胸に刻み続けます。だからこそ、わが国はいかなる紛争も法の支配を尊重し、力の行使ではなく、平和的、外交的に解決すべきである。この原則をこれからを固く守り、世界の国々にも働きかけてまいります。唯一の戦争被爆国として核兵器の不拡散と究極の廃絶をめざし、国際社会でその責任を果たしてまいります。
 私たちは20世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去をこの胸に刻み続けます。だからこそ、わが国はそうした女性たちの声に寄り添い、常に寄り添う国でありたい。21世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしてまいります。
 私たちは経済のブロック化が紛争の芽を育てた過去をこの胸に刻み続けます。だからこそ、わが国はいかなる国の恣意にも左右されない、自由で公正で開かれた国際経済システムを発展させ、途上国支援を強化し、世界のさらなる繁栄をけん引してまいります。
 繁栄こそ平和の礎です。暴力の温床ともなる貧困に立ち向かい、世界のあらゆる人々に医療と教育、自立の機会を提供するため、一層力を尽くしてまいります。
 私たちは国際秩序への挑戦者となってしまった過去をこの胸に刻み続けます。だからこそ我が国は、自由、民主主義、人権といった基本的価値をゆるぎないもとして堅持し、その価値を共有する国々と力を携え、積極的平和主義の旗を高く掲げ、これまで以上に貢献してまいります。
 戦後80年、90年、さらには100年に向けて、そのような日本を国民の皆さんと共に作り上げていく。その決意であります。
 以上が、私たちが歴史から学ぶべき未来への知恵だろうと考えております。

 冒頭私は「21世紀構想懇談会」の提言を「歴史の声として受け止めたい」と申し上げました。同時に、私たちは歴史に対して謙虚でなければなりません。謙虚な姿勢とは果たして、聞き洩らした声が他にもあるのではないか。常に歴史を見つめ続ける態度であると考えます。
 私はこれからも謙虚に歴史の声に耳を傾けながら、未来への知恵を学んでいく。そうした姿勢を持ち続けていきたいと考えています。

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(村山談話:1995/8/15)のポイント
 いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。
 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

内閣総理大臣談話(小泉談話:2005/8/15のポイント)
 私は、終戦六十年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と我が国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。
 先の大戦では、三百万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。
 また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。