平和安全法制に関連する参議院での議論が進んでいます。テレビやマスコミでは、国会などでの大規模なデモの模様や学者、著名人が反対する記事は大きく報道されています。しかし、そもそも安全保障の環境が厳しくなる中でどのように日本人と日本の領土を守るのかという議論や、平和安全法制のどの部分が憲法違反で、どのように直しべきかと言いった議論は、ほとんど深まっていないのが現状です。
 そこで、平和安全法制への理解を深めるために、最近の公明党国会議員の語り口から、整理して掲載しました。

平和安全法制は専守防衛の範囲内
荒木清寛参院政策審議会長(9月6日、NHK番組「日曜討論」)


【法整備の必要性】
参議院本会議で荒木青寛参議院議員 日本をめぐる安保環境が厳しくなっていることは直視すべきだ。日本周辺国の弾道ミサイルの警戒に当たっている公海上の米国イージス艦に、もし第一撃があった場合にどうするのか。これを自衛隊が排除できないようでは、ミサイル防衛で日米の共同対処が機能しない。日本の防衛政策の基軸である日米防衛協力の信頼性を高めて紛争を未然に防止するのが、今回の法案の本質だ。

【新3要件】
 自衛の措置の新3要件は第1要件で、国民の権利が「根底から覆される明白な危険がある」とし、第2要件では、自国防衛のために「他に適当な手段がない」との要件を挙げている。すなわち今回の新3要件は、あくまで自国防衛のために他に手段がない場合に限って必要最小限度の実力行使をするということだから、完全に専守防衛の範囲内だ。
 しかも昨年7月の閣議決定では、「非核三原則を守る」「軍事大国とならない」「専守防衛に徹する」との平和国家の歩みを維持すると明言している。憲法9条の専守防衛の原理の中に完全に入っている。

【大量破壊兵器の輸送】
 わが国は非核三原則を国是とし、核拡散防止条約(NPT)や生物兵器禁止条約(BWC)、化学兵器禁止条約(CWC)、クラスター弾禁止条約に入っている。(外国軍隊への後方支援で)核兵器、生物化学兵器などの大量破壊兵器や、クラスター弾、劣化ウラン弾を運んだり提供することは全くあり得ない。
そういう想定できないことを(列挙して)法文で除外するのは現実的ではない。というのは、軍事技術が進展する中で運べないものを明記すると、反対解釈として、それ以外の物は全部運ぶのかということになる。
安全平和法制成立で徴兵制度導入は真っ赤なウソ
(8月3日、公明新聞「主張」より)


 徴兵制とは、個人の意思にかかわりなく一般国民に兵役を義務付ける制度です。政府はこれまで、国会答弁などを通し、徴兵制は憲法18条の「その意に反する苦役に服させられない」との規定、または、憲法13条が定める個人の尊重の原則に反するとの理由で、憲法の下では許されないと断言してきました。
 安倍晋三首相も今国会で「明らかな憲法違反。たとえ首相や政権が代わっても徴兵制の導入はあり得ない」と繰り返し答弁しています。 このように徴兵制に関する政府見解は一貫しているのです。
 今回の法案審議の中であえて取り上げるまでもない徴兵制の問題を、なぜ一部の野党は持ち出すのでしょうか。 法案によって自衛隊員が危険にさらされるため、将来的に入隊希望者が減って徴兵制になるとか、解釈改憲で徴兵制を導入する可能性があるとか、法案の内容とは全くかけ離れた荒唐無稽の話になっているのです。 “戦争”とか“徴兵制”といった言葉を使うことで法案に対する誤ったイメージを広げることが、野党の役割ではないはずです。

自衛隊が世界中どこでも派遣されるようになることはない
荒木清寛参院政策審議会長の質問と安倍晋三首相の答弁(8月27日参院本会議)


荒木参議院議員:重要影響事態安全確保法案と国際平和支援法案に基づく後方支援活動の実施、そして国際的な平和協力活動への参加について、自衛隊の海外派遣が政府の自由になり、無制限な派遣とならないか懸念する声が、国民の間にはある。
 そこで公明党は、「自衛隊の海外派遣3原則」を与党協議の中で提起した。すなわち、第1に国際法上の正当性の確保、第2に国民の理解と国会関与など民主的統制の実現、第3に自衛隊の安全確保。この3原則が今回の法制に具体的にどう盛り込まれているか。 特に、国会承認には、わが党の強い主張により、国際平和支援法案では例外なき事前承認とされた。他の場合の国会承認についても極力事前承認とすべきだ。また、国会承認に際しては、その判断の基礎となる十分かつ詳細な情報を政府は提供する必要があると考える。
 さらに、後方支援には、防衛相は自衛隊の部隊などが円滑かつ安全に活動することができるよう、実施区域を指定するとしている。具体的にどのような地域を指定するのか。
安倍首相:公明党が提示し、本年3月の与党協議会で合意された3原則、すなわち自衛隊が国際法上の正当性を有すること、国会の関与等の民主的統制を適切に確保すること、自衛隊員の安全確保のための必要な措置を定めることを、明確に法律に定めている。
 具体的には国際平和支援法や国連平和維持活動(PKO)法において、国連や国際機関の決議や要請等がある場合のみ自衛隊を派遣できること。国際平和支援法では、例外なき事前の国会承認を要すること。PKO法では停戦監視等の業務につき原則、事前の国会承認を要すること。両法において自衛隊員の安全確保に対する配慮を義務付けることなどの内容を具体的かつ明確に指定している。
 特に国会承認について今般の安全保障法制の中には事前の国会承認により難い場合、事後承認が認められているものもある。そのような手段が認められているものについても、原則はあくまで事前承認であることから、政府として可能な限り、国会の事前承認を追求していく考えだ。
 自衛隊の活動の実施に関する情報開示について、政府としては国会および国民の理解を十分にいただけるよう可能な限り最大限の情報を開示し、丁寧に説明する考えだ。 後方支援における実施区域の指定に関して、今現在、戦闘行為が行われていないだけでなく、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について、戦闘行為がないと見込まれる場所を指定する。したがって攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことは従来と変更ない。

アメリカの艦船防護は日本の防衛のためにだけ行う
荒木清寛参院政策審議会長の質問と中谷防衛大臣の答弁(9月2日参院特別委員会)


 9月2日、公明党の荒木清寛氏は、政府案に関し、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した際、自衛の措置の新3要件に基づき自衛隊に武力行使が認められる「存立危機事態」の具体的なケースについて確認しました。
 中谷元防衛相は、日本近隣の公海上で弾道ミサイルの警戒に当たっている米国艦船への攻撃発生を例示。その時に、日本への武力攻撃を待って対処していては取り返しのつかない甚大な被害を受ける危険があるため、「わが国を防衛するための自衛の措置として、限定的な集団的自衛権を行使する必要がある」と答弁しました。
 さらに荒木氏は、「米艦は隊列を組んで行動して自前で防衛できるため、自衛隊による防護の必要はない」との指摘があると紹介し、政府に説明を求めました。
 中谷防衛相は、日米が従来から「弾道ミサイル対処等に際し、海上作戦を共同で行うことを想定している」と指摘。法整備により可能となる米艦防護を想定した訓練や運用上の協力を通じて「日米の共同対処能力も一層向上する」と強調しました。

武器輸送:核兵器の輸送は「あり得えない」
参議院杉久武議員の質問と中谷防衛大臣の答弁(8月6日参院特別委員会)


 8月26日、公明党の杉久武氏は、憲法の枠内で行う自衛隊の後方支援に関し、平和安全法制の関連法案で他国部隊への弾薬の提供や輸送を認めた点について質問しました。杉氏は、支援内容に弾薬の提供を含めた理由を確認しました。
 中谷元防衛相は、2013年に国連南スーダン派遣団(UNMISS)に参加中の自衛隊が国連の要請を受け、韓国部隊に弾薬を提供した例などを挙げ、支援活動をより実効的にし、日本や国際社会の平和と安全を一層確かにする観点から「あらかじめ法的措置を講じておく必要がある」と答弁しました。
 一方、杉氏が提供を想定する弾薬の範囲を聞いたのに対し中谷防衛相は、「拳銃、小銃、機関銃など他国部隊の要員の生命、身体の保護のために使用される武器に適合する弾薬が考えられる」と述べ、支援対象国からの要請内容に基づき、政策や関連条約、法律と整合するかを判断した上で、「主体的に実施の可否を判断する」と答えました。
 さらに杉氏は弾薬の輸送について、核兵器などの大量破壊兵器を挙げ、「これらを輸送することも当然あり得ないということで良いか」と政府の見解をただしました。中谷防衛相は、日本が非核三原則を堅持し、核拡散防止条約や生物兵器禁止条約を批准するなど大量破壊兵器の拡散防止に取り組んでおり、「核兵器、生物兵器、化学兵器といった大量破壊兵器を輸送することはあり得ない」と断言しました。