常総市相野谷付近の水没した田んぼ
 9月17日、井手よしひろ県議と高崎進県議(水戸市選出)は、JAいばらき中央会を訪れ柴田専務理事らから、常総市を中心とする農業被害の現状と喫緊の課題について意見交換しました。
 今回の水害での農産物の被害額は18億円と報告されていますが、この数字には常総市内の被害が含まれていません。稲作だけても2000ha以上の耕作地が水没しており、最終的には被害額は2倍以上になるのではないかと心配されています。

 昨日(9月16日)の井手県議の現地視察の歳、常総市三妻公民館で、地元の農家から、悲痛な声が寄せられまして。それは、「8月30日、31日の土日で家族を上げて稲刈をしました。10日には農協に出荷する予定で、倉庫に保管していたところ、10日未明の洪水でほとんどが水没して、出荷できなくなった。このままでは、この一年間の労力がまさに水の泡になってしまう。なんとかしてほしい」との内容でした。
 JA中央会との意見交換でもこうした収穫後・出荷前の米の補償問題が取り上げられました。現在の制度では、田植えから収穫前までは、農業共済制度で補償されます。またJAに出荷した後であれば、農業倉庫基金制度によって補償が受けられます。問題は収穫してJAに出荷するまでの「収穫済み米」の補償です。JAを通さずに流通する米も同じ課題を背負っています。

 たまたま9月17日付の日本農業新の一面記事でも稲作農家の和田強さんが紹介されていました。
 和田さんは、水田60ha(自作地5ha、借地55ha)が水没しました。うち25haが刈り取り済でした。収穫した玄米60俵が泥水につかり販売できなくなりました。和田さんはこの収穫分を約40人の地主に届けるはずでしたができなくなってしまいました。収穫期と災害時期が重さなっために、こうした補償の穴が発生してしまいました。
 農家の営農再開を後押しするためにも、刈り取りから検査までの未補償部分を補償するよう働きかけて行くことが必要です。
飼料用米の補償充実も
 さらに飼料用米の災害時の収入減少対策についても要望を受けました。
 国を上げて多様な米作りを進めている中で、主食用米の生産から飼料用米へのシフトは、農政の大きな課題です。今年度茨城県においては目標値7000haに対して、実績見込みが7200haと飼料米の生産が伸びました。
 平年作の場合は10haあたりの農家の手取りは米が交付金7500円と品代金をあわせて8万円強、一方飼料用米は交付金8万円と品代金で米の受取額とほぼ同一になります。しかし、大規模災害によって収穫できなかった場合は飼料用米の場合、交付金が55,000円程度となるため、大幅に補償金額が小さくなります。さらに、主食用米に関しては、減収分の一定割合が補償対象となることから、農家により格差が生じ、飼料用米への不公平感を惹起させるた恐れもあります。
 そこで、飼料用米に関する交付金の額を55,000円より一定額引き上げ、農家の収入の確保と不公平感をなくすことが重要になります。

実り泥水に奪われた 収穫済み米「補償を」 茨城・常総豪雨1週間
(日本農業新聞2015/9/17付け一面)

150917news 関東や東北地方を直撃した記録的な豪雨災害から1週間たった。関東有数の米どころ、茨城県常総市の鬼怒川流域の東部地域の多くの水田は、泥水をかぶり稲が倒れたままだ。農業機械も水没し、間近に迫る出来秋の喜びが一瞬にして消えた。被災した農家からは「先行きが見えない」との不安の声が上がる。
鬼怒川が決壊し、水田が全面的に水に漬かった同市大生地区。稲作地帯を濁流がのみ込んだ。
 稲作農家の和田勇さん(64)は、水田60ヘクタール(自作地5ヘクタール、借地55ヘクタール)が水没した。うち35ヘクタールは刈り取り前だった。作業小屋にも泥水が流れ込み、高さ2メートルに達した。刈り取ってダンプに積んであった玄米も完全に泥水に漬かった。

・玄米640俵も
 刈り取り済みの被害は玄米640俵(1俵60キロ)分。そのほとんどが彼岸明けに約40人の地主に届けるはずだったが、無理な状況だ。
 農業共済制度では、米は田植えから収穫前までが補償対象で、収穫後は対象外となる。JA常総ひかりによると、収穫期と重なり、収穫後に農家の軒先で保管した米が水に漬かったケースは多いという。
 和田さんの場合は、作業小屋の乾燥機6台、ダンプ3台、フォークリフト2台の他、もみすり機や色彩選別機、トラクター3台、パワーショベル、コンバイン2台なども水没した。農機は全て農業共済に加入しているわけではなく、補償は一部にとどまる。営農再開には億単位の借り入れが必要だという。

・描けぬ再開
 和田さんは昨年の米価下落で地域の米作りをやめる農家もいる中、農地中間管理機構(農地集積バンク)を活用し、今年5ヘクタール増やした。経営の危険分散として7ヘクタールで飼料用米にも取り組む。「片付けようにも、どこから手を付けていいのか分からない。頭の中は不安でいっぱい」と和田さん。来年以降の作付けも、今は見通しが立たない。
 和田さんは「刈り取った米も農業共済の補償の対象にしてもらえないか。政府の掲げる農家所得の向上は夢のまた夢。足元の営農でさえ危うい」と窮状を訴える。
 JA米穀課の坂巻一美課長は「災害が収穫最盛期と重なり、検査待ちの収穫済みの米を農家段階で保管しているケースは多い。農家の営農再開を後押しするためにも、刈り取りから検査までの未補償の部分を何とか補償してもらえないか」と訴えている。