山口那津男公明党代表 9月19日、国民の生命と安全を守るために隙間のない安全保障体制をつくる「平和安全法制」の関連法が、参院本会議で、自民、公明の与党両党と、日本を元気にする会、次世代の党、新党改革の野党3党などの賛成多数により可決、成立しました。
 昨年7月1日の閣議決定を受けた今回の法制は、わが国を取り巻く厳しい安全保障環境に適切に対応するため、日米同盟の信頼性を高め、その抑止力を高めることが目的です。
 同時に、国際社会の平和と安全にも一層貢献するため、自衛隊の海外派遣に関する法整備も行いました。平和安全法制には、他国防衛を目的とする集団的自衛権は認めない「自衛の措置の新3要件」など、公明党の主張が随所に盛り込まれています。法整備の目的とともに、公明党の取り組みなどについて、山口那津男代表のインタビュー記事を9月20日付けの公明新聞より掲載します。

法整備の目的
抑止力高め紛争を防止。国際社会の安定に貢献。外交の推進力の裏付けに。

 なぜ今、法整備が必要だったのか。二つの大きな目的があります。
 一つは、日本を取り巻く安保環境が激変し、厳しさを増していることに対応するためです。北朝鮮の弾道ミサイル関連技術の飛躍的な進化などは、その一例と言えます。そうした中、日米防衛協力体制の実効性をより向上させ、隙間のない防衛体制を構築することで、抑止力を高め、紛争を未然に防ぎます。
 もう一つは、日本の繁栄と安全には国際社会の平和と安定が不可欠だという観点からです。国際社会の平和と安定に貢献することにより、日本の平和を一層強固にしていきます。
 こうした法整備を進めることで、国民の生命と平和な暮らしが守られるだけでなく、抑止力を基にして、他国との外交・対話を一層促し、紛争や課題を平和的に解決することが期待できます。いわば平和外交の推進力の裏付けとなるのです。
合意形成に努力。
真面目な論議から逃げる、「戦争法案」批判

 国会では審議が尽くされたのたのかという批判があります。
 (自民・公明党の与党は)野党の要求を可能な限り取り入れて、質疑時間を確保しました。その結果、衆院では歴代6位の116時間を超え、参院でも100時間を超える審議を行いました。これは安全保障関連の法律としては最長の審議時間を費やしたことになります。
 また、野党から修正案や対案が出されたので、修正案には真摯に対応し、維新の党の対案にも協議に応じ、幅広い合意形成に努めました。そうした努力の末に、国会の関与を強めることなどについて野党3党の合意を得ましたが、これには、維新の党との協議の成果も取り入れています。その意味では、機が熟した形で採決に至ったわけです。
 一部野党は「戦争法案」との批判を繰り返しました。
 真面目な安全保障論議から逃げる「批判のための批判」にすぎません。国際紛争を武力で解決しようとするのが戦争であり、それは不戦条約や国連憲章で禁止されています。憲法9条でも明記しています。今回の法整備の目的を考えれば、安保環境が変化する中で、日米同盟の信頼性を高めて他国からの武力攻撃を抑止することを目的とする「戦争防止法」と言っていい。

公明党の主張と成果
他国防衛にならないよう新3要件で厳格な歯止め。専守防衛を堅持

 今回の法制に反映された公明党の主張で、最も大きなものは、憲法9条の下で許される自衛の措置が自国防衛に限られるということです。
 自衛隊の武力行使の限界について、昨年7月の閣議決定で「新3要件」を定め、法文上にも明記しました。これにより、自衛の措置が他国防衛を認めず、専守防衛を堅持するための厳格な歯止めが掛けられました。
 新3要件は、従来の政府の基本的な論理を踏まえたものであり、今後もこれが維持されるという意味で法的にも安定しています。これ以上の解釈を採るには、憲法を改正しなければいけません。
 次に、自衛隊を海外に派遣する場合の3原則を設けた点です。国際社会の平和と安全のために活動する外国軍隊への協力支援活動を行う「国際平和支援法」では、1点目として国際法上の正当性が必要であり、国連決議がある活動に限定しました。
 2点目に民主的統制を確保するため、国会承認を例外なき事前承認としました。
 3点目としては自衛隊員の安全の確保が重要です。自衛隊の協力支援活動が外国軍隊の武力行使と一体化すると憲法違反になるため、「現に戦闘行為が行われている現場」では活動しません。自衛隊員の安全を守るため、活動期間を通じて戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を区域指定して派遣するとの国会答弁がなされ、野党3党との合意でも確認しました。これは、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に際し、米軍などへの輸送や補給を行う「重要影響事態法」でも同様です。

 政府が政策判断する際の基準も公明党の提案によるものです。
 これについても、三つの指針を確認しました。一つ目は日本が主体的に判断する。二つ目は自衛隊にふさわしい役割を選ぶ。三つ目は平和外交努力と相まって判断する。この三つの視点が重要だと公明党が主張した結果、安倍首相も法律の要件が満たされれば必ず自衛隊を派遣するのではなく、そうした政策判断を加えて日本が主体的に判断すると答弁しています。
 別の言い方をすれば、国益に合うかどうかを見極めて決定するということです。

「平和の党」としての公明党の奮闘
近隣諸国との関係強化や「人間の安全保障」、対人地雷禁止などをリード

 昨年の閣議決定から、法案作成、国会審議を通じて幅広い合意形成を一貫してリード。自衛隊を国民のため、国際社会のために活用し、憲法に基づいて歯止めを掛けて制度をつくってきました。
 さらに今回の議論を通じて、憲法上の歯止めや自衛隊の海外派遣の原則などについて野党とも合意を結び、結論を出しました。
 平和安全法制の整備は不可欠ですが、より大きな目で見れば外交の役割が重要です。公明党は中国や韓国など近隣諸国との関係強化で積極的な役割を果たしてきただけでなく、貧困や飢餓などから人間の生命・生存を守る「人間の安全保障」や、対人地雷やクラスター弾の禁止なども力強く推進してきました。
 
 平和安全法制の関連法成立により、自衛隊員の海外派遣に際して、事前の調査や情報収集、隊員の訓練などが行いやすくなります。隊員のリスクを軽減する大事な取り組みです。平和安全法制に基づく自衛隊の活動に対する常時監視、事後検証のための国会の組織のあり方などについても取り組みます。
 公明党はこれからも、日本と国際社会の安全のために、真摯な議論を通じて、あるべき指針を示し、政治を進めていく決意です。