所得別エンゲル係数
 10月27日付の朝日新聞に、久しぶりに頓珍漢な記事が掲載されました。「経済気象台」というコラムに乗った「軽減税率には問題がある」との記事です。
 この「経済気象台」とは、「第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです」と、朝日新聞が説明しているコラムです。
 この日のコラムの執筆はAS氏。「日本の場合、消費支出に占める食料品の割合を示すいわゆるエンゲル係数は、低所得層も高所得層もさほど変わらない。2014年の家計調査によれば、年収171万円以下の層のエンゲル係数は27・4%、年収601万円まで24%程度、941万円以上の層で20・8%になる。かりに全食料品への課税が8%に据え置かれたとしよう。年収171万円の世帯が軽減される分は年間8千7百円程度。941万円の世帯では3万6千円程度。軽減税率は富裕層に手厚い」と指摘しています。
 なぜ、軽減税率が富裕層に手厚いのでしょうか?年収171万円世帯では軽減される分は8700円程度で、その軽減率は年収の0.5%。年収941万円では36000円で0.38%。当然、エンゲル係数が高い低所得者の方が負担軽減の効果が高くなるのは当然です。金額で比べることに何の意味があるのでしょうか?
 さらに、AS氏は、エンゲル係数そのものの意味をご存じないようです。エンゲル係数とは食料品費を消費支出で割った割合です。その食料品費とは、家で食事を作る材料としての、米、パン、魚、肉、野菜、調味料等の他、“酒”や“外食費”も入ります。所得が高くなるにしたがって、食料の中でも“酒”や“外食費”が高額になる傾向があります。まして、現在、公明党が強く主張して導入が検討されている軽減税率の対象は、「酒と外食を除く食料品」です。単に、エンゲル係数の比率で、軽税率の効果を測ることはできません。明らかに、軽減税率は消費税の逆進性を是正する効果があります。
 結論として「富裕層が優遇される」とは、全くの暴論であり、ウソです。こうしたデマを、何の検証もなく掲載する朝日新聞。困ったものです。今後はぜひ署名記事にしてもらいたいものです。

(経済気象台)軽減税率には問題がある
朝日新聞(2015.10.27)
 軽減税率の導入論議が盛んである。しかし、軽減税率には問題が多い。
 軽減税率は低所得層対策とされているが、実際にはそうではない。例えば食料品だ。日本の場合、消費支出に占める食料品の割合を示すいわゆるエンゲル係数は、低所得層も高所得層もさほど変わらない。2014年の家計調査によれば、年収171万円以下の層のエンゲル係数は27・4%、年収601万円まで24%程度、941万円以上の層で20・8%になる。
 かりに全食料品への課税が8%に据え置かれたとしよう。年収171万円の世帯が軽減される分は年間8千7百円程度。941万円の世帯では3万6千円程度。軽減税率は富裕層に手厚い。以下略(AS)
◆この欄は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。