引きこもりになった年齢
 現役世代の引きこもり(不就労者)の増加は、地域の活性化を妨げるだけでなく、高齢家庭の負担となっており、深刻な問題となっています。地域で就労できずに引きこもっている実態を調査し、支援策の実施が求められています。
 厚労省では、引きこもりを「様々な要因の結果として、社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職員を含む就労、家庭外での交遊)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義し、それが、約26万世帯(平成27年8月:厚労省)に上ると推計しています。
 また、近年は引きこもりの高年齢化が進んでいます。「全国引きこもりKHJ親の会(家族会連合会)」の調べによると、引きこもり始める年齢が横ばい傾向にあるものの、平均年齢は上昇傾向にあります。最近では、いったん社会に出てから挫折したことで引きこもり状態になる人が増え、高年齢化に拍車を掛けています。また、年齢が高くなるほど、抱える家庭の負担は重くなり、支援が難しくなってしまいます。
 問題は、引きこもりを抱える親がすでに高齢化しており、本来親の世代が年金を受給するなど社会保障の恩恵を受けている世代のはずが、子どもが社会復帰できない状況、または不就労の状況が続き、その結果、生活困窮に至る世帯となることが予想されます。
 そこで、厚労省では各県の都市部に「ひきこもり地域支援センター」を設置しています。ここでは、主にひきこもりに特化した第一次相談窓口を設け、支援コーディネーター(社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士等)が、ひきこもりの状態にある本人、家族からの電話、来所等による相談や家庭訪問を中心とした訪問支援を行うことにより、早期に適切な機関につなぐ(自立への支援)ことを事業内容としています。
秋田県藤里町の取り組み事例
 また、今年4月に施行した生活困窮者自立支援法では、その目的について「生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対し、自立相談支援事業の実施、住居確保給付金の支給その他の支援を行うための所要の措置を講ずる」としています。
 この生活困窮者自立支援法を活用して、秋田県藤里町では、様々な引きこもり支援策が展開されています。
 藤里町では、平成17年度「地域福祉トータルケア推進事業」を「福祉でまちづくり」として地域福祉の推進に取り組んできました。
 平成22年度には、在宅の引きこもり者・不就労者等を対象に、支援する人もされる人も共に集える場所として、福祉の拠点「こみっと」をオープン。毎年「こみっと感謝祭」を開催しており、障害や年齢に関係なく地域交流の場として200人以上が参加しています。
 引きこもり者・不就労者・障害者等が提供する、手打ちそばが自慢のお食事処「こみっと」では、平成25年から香川県で讃岐うどんの技術研修をうけて開発した、「こみっとうどん」を提供しています。
 また、社会福祉協議会が事務を務める「シルバーバンク事業」は、既存の福祉制度では応えられない地域住民のニーズに対応しています。そこに、在宅の引きこもり者や精神障害者等が登録する「こみっとバンク事業」が誕生。課題を抱えた若者が「シルバーバンク」に登録する高齢者と共同作業を行うことで、世代を越えて支えあう地域づくりに繋がることを目指しており、高齢化の進む地元地域において「こみっとバンク」の必要性は着実に増加していると評価されています。地域の作業依頼に応えることで引きこもり者・不就労者・障害者等の社会参加の機会として、地域住民と共に支えあう地域づくりへ貢献することができるよう取り組んでいます。
 藤里町では、平成23年に引きこもりの実態調査を独自で行ないました。15〜55歳の町民(1293人)のうち、113人が長期不就労状態で引きこもっていることが判明。その割合は8.74%に上り、半数以上は40歳以上であることも分かり、引きこもりの高齢化が明らかになりました。
 このような取り組みは、引きこもり・不就労者が社会復帰する前段階で地域住民とともに地元に貢献できるような仕組みや施設をつくり、就労応援に繋がっているといえます。
社会福祉法人藤里町社会福祉協議会
http://fujisato-shakyo.jp/activity-introduce