ブルーライトの影響
 最近「ブルーライト」という言葉をよく耳にします。
 「ブルーライト」とは、波長が380〜500nmの領域にある青色の可視光線のことです。太陽光や蛍光灯、白熱灯などにもブルーライトは含まれまますが、要注意なのは近年普及している白色LEDです。白色LEDの白い光は青色の光源と黄色の蛍光体を組み合わせることで実現しています。そのため、同じ強さの光でもブルーライトが含まれる量がどうしても多くなってしまいます。
 では、具体的にブルーライトは人体にどんな影響をもたらすのでしょうか?
 ブルーライト研究会(http://blue-light.biz/)の報告によると、ブルーライトへの長時間の浴びることによって、メラトニンというホルモンの生成が抑制されます。メラトニンとは脳内で分泌されるホルモンの一種で、人間の眠気を誘う物質です。メラトニンが抑制されるということは、つまり体内時計(サーカディアンリズム)が狂ってしまうことにつながります。
 夜中にベッドで、「眠くなるまで」のつもりでスマホやタブレットを使っていたらかえって目が覚めてしまった、という経験があります。これはまさに、メラトニンの分泌が抑制されたことによる症状といます。
●ブルーライトが人体に与える影響
 体内時計が狂うと、睡眠障害、鬱病、肥満、ガン(男性は前立腺ガン、女性は乳ガン)になりやすいことがわかっています。ただし現段階では、ブルーライトの浴びすぎが直接それらの疾患に結びつく断言できるだけの医学的根拠(エビデンス)が十分に蓄積されているわけではありません。
 また、ブルーライトは紫外線の次にエネルギーが強いため、目の疲れや痛みといった、眼球に対する直接的なダメージも与えることがわかっています。パソコンやスマホを長時間使う人にとっては、要注意です。
 2013年3月、ドイツはブルーライトとの適切な向き合い方(照明機器の使い方のガイドライン)を、世界に先駆けて示しました。この中では、ブルーライトは体を活性化させる作用があるため、午前中は適量を十分に浴び、夜間は減らすことが望ましいと指摘。その上で、自宅や学校、介護施設などでどんなタイプの照明を使うべきか、細かく示しています。
 このガイドラインに準じて、ドイツではブルーライトに配慮した照明が広がり始めています。ミュンヘン市内にある専門学校では、一部の教室に、最新の照明システムを導入しました。一見すると普通の照明ですが、色が自動的に変わります。午後から夕方の変化を早送りしてみると、ブルーライトが徐々に弱まり、夜にはほとんど出さないようにしています。体内時計を狂わさないようにするためです。

●現代人がブルーライトを浴びずに生活するのは不可能
 現代人の生活にはLEDの光が欠かせません。パソコンやスマホ、タブレット、液晶テレビといった電子機器はもちろん、通常の照明器具もLEDを採用したものが普及しています。ブルーライトが体に悪いとわかっていても、これらを抜きの生活はできません。
 では、私たちはどうしたらいいのでしょうか?少なくとも、ブルーライトを浴びる時間帯はある程度コントロールできます。次のような自衛手段は比較的容易に実践できるはずです。
  • 夜眠る前の2〜3時間は、パソコンやスマホ、テレビなどの画面を見ない
  • 深夜の照明として白熱灯や蛍光灯を利用する、あるいはブルーライトを抑える機能付きのLED照明を使う
  • パソコンやスマホを使わざるを得ない場合は、ブルーライト対策用メガネを利用する