明日(11月16日)県議会の臨時会が開かれ、9月10日に発生した関東・東北豪雨被害に関連する補正予算が提案されます。会派代表質疑に、井手よしひろ県議が公明党を代表して登壇する予定です。
 公明党の持ち時間は、質問と答弁合わせて15分しかありませんので、被災者への財政的支援との充実と被災者を支援するシステムの導入を訴えることにしました。以下、その原稿を掲載します。このまま読むと10分以上の原稿ですので、本番の原稿はさらにブラッシュアップする必要があります。

1.被災者支援の充実について

 公明党の井手よしひろです。会派を代表して、橋本知事に「平成27年台風18号関東・東北豪雨」被害に関する被災者支援の充実、被災者支援システムの導入について質問をいたします。
床上浸水による住宅被害 今回の豪雨では鬼怒川などの洪水により、3人の方がなくなり、床上・床下浸水の被害が7154件(全壊51件、大規模半壊1112件、半壊2963件、床上浸水76件、床下浸水2952件)と、大変大きな被害を受けました。今なお、260人の方が避難所で不自由な生活を余儀なくされています。
 亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に、被災者の皆さまの一日も早い生活再建をご祈念いたします。

 始めに、被災者支援の充実について伺います。
 私ども県議会公明党は、9月10日の災害発生から1ヶ月間で延べ40回以上の現地調査を行い、9月11日と10月27日の2度にわたって橋本知事に具体的な要望書を提出いたしました。また、山口那津男代表、太田昭宏前国交大臣、石井啓一国交大臣などが被災地を視察するなど、党のネットワークの総力を上げて被災地の支援に当たってきました。

 こうした被災者の声を活かした提言・要望に対しまして、今回の補正予算には、国の支援が不十分な「半壊」世帯や中小企業の再建支援への独自策などが盛り込まれました。知事の積極的な決断に敬意を表したいと思います。
 被災世帯の財政的支援では、私どもは、京都府の手厚い支援策を例示しながら、知事に独自支援策の創設を求めてまいりました。京都府では、国の「被災者生活再建支援法」の支援金に、全壊150万円、大規模半壊に100万円を上乗せしています。更に、半壊家屋へ独自に150万円、床上浸水等に50万円を助成しています。
 洪水被害の場合、半壊も大規模半壊も住宅再建に掛かる費用に大差はありません。洪水被害の場合、半壊も大規模半壊も住宅再建に掛かる費用に大差はありません。床上数十センチの半壊被害でも、フローリングの床の張り替え、グラスウールの断熱材の入った壁の貼り替えなど、大規模な補修が必要であり、1000万円以上の修理費が必要である物件も珍しくありません。
 洪水被害においては床上以上の浸水被害があった場合には、大規模半壊と同程度の支援を行う必要があります。その意味では、半壊世帯に25万円との支援額は、少なすぎるという声もあります。
しかし、今回の洪水被害の規模が余りに大規模であることも事実です。
 昨年の京都府の住宅再建支援の予算総額は6億1800万円でしたが、今回の災害は被災件数が多く、生活再建関連予算総額は同程度の約6億円となっています。
 一方、今回の補正予算には、国の災害救助法の「住宅の応急修理」についても、所得制限のある“半壊世帯”について、特例措置として、この所得制限を撤廃する予算が盛り込まれました。
そもそも、この災害救助法は「現物支給」の原則があり、法律自体が時代に合わなくなっていると言わざるを得ません。
 住宅の応急修理にあっても自治体が指定した業者に、市町村が工事代金を支払う仕組みです。被災後の混乱時にはその事務量が市町村の大きな負担となっています。現に、東日本大震災では、茨城県内の災害救助法が適用となった37市町村中、応急修理制度を実際に発動したのは、わずか5自治体に止まりました。
 今回の補正予算で半壊家屋の所得制限が撤廃されますが、国の制度で対象にならないものとして、自費で修理を完了してしまった被災世帯も多くあると伺っています。
 私ども県議会公明党は、応急修理制度は「直接払い」制度を見直して、工事明細や領収証による「被災者への現金払い」制度に変更すべきだと提案します。

 さらに、被災した中小企業への支援に関しては、これまでほかの業種と比べて余りにも薄い実態がありました。今回、被災中小企業の事業再開を支援するための独自の補助金50万円が認められました。
 私どもは、こうした制度を今回限りの特例とするのではなく、恒常化することを強く求めるものです。

 そこで、知事には、「被災者生活再建支援法」ならびに「災害救助法」の見直しを、強く国に求めていただきたいと思います。特に、「被災者生活再建支援制度」は議員提案として成立した経緯がありますので、知事にあっては各政党への働きかけも行っていただきたいと思います。国の被災者支援策の充実に対しどのような姿勢で臨むのかお伺いいたします。
 また、半壊世帯の支援や中小企業者への支援を、できれば条例化することによって恒常化させるべきだと考えますが、知事のお考えをお聞かせ下さい。

2.被災者支援システムの導入について

 続いて「被災者支援システムの導入」について、提案・質問します。
 今回の豪雨被害の市町村の対応については、様々な課題が明確になっています。
 例えば、被災者支援の入り口ともいえる「り災証明書の発行業務」です。常総市では、その発行手続きに大きな遅れが発生しました。り災家屋の一次調査は、9月28日までに終わっていたにもかかわらず、り災証明書が被災した方の手元に行き渡ったのは10月下旬となっていました。一次調査の結果と申請書のデータとの突合作業に1カ月近くも掛かったことになります。申請の窓口で、最低限 氏名のふりがなや住基台帳のデータとの照合を行う必要がありました。
避難所に避難した方のデータベースも稼動できませんでした。当然、医療的、福祉的に支援が必要な要支援者のデータもまとめられませんでした。
被災者支援システムの説明を受ける公明党山口代表 全国から集まって下さった支援ボランティアと被災した方とのニーズをマッチングさせるシステムも、事前には準備されていませんでした。
 こうした現状の中で、被災者支援のために情報システムを構築したのは、国の研究所や民間の情報ボランティアでした。つくばの防災科学技術研究所を中心として、り災証明書のシステム、要支援者の支援システム、ボランティアのニーズマッチングシステム、避難所の必要物資のデータベースなどが稼働しました。必要なソフトウェア、パソコンなどのハードウェア、地図情報などの著作権問題など、ほぼ全てを防災科研などの支援を受けて、この危機的な状況を乗り越えることができたと言っても過言ではありません。
 こうした現状を受けて、市町村の被災者支援システムを平時から準備する必要を痛感します。また、この10月からはマイナンバー制度がスタートしました。このマイナンバーを活用すれば、被災者支援するシステムの精度が格段に向上します。

 私ども公明党が提案する被災者支援システムは、
・り災証明の発行
・災害救助法の避難所の管理(応急修理の申請、仮設住宅の入居管理、みなし仮設住宅の提供)
・被災者生活支援制度の申請
・災害義援金業務
・災害弔慰金業務
・応急仮設住宅管理業務
・災害廃棄物処理業務
・災害見舞金業務
・災害遺族管理業務
・高齢者支援業務
・障害者支援業務
 などを包括的に支援するシステムです。誰でも簡単にパソコンやタブレット、スマホなどからアクセスでき、地図情報とも連携できます。基本ソフトやデータはクラウド上に保管し、個人情報の保護に努めます。

 常総市の事例でも明らかなように被災者支援システムの構築のノウハウは、すでに防災科研などで実用化されています。あとは、運用にあたって県ならびに市町村とどのような連携に当たるか、その体制を整備する必要があります。

 そこで、今回の豪雨被害を受けて、市町村の被災者支援システムを平時から充実させ、発災時には速やかに的確な支援体制を構築する必要があると考えますが、知事のご所見を伺いたいと存じます。と同時に、マイナンバー制度を災害被災者支援に活用すべきと考えますが、知事のお考えをお示し下さい。
 以上で、会派を代表としての質疑を終わります。知事の明確な答弁を期待いたします。