横浜市の介護ポイント制度の概要
 世界でも稀有な日本の超高齢化社会への移行に伴い、2000年に導入された介護保健は、導入後わずか15年余りで日本社会を支える重要な仕組みとなりました。世界的に見ても、介護保険制度を導入している国は、ドイツ・日本・韓国、オランダ、ルクセンブルグときわめて少数派です。その中でもわが国の介護保険制度は、突出して、受給者範囲が広く、反面、国の財源負担も大きくなっています。
 さらに、保険制度をとっている以上国の負担だけではなく、被保険者の介護保険料も上昇を続けています。
 こうした状況下、高齢者の生きがいづくりや介護予防にも役立ち、介護保険制度の支えにもなる介護支援ボランティア制度を導入する自治体が増え、注目を集めています。
 介護施設などでのボランティア活動に対し、商品との交換や換金ができるポイントを付与するボランティアポイント制度は、全国に先駆けて東京都稲城市が2007年に導入しました。
 稲城市の場合、ボランティア活動は、レクリエーションの指導、食堂の配膳・下膳、散歩の補助、話し相手などの8区分で成り、自由に選択できます。1時間の活動を1回とカウントし、10回を超えるとポイントが蓄積されはじめ、年間50回の活動で5000ポイントになる。1000ポイントから交付金(1ポイント1円)を受給できるが、上限は5000円となっています。また、評価ポイント活用申し出を前提とした給付の佇まいを残しており、ボランティア活動としての意味合いは維持されています。平成26年度で120万円ほどの交付金が予算化されています。
 こうした介護ポイント制度は、実施予定を含めると268自治体で導入されています。
 介護ポイント制度は、高齢者の社会参加につながるため、高齢者の孤立感を防ぎ、住民同士の交流の多い地域づくりが進むことが期待できます。制度の利用者には、長年の会社勤めで地域と疎遠だった人もいるが、「地域活動に参加するきっかけができた」と評価されています。
 近年は、高齢になっても心身ともに健康な人は多く、介護サービスを必要としない人の中には、保険料負担の軽減を求める声は少なくない。こうした高齢者のニーズ(需要)を満たすためにも、ポイント制度の効果は大きくなっています。
 制度の普及につれて、特色ある取り組みを行う地域も増えつつあります。
 ポイント付与の対象を65歳以上などとする自治体が多い中、神奈川県山北町は今年10月から小学生以上を対象とする制度をスタートさせました。想定される活動は通学時の要介護者宅のごみ出しや、休日の買い物の手伝いなどです。子どもたちの情操教育に役立つとみられるほか、介護への関心を高め、将来的な介護の担い手育成につながるものとして多くの自治体が関心を寄せています。
 また、介護サービスを使う高齢者が少なくなれば、自治体の介護保険財政の健全化につながります。そこで岡山県総社市は、高齢者の健康増進のため、国保加入世帯を対象に保険が適用される診療を1年間受けなかったことなどを要件に、国保財政から年1万円を対象世帯に支給しています。
 ポイントで現金を還元する方式だけではなく、地域で流通する商品券などを発行するのも一つの考え方です。地域の商店街の活性化などの派生効果も生むことができます。
 高齢化の進展に伴う介護需要の増大は、わが国が直面する重要課題の一つです。高齢者の健康づくりを促す取り組みを国や自治体は積極的に検討していくべきです。