農業のイメージ 11月20日、公明党TPP総合対策本部は、環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けた国内対策として、農林水産業の振興や国内企業の海外展開支援などを求める提言を政府に提出しました。
 提言は、政府が近く策定する「総合的なTPP関連政策大綱」に対する公明党の考えを取りまとめたものです。
 TPP参加国のGDPは世界全体の約4割、貿易額は世界全体の約3分の1を占め、TTP協定が発効すれば巨大な自由貿易圏が誕生します。TPPのメリットを最大限に活かし、中小企業や地場産業も含めてアジア・太平洋地域への輸出・海外展開を促進し、日本経済全体の活性化、地域の活性化へつなげるべきです。また、TPPを契機として、IoT、人工知能、ロボットなど先進的な分野のイノベーションを促進し、日本経済全体の生産性の向上につなげることが必要です。
 TPP大筋合意を受け、日本の農林水産業は新たなステージへの大きな転換点を迎えています。将来にわたり、国民に安全で高品質な食料を供給するとともに、中山間地域・離島等を含む豊かな農山漁村を維持・発展させていくためには、農林水産業の振興が必要です。そのためには、以下の基本的な考え方に基づく対策を進めていくべきです。
(1)生産者の不安を解消する経営安定化対策を実施する。
(2)生産性向上、高付加価値化による競争力・体質強化対策を実行する。
(3)消費者の視点も重視し、国民の理解と支持が得られる対策とする。
 今後、生産者・消費者はじめ幅広い国民の声を聞きながら、さらに検討を深め、来年度前半を目途に対策を進化させていくべきである。
また、対策に必要な費用については、将来、麦のマークアップや牛肉等の関税が減少することも考慮し、現行の農林水産施策の実施に支障が生じることがないように、十分な財源を確保することが必要です。弾力的な執行により生産者が安心できる基金等の仕組みを構築していかねばなりません。
再生産を確実にする「安心」の農林水産政策
 TPPによる農林水産業への影響について、生産者からは不安の声が根強くあります。食料自給率の向上や農業の多面的機能の重要性を重視し、TPP協定発効後の経営安定に万全を期し、農林水産業の再生産を確実なものとするために、経営安定対策を抜本的に見直すなど、安心できる農林水産政策を講じるべきです。
【米】
・主食用米の総量が増加しないよう、TPPによる輸入量相当の国産米を備蓄米として買い入れる
・毎年の政府備蓄米の運用を見直す(原則5年の保管期間を3年程度に短縮)
【麦】
・マークアップの引下げやそれに伴う国産麦価格が下落するおそれがある中で、国産麦の安定供給を図るため、引き続き、経営所得安定対策を着実に実施する
【牛肉・豚肉、乳製品】
・牛・豚マルキンを法制化し9割補填に、豚マルキンも3/4国庫負担に引き上げる
・肉用子牛保証基準価格を現状に即して見直す
・将来的な牛肉関税の税収減に鑑み肉用子牛対策などに必要な財源を確保する
・加工原料乳生産者補給金に生クリーム等を追加し単価を見直する
【甘味資源作物】
・糖価調整制度に加糖調製品を追加する

所得を増大させる「希望」の農林水産政策
 日本の農林水産業は、TPPの影響のみならず、農業者の高齢化や後継者不足など、多くの課題を克服する必要があります。
 若者が希望をもって農林水産業に挑戦できるよう、新規就農・就業や優れた経営知識・技術の習得など、支援を充実するとともに、意欲ある生産者が所得を増大できるよう、農林水産物・食品の輸出や高付加価値化、生産コストの引き下げなど、希望のもてる農林水産政策を講じる必要があります。
(1)新規就農支援・経営力強化
・新規就農支援の安定的な実施、優れた経営知識・技術の習得支援
・経営発展に必要な機械・施設の導入、無利子化など金融支援
・中山間地域等の担い手の収益力向上のほか日本型直接支払の着実な実施
(2)消費拡大・輸出促進
・消費者が国産物・食品を選択できる環境整備(販促活動、商品開発等)
・地理的表示保護の諸外国との相互認証
・訪日外国人への農林水産物の販売促進(直売や施設整備への支援等)
・動植物検疫体制の強化
・戦略的な輸出体制の強化(JETRO、在外公館と連携)
・チェックオフ制度の創設
・原料原産地表示について実行可能性を確保しつつ拡大を検討
(3)産地におけるイノベーション
・水田、畑作、野菜、果樹、花き等の収益力向上に取り組む産地への支援(機械・施設導入や改植等)
・水田の畑地化・汎用化や畑地等の高機能化を含め農業農村整備事業の推進
・新品種の開発やICTの活用など革新的技術の開発
(4)畜産・酪農の収益力強化
・畜産クラスター事業の拡充・要件見直し(家族経営等も利用し易く)
・草地の整備、繁殖農家への支援強化を含む和牛の生産拡大
・都府県を含む生乳供給力の向上、豚の生産能力の向上、自給飼料の生産拡大
・食肉処理施設の整備、畜産農家の既往債務の軽減
(5)国際競争力の高い林業へ
・大規模・高効率の加工施設の整備、間伐・路網整備による生産性向上
・合法木材の利用促進
(6)持続可能で収益性の高い漁業へ
・担い手へのリース方式での漁船導入、漁船漁業の構造改革
・漁業経営セーフティーネット構築事業の運用改善
(7)その他
・農家が希望をもって飼料用米に取り組めるよう推進
・収入保険制度の導入に向けた制度設計の検討
・農村地域における農業者の就業構造改善の仕組み

食の安全の確保
・輸入食品の適切な監視指導の徹底に必要な体制の整備
・残留農薬・食品添加物等について国際基準や科学的根拠に基づく規格基準の策定の推進
・協定締結後の技術的協議への対応