太陽光発電の買取価格と賦課金 茨城県では、東日本大震災以降、再生可能エネルギーに対する関心が高まり、その開発規模は全国第2位となっています。特に太陽光発電は平坦な未利用地が多く、日照時間も長いという県土の特長も、ありこの3年間で10倍、100万キロワットを超え、東海第2原発の発電量以上の電力をまかなうまでに成長しています。しかし、ここにきて再生可能エネルギーの開発は曲がり角にさしかかったといわざるを得ない状況に至ってきました。
 その理由は2つ。一つ目は再生可能エネルギーの負担が大きくなり、一般の需要者の重荷となってきたことです。再生可能エネルギーは発電(売電)事業者から電力事業者が、一般の火力発電や水力、原子力発電の買取り単価よりも高額な単価で売買されています。 その差額は、一般需要者の負担となっています。制度が始まった平成24年の負担金(賦課金)は0.28円(kW/h当たり)であったのに対して、今年度は1.58円と5.6倍を超えました。政府はこの再生エネルギー固定買取制度を見直すことになっています。しかし、この制度の買取価格は20年続くことになっており、今後も問題として続くことになっています。
再生可能エネルギーの推移
国定公園内での無届け樹木伐採、防災上も重大な懸念
 更に深刻なのは自然破壊、景観破壊の問題です。防災上の危険性も指摘されています。井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は、去る10月28日、つくば市内と茨城町内で開発中のメガソーラ施設を現地調査しました。
 国定公園に指定されいる筑波山の景観保護地域で、メガソーラーのパネルを設置するために、樹木が伐採されている場所がありました。この地域は県の許可なく木を伐採することは認められておらず、県は自然公園法違反にあたるとして業者に注意喚起を行いました。現場はつくば市沼田地区、つくば市街地から筑波山頂をめざす、ケーブルカーやロープウェイ、筑波温泉郷に向かういわば筑波登山、観光の目抜き通りです。すでに、山林は無残に続探され色の山肌がむき出しになっていました。雑木林約1000平方ートルが伐採されています。
 さらに、県道から少し東側に移動した場所(約9800平方メートル)では、7月に森林法に基づく民有材伐採届けがつくば市に提出されました。隣地には30年ほど前にリゾート開発が頓挫した宅地があり、合わせて1万4400平方メートルの太陽光発電設施の造成がはじまっています。重機が入り、樹木は撤去され、地肌が露出しています。開発地の真ん中には、沢の水が流れた深い溝が走っています。ここは、国定公園の特別地域外のために樹木を伐採する許可はいりません。1ヘクタール未満のために、県の林地開発許可もいりません。
 周辺住民からは「この辺りは昔から土砂崩れや水害の恐れがあった土地です。台風のたびに避難する家もあるほどで、防災上の配慮がない開発に不安が募ります」との心配の声が上がっています。
 現在、地域住民からの聴取りによると国定公園内の特別地域には3か所、地域外には1ケ所で、すでに太陽光発電働設の造成工事が行われています。
 太陽光発電施設は、民主党政権下で1万平方メートル以下の開発の場合、経済産業省への届け出のみで工事を行うことができます。この施設の設置それ自体を、地元自治体や県が規制することは出来ません。どこに施設が計画されているのかという情報さえ、自治体にも知らされていません。

大規模太陽光発電にガイドライン導入を
 無秩序な太陽光発電施設建設に、歯止めをかけようという地方自治体の動きもみられます。
山梨県は今年11月4日、「太陽光発電施設の適正導入がイドライン」を公表しまして。それによると、10キロワット以上の業用太陽光発電設施を対象とし、立地の検討や設置時の無防災・景観・環境などへの配慮、住民との合意形成などに関して、市町村への説明を求めています。なお、屋根(屋上)設置型の施設は対象外となっています。この市町村への事前相談などは、「県独自のフロー」として位置づけられ、すでに経産省から設備認定を受けた案件にも適用されます。
 設置時の防災・景観・環境面などの検討のほか、場合によっては「立地の再検討」もできるとされています。
 また、立地についても、「立地を避けるべきエリア」と「立地に慎重な検討が必要なエリア」を設定しているところに特徴があります。
 太陽光発電施設の立地を避けるべきエリアには、国立国定公園、県立自然公園の特別地域と普通地域、条例に基づく32か所の保全地区富士山北麗世界景観保全地区のほか、保安林、農業振興地域などを広範に指定しています。
 「立地に慎重な検討が必要なエリアには、傾斜度が30度以上ある土地」「地域森林計画対象民有林」「市町村により景観形成拠点として位置づけられた場所」などを挙げています。これらの場所については必ずしも法令上の手続きは求めませんが、「慎重な検討」を求めています。
 また、設置時に順守すべき事項として、景観面では太陽光パネルの色彩、植栽やフェンスなどによる目隠しの手法を示しました。環境保全上に必要がある時は、「造成工事を数ブロックに分けて、緩衝エリアの緑地を設けること」「希少野生種が生息する土地がある場合には保全策を講ずること」などを求めています。
 緑地の形成にもガイドラインを定め、「敷地面積2000平方メートル以上の場合、敷地の20%以上」「パネルの水平投影面積3000平方メートル以上の場合が、周辺部に15%」と、具体的な基準も定めました。
 山梨県のガイドラインは法的な罰則などはありませんが、無秩序な太陽光施設の建設に一定の歯止めとなることが期待されます。

 今回問題となっている筑波山周辺の開発では、開発を行っている事業者は、他の企業から出資をつのったり、完成後は施設を売却するなど、長期的、安定的に発電施設を運営することを想定していないと思われます。こうした開発業者への資金の流れに歯止めをかけることが出来れば、乱開発に一定の抑止力となります。
 茨城県でも、ガイドラインの策定を検討すべきです。