公明党が一貫して実現に取り組んできた消費税の軽減税率制度が、2017年4月からスタートします。制度の仕組みをQ&A形式で紹介します。(このブログは、2015年12月20日付けの公明新聞の記事をもとに編集しました)

Q:なぜ軽減税率を導入するのか?
A:消費税の逆進性を和らげ、国民の痛税感を軽くします
 消費税は、商品やサービスを購入する際、所得に関係なく、すべて同じ税率がかかります。その結果、所得が低い人ほど、税負担が重くなる「逆進性」の問題が生じ、買い物のたびに税の負担を感じる「痛税感」を伴います。
各国の消費税率 これらを緩和する対策として、軽減税率が最も優れています。特に食料品は、日々の生活で人間が生きていくために必要不可欠です。諸外国でも消費税(付加価値税)を導入している国の多くで軽減税率が採用されており、食料品への適用は、「世界の常識」です【表参照】。
 低所得者に直接給付する制度が望ましいとする意見もあります。しかし、そうした制度を実施するには、個人の所得だけでなく資産も正確に把握できなければ不公平ですが、それは困難です。
 さらに、実際の消費支出とは関係なく給付が行われるため、消費税の痛税感の緩和には全くつながりません。

Q:なぜ消費税率を引き上げるのか?
A:暮らしを守る社会保障制度を維持し充実させるために必要です
 公明党は民主党政権下の2012年、民主党、自民党とともに「社会保障と税の一体改革」の協議を行い、消費税率を引き上げた分の税収すべてを年金、医療、介護、子育て支援のみに使うことで合意。将来にわたって持続可能な社会保障の制度づくりに全力を挙げてきました。
 急速に進む高齢化で、毎年約1兆円ずつ社会保障給付費の国の負担分が増える中、国民の命と暮らしを守るため、社会保障と税の一体改革を着実に推進しなければなりません。その一環として消費税率10%への引き上げは避けて通れません。「軽減税率を導入するくらいなら、消費税率の引き上げをやめればいい」などという意見は、あまりにも無責任です。
 とはいえ、「生活に必要な食料品だけでも税率を軽くしてほしい」というのが庶民の切実な意見です。この思いに応えたのが軽減税率の導入です。
Q:加工食品まで対象にしたのはなぜ ?
A:国民の食生活に即して負担軽減の実感を広げるためです
 当初、与党内の議論では、軽減税率の対象を野菜や肉、魚など生鮮食品に限定する案もありました。しかし、私たちの食生活は、納豆やのり、パン、総菜など加工食品に大きく依存しています。
 また、低所得者ほど加工食品を購入する割合が大きく、生鮮食品以上に逆進性は高いと指摘されています。単身世帯を含む全世帯の食料支出の内訳に関して、生鮮食品の割合は約3割にとどまる一方、加工食品は約5割、外食は約2割というデータもあります。実際、スーパーやコンビニの売り場では、加工食品の方が圧倒的に多いことでも分かります。
 消費税のもつ「逆進性」や「痛税感」を緩和するという軽減税率の目的にかなうようにするには、食生活の実態に即して加工食品も含む食品全般(酒類・外食を除く)にまで対象を広げる必要があったのです。

Q:社会保障が削られるのでは ?
A:医療、介護、年金、子育て分野の充実に必要な財源は確保します
 「社会保障と税の一体改革」の中で、消費税率引き上げ分のおおむね1%相当額は医療、介護、年金、子育ての各分野の新たな充実に充てることが決まっていますので、きちんと推進していきます。
 軽減税率の導入によって、想定されている消費税の税収が約1兆円減ると見込まれていますが、そもそも、社会保障の財源は消費税に加え所得税や法人税など財政全体の中で支えてきました。軽減税率の導入に当たっては、2016年度末までに税制・財政全体の観点から与党として責任を持って、安定的な恒久財源を確保します。
 一方、政府・与党として20年度までに、借金に頼らずに政策経費を賄えるようにする財政健全化が重要課題の一つになっています。こうした観点から社会保障を含め行政全体の見直しの中で安定財源を確保します。

Q:低所得者対策にならないのでは?
A:家計に占める食費の割合が大きい低所得世帯ほど恩恵を受けます
 「軽減税率は低所得者対策にならない」という論調は、非常にかたよった見方です。
所得と消費税 確かに軽減税率は高所得者にも恩恵をもたらしますが、それ以上に所得の低い高齢者世帯や、食費がかさむ子育て世帯の生活を支える役割を果たします。
 低所得者の負担感をいかに和らげるかという点で、注目すべきは、実際に払われた食料品の金額よりも、家計の消費支出に占める食料品(酒類・外食を除く)の割合です。
 これは低所得者ほど大きくなっているのが特徴です。年収1500万円以上の世帯が15.1%であるのに対し、200万円未満の世帯は30.7%と、実に2倍以上です【グラフ参照】。
 食料品に軽減税率を適用すれば、低所得者ほど負担が軽減され、恩恵を受けるのは一目瞭然です。

Q:中小企業の事務負担が増えるのでは?
A:売上高に応じて免税や簡単な納税計算を認め、負担を軽減します
 事業者の皆さまには、消費税を標準税率と軽減税率に立て分けた納税事務をお願いすることになりますが、できる限り負担を軽くするため、当面は「簡素な経理方式」を採用した上で、中小事業者には特例を認めることにしました。
 売上高5000万円以下の事業者には、簡易課税制度(みなし仕入率)を維持し、2021年3月までは二つの税率に対応して税額を簡単に計算できる「みなし課税方式」を新たに導入します。
 また、混乱を避けるため、売上高5000万円超の事業者に関しても、最初の1年間に限って「みなし課税方式」を認めることにしました。なお、17年4月の軽減税率導入後も、原則として消費税の納税を免除する免税点制度が継続されます。
 軽減税率の導入に向けた準備もしっかり支援します。相談窓口を設置してアドバイスする体制整備や、レジの改修・新規導入支援など事業者の準備が円滑に進むよう、政府・与党一体となって万全の準備を整えます。