日韓外相会談 12月28日、日本と韓国の外相会談がソウルで行われ、慰安婦問題を巡って、日本政府は責任を痛感し、安倍総理大臣が、心からおわびと反省の気持ちを表明しました。その上で、日韓両政府は韓国政府が設置する財団に日本政府の予算からおよそ10億円の資金を拠出し、元慰安婦への支援事業を行うことで合意しました。また、両政府は、この問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたことを確認しました。
 この従軍慰安婦をめぐる日本と韓国との合意は、歴史的とも言える合意です。
 日韓国交正常化50年と言う節目の年の締めくくりに、慰安婦問題が「最終的に、不可逆的に解決される」ことを両国政府が確認できた事は、安倍政権の外交にとって大きな成果と言えます。人道的、道義的な見地から見れば、そこに現に苦しんでいる人がいれば、政治的に解決を図っていく両国政府の姿勢は当然のことです。

 今回の合意で評価できる点は次の4点です。
 その第一は、「軍の関与」と「日本政府の責任」を明確にしたことです。
 岸田文雄外務大臣は「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べました。
今までの日本の立場は慰安婦問題は軍人への民間の売買春で、あくまで「民間」の問題であるとして、政府に責任はないというものでした。軍の関与を認めたこと、政府の責任を認めたことは、人道上を高く評価できます。
 第2点目に、その上で内閣総理大臣として元慰安婦にお詫びの言葉を表したことです。
 岸田外相は「安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちと表明する」と述べています。内閣総理は明確に「日本国の内閣総理大臣として」とありますから、日本国の代表者、政府の責任者として謝罪したということです。

朴槿恵大統領と山口那津男代表の会談 第3点が、最終的かつ不可逆的解決を確認したということです。
 日本側が望んでいたのは、この問題がまたぶり返さないことです。日本にとっては、1965年の日韓基本条約で問題は既に解決しているという立場です。これをもとに1993年の河野談話があり、1995年の戦後50周年に際しての村山談話がありまが、韓国側の様々な事情で、その都度問題が振り回され、日本と韓国との間に隙間風が吹いています。こうした負の連鎖を断ち切る、今一度未来志向の日韓関係を築くあげる土台になると思います。
 今回合意してもまた問題がぶりかえされるのではないか、という不安があります。その歯止めとして「最終的不可逆的解決」との言葉が明文化されました。

 第4点目は、「韓国政府が設置する財団」に「日本政府からの予算から10億円」を拠出するということです。
 これはアジア女性基金での失敗の反省の上にたった結論です。今回は「日韓両政府は韓国政府が設置する財団に日本政府の予算からおよそ10億円の資金を拠出し、元慰安婦の心の傷を癒すための事業を行うこと」としています。財団を韓国政府が作ると言うところがポイントです。韓国政府の責任も生じます。そして拠出する10億円も、明確に日本政府がと表明した事は良いことだと思います。責任を日本と韓国の両政府が明確にしたののは賢明な決断です。これはよく考えられた方法です。

 こうした画期的な結論が出た背景には、今年9月の山口那津男公明党代表の訪韓があったと思います。山口代表と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領との会談は、終始なごやかなものでした。
 民主党政権下で、そして安倍首相の憲法改正を積極的に進めるかのような言動の中で、日韓の関係は冬の時期を迎えていました。このような中、両者の関係に暖かい風を吹き込んだのは公明党に他なりません。
 山口代表は28日夕方、「両国が協力して、合意を着実に実行すると言う強い意志が本当の解決に結びつく。前向きな日韓関係を作るために、青少年、文化、経済の交流など広範な分野で日韓の協力と交流が進むよ政治としても支援していくことが重要だ」との見解を明らかにしました。

参考:日韓両外相共同記者会見(2015/12/28)http://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page4_001664.html