東海第2原発 1月19日、東海村議選が告示されました。公明党から、岡さとる候補、植木しんじ候補の2人が必勝を期して立候補しました。
 この村議選の最大の争点は、東海第2原発の再稼働の是非に尽きると言っても良いと思います。しかし、実際の選挙戦では多くの候補者が、再稼働問題に積極的に発言しようとはしていません。
 このブログでは、茨城県議会公明党の東海第2発電所に関わる基本的な考え方をもう一度整理してみたいと思います。
(写真は、日立市久慈町の住宅地から東海第2原発を撮影したものです。市街地のすぐ向こうに原発が立地しています。2016/1/19撮影)

東海第2原発は再稼働させず廃炉に
 東日本大震災が発生し、福島原発の重大事故が起きて、今年の3月で丸5年が経過しようとしています。
 東海第2原発は日本原子力発電が運営する110万キロワット級の沸騰水型原子炉です。1978年11月に運転を始めました。2011年3月11日、この東海第2原発の取水口付近にある高さ6.1メートルの防護壁に、最大5.4メートルの津波が襲いかかりました。単純計算だとあと70センチ、津波が高ければ防護壁に守られた冷却用ポンプ3台が水没し、非常用発電機が使用できなくなりました。全電源喪失という福島第1原発の悪夢と同じ状態が懸念されています。
 地震後、原電は「仮にポンプが全滅しても、原子炉は幸い無傷。炉心溶融は防げた」との見解は発表していますが、同時に「外部電源を2日間喪失し、原子炉格納容器を守るため内部の蒸気(微量の放射性物質を含む)を放出するベントは不可避だった」ことを認め、一歩違えば重大な事態に発展していた認識を公表しています。
 この防護壁は、2009年7月に着工、2010年9月に完成しました。従前の防護壁は高さ4.9メートルしかありませんでしたので、この6カ月前に完成した工事が間に合っていなければ、深刻な事態を招いていました。
 昨年8月には、九州電力川内原発(鹿児島県)が再稼働し、国内の「原発ゼロ」状態が終わりを告げました。運転再開に必要な原子力規制委員会の審査は1年半以上も停滞しており、再稼働をめぐる県内関係者の議論も低調です。茨城県は東海第2原発の重大事故に備えた広域避難計画を策定し、3月24日に県防災会議に報告しました。30キロ圏の住民約96万人のうち44万人は県内30市町村に避難し、残り52万人は隣接5県に逃げる計画です。しかし、昨年内を目標としていた県外避難先は結局決まりませんでした。仮に、避難計画が決まったとしても、実際に避難をするためのバスをどのように調達するのか、自家用車での避難が実際に可能なのか、など実効性ある避難体制を確立することは、まず不可能です。
 立地・周辺市町村と進める安全協定の見直し作業も具体的には進展が見られません。
 原電は、防潮堤やフィルター付きベントの設置など、2016年6月までに終える予定でしたが、こうした安全対策工事の完了時期はずれ込む可能性が高くなっています。

公明党は原発ゼロ社会を目指す
 公明党の基本的な考え方は、原発への依存度を徐々に減らして、将来的に「原発に依存しない社会・原発ゼロ社会」をめざすということです。そのために原発の新規着工は認めない方針です。また、建設後40年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用します。
 できるだけ速やかに原発ゼロ社会をめざすために、省エネルギーや、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入推進を図り、火力発電の高効率化を進めていきます。燃料電池(水素発電)など新たなエネルギー源の開発を進めます。
 既存の原発の再稼働については、原子力規制委員会が策定した新しい規制基準を満たすことを前提に、国民の理解と原発立地地域の住民の理解を得て再稼働するか否かを判断します。
 一方、東海第2原発については、たとえ新たな安全基準を満たしたとしても、先に述べたように、重大事故に対して30キロ圏内の住民96万人の避難体制が整備できない限り、再稼働は認められないと考えています。現状では、こうした大規模な住民避難体制の整備は実質的に不可能であり、当然、再稼働は出来ないと考えています。
 さらに、東海第2原発が営業運転を開始して以来37年が経過しています。東日本大震災以降、茨城県ではソーラー発電や風力発電など自然エネルギーの開発が進み、すでに東海第2原発の発電量を上回る電気が供給されています。常陸那珂港に隣接する火力発電所は、原発2基分の能力があります。鹿島港で計画されている洋上風力発電も計画が順調に進めば、東海第2原発の出力を上回ります。
 再稼働にかかる700億円を超えるといわれる投資を考えると、「再稼働させずに廃炉」という選択が真剣に考えられてよいタイミングになってきました。今後、原子力規制委員会が再稼働を認めたとしても、40年間の運転という原則から考えると、発電できるのはほんのわずかな期間です。事業者や規制委員会ではなく、政府が「廃炉」を明確に決断すべきです。そして、日本原電の今後の方向性も明示すべき責任は国にあります。

 一方、昨年までに、日本原電、関西電力、中国電力、九州電力、四国電力の国内5電力事業者は、老朽化原発6基の廃炉を決めました(敦賀第1、美浜第1、美浜第2、島根第1、玄海第1、伊方第1 )。これらの決定は、原発依存度を可能な限り低減させる政府方針に沿う第一歩となるものです。再稼働や運転延長に係わる出費が多大で、採算性が悪い原発の廃炉が進んでいます。
 2012年の法改正で運転開始から40年を過ぎた原発は、原則的に廃止することが決まっています。今後15年の間に運転開始40年を迎える原発は、国内に現存する48基のうち30基に上り、多くの原発が、これから廃炉の判断の時期を迎えます。
 廃炉を進めるためには、乗り越えなければならない課題がたくさんあります。その一つが原発の解体で発生する放射性物質を含む、がれきやごみなどの処分です。既に廃炉に着手している東海原発や中部電力の浜岡原発1、2号機も処分地が決まっておらず、作業の大きな妨げになってます。原子力規制委員会は、現在検討中の埋設施設の安全対策について、取りまとめを急ぐ必要があります。
 廃炉作業の工程では、原子炉建屋内のプールにある使用済み核燃料を他の場所に移さなければなりません。その行き先も決まっていません。このままでは本格的な廃炉作業に入れず、工程が遅れてしまいます。
 廃炉の実績で日本の先を行く米国では、ドライキャスト方式で、保管施設を敷地付近に設ける例があります。わが国でも先進事例を参考に議論を深めていくことが求められます。
 原発周辺地域への支援も忘れてはいけません。立地自治体には政府の交付金が支給されていますが、廃炉になると打ち切られるため、地元経済への影響を懸念する声が強くなっています。
 井手よしひろ県議らは、立地地域の支援策として、必要な技術の研究・開発や作業員の雇用、使用済み燃料の保管料など、廃炉に関する事業をビジネスとして確立すべきと主張しています。
 今後、廃炉に取り組む事業者は、廃止措置計画を策定し原子力規制委員会の認可を受けることになります。
 原発の廃炉は、多額の費用と30年近い年月がかかる大事業です。事業者は、計画策定にあたり、しっかりとした展望を示し、着実な作業の進展につなげていかねばなりません。

原電の新たなビジネスモデルを国責任で提案
 仮に東海第2原発を廃炉にすると、原電は全ての事業用原発を失うことになります。その雇用や、地域経済への影響が記念されています。そこで、原電を廃炉ビジネスの中心として再編することを、茨城県議会公明党は主張しています。

東海村議選19日告示 再稼働論議は低調
2016.01.17 茨城新聞
■第2原発候補者、意思明確にせず
 任期満了に伴う東海村議選(定数20)は19日告示、24日投開票される。日本原子力発電(原電)東海第2原発(東海村白方)は原子力規制委員会による審査が進められており2018年には運転開始から40年を迎え、次期任期中に新村議は再稼働の是非をめぐる重大な判断を迫られる見通し。原発立地自治体の議員選として注目されるが、明確に意思表示する候補者は限定的で、原発問題の議論が深まる気配はない。
 村議選に立候補を予定するのは現職17人、新人5人の22人。2人オーバーの選挙戦となる見通しだ。
 東海第2は原電が14年5月に再稼働の前提となる安全審査を規制委に申請。現在は、地震や津波対策などに関する審査が進む。
 審査に合格すれば議論の焦点は地元同意に移り、まずは村議会の判断に注目が集まる。昨夏に再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県)でも地元同意の手続きで最初に判断を下したのが立地自治体の市議会だった。
 運転開始から37年が過ぎた東海第2は原発の運転期限の「原則40年ルール」の問題にも近く直面する。1度に限り20年延長できるものの、これも地元同意が必要となる。
 ただ、選挙戦を前に再稼働問題に対して明確な態度を打ち出す候補者は少ない。現職の一人は「国の審査の結果が出ていない。まだ結論を出す時期ではない」と主張。別の立候補予定者も「原子力だけが問題ではない。もっと身近な課題も多い」と話す。
 再稼働反対や廃炉の立場をとる候補は数人にとどまるとみられ、反対派の候補の一人は「福島の原発事故から約5年。原発への厳しい見方が強かった4年前ほど反対派に追い風はない」と分析する。
 有権者の思いもさまざまだ。商工業の50代男性は「村民の多くが何かしら原子力と関わりがあり、支持者の考えもさまざま。(村議選で)明確に主張しにくいだろう」と地域の事情を挙げる。40代の主婦は「大きな判断を下す覚悟で出馬するはず。何も言わずに当選することには疑問が残る」と積極的な論戦を期待する。