諸外国のがん死亡率
 1月26日、人間ドック・健診予約サイト「マーソ」を運営するマーソは、「がん死亡率」についての日本と世界諸国の違いに関する独自調査の結果を発表しました。(マーソ調査レポート:
https://www.mrso.jp/reports/research/20160126/
  「世界保健統計2015」によると、日本人の平均寿命は84歳で世界トップですが、先進国においてがん死亡率が年々増加しているのは日本だけです。その原因の1つは、「検診受診率の低さ」であり、日本のがん検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国中最低水準です。アメリカでは1970年代から国を挙げて取り組み、1990年代前半からがんによる死亡率は減少に転じています。例えば、米国の乳がんと子宮頸がんの検診受診率が70〜80%であるのに対し、日本はその約半数の40%という低い値となっています。
 昨年9月、タレントの北斗晶さんが乳がん摘出手術を行ったという報道が発表され、「乳がん」の検索数は一気に上昇しましたが、翌月には元の数値に戻ってしまいました。この報道により「乳がん検査」の重要性に気づき、今後は受診率が増えていくかと思われましたが、残念ながら一過性の反応にすぎませんでした。マーソレポートでは、「人々の潜在意識の中には、がんや様々な病気に対する不安があるにも関わらず、何か自分の身近で大きなきっかけがないと『受診』という行動に移すことができないでいるのが現状」だと分析しています。
諸外国のがん死亡率
 国では、公明党の強い働きかけで、2007年に「がん対策推進基本計画」が策定され、この基本計画に基づき、がん対策が進められてきました。 しかし、2015年の中間報告では、がん対策の進捗はみられるものの、「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」(2007年度からの10年間目標)についてはこのままでは目標達成が難しいと予測されています。
 それを踏まえ、昨年12月に「がん対策加速プラン」が発表されました。そのプランの3つの柱のひとつが「がんの予防・早期発見」であり、がん検診の受診率が諸外国に比べ低い状況にあることを課題としています。基本計画では受診率50%(胃、肺、大腸は当面の間40%)を目標に掲げ、 その達成に向けての取組を進めるとしています。
 茨城県議会公明党は、機会あるたびにがん検診の受診率の向上を訴えてきました。昨年12月議会では、茨城県がん対策総合条例を議員提案で制定し、当面受診率50%を目指すことを明確に宣言しました。

個別受診勧奨(コール・リコール)を5大がんすべてに拡大
 また、厚生労働省は2015年度補正予算、16年度予算案で、対象者に受診を呼び掛ける個別受診勧奨・再勧奨(コール・リコール)を強化する予算を確保しました。個別勧奨の対象に胃がん、肺がんを追加するほか、効果的・効率的な勧奨を行うため、新たに対象者の受診の意向や日程の希望を調査します。「がん対策加速化プラン」に基づく取り組みで、いずれも市区町村に対する補助事業として実施します。補助率は2分の1です。
 今回の追加により、個別勧奨は乳がん、子宮頸がん、大腸がんを含む5大がん全てが対象となります。対象年齢は子宮頸がんが20、25、30、35、40歳。その他が40、45、50、55、60歳です。
 意向調査は、検診無料クーポンの未使用者や、会社などで行う職域検診の対象者の状況が把握できていない実情を踏まえたものです。具体的には、市区町村が対象年齢の人に対し、受診の意向や日程の希望、職域検診での受診の有無などについてアンケートを実施。その結果を基に受診日を設定したり、対象者の特性に応じたメッセージを郵送や電話で伝えるなどして、受診を促していきます。
 このほか2016年度は、女性特有のがん検診でのクーポン配布や、精密検査の未受診者に対する受診再勧奨、かかりつけ医からの個別勧奨を推進。若い女性向けに女性誌やSNSを活用した効果的な普及・啓発も行います。

進む胃がん対策としてのピロリ菌除菌、胃内視鏡検査
 胃がんの主な原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)除菌の保険適用拡大が、胃がんの早期発見につながっています。
 年間約5万人が死亡する胃がんに対して、公明党は2013年2月、胃内視鏡検査の実施を要件に、ピロリ菌の除菌が慢性胃炎の段階から保険適用できるようにしました。その結果、適用後1年で約110万件(出荷ベース)の除菌が行われました。
 ピロリ菌除菌による胃がん対策を提唱してきた北海道大学大学院の浅香正博特任教授は、胃内視鏡検査100件当たり1件の胃がんが見つかることから、保険適用によって1万件超の胃がんの早期発見に結び付いていると推計しています。今後、患者数の減少の効果が出ると期待を寄せています。さらに、国際がん研究機関(IARC)でも、保険適用拡大が高く評価されています。
 胃がんとピロリ菌の関係について正しい知識を普及啓発する意味も込めて、ピロリ菌検診を広めることが重要です。
 2016年度から導入される予定の胃内視鏡検査には、大きな期待が寄せられています。国の予算では、医師への研修が充実されます。