ピロリ菌のイメージ 2月2日付の佐賀新聞によると、佐賀県は2016年度から県内の中学3年生を対象に、胃がんの主な原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染症検査を実施するということです。
 都道府県単位では全国で初めての試みです。
 各学校で実施されている健康診断の尿検査の尿を用いて、任意で感染の有無を調べるというものです。感染の疑いがあるとされた生徒については、追加で検査をします。県では全中学3年生(約9000人)の5%がピロリ菌に感染していると想定しています。
 6000〜7000円かかる検査費用を県が負担し、感染していた場合、4000〜5000円かかる除菌治療費も県が自己負担分を全額助成します。これらの関連経費として県は約2600万円を来年度予算案に盛り込みます。
 2月15日に、県は正式にこの事業について発表します。
 ピロリ菌検査と除菌が、胃がんによる死亡を減少できるかは、確定的に証明されたわけではありません。しかし、日本では、若い人ほどピロリ菌の感染が少ないと言われており、佐賀県の試みは、その検証にもなると思われます。
 佐賀県では、武雄市を中心に、これまで東大病院の中川恵一先生らが中学生対象の「がん教育」を実施しています。
 ピロリ菌感染が胃がんの主因、そのピロリ菌の検査と除菌を行えば、胃がんを劇的に減少させることが出来ます。こうした基本的な知識を、多くの児童、生徒に定着させることも重要で、がん教育の成果が試される場でもあります。
 文部科学省は来年度に「がん教育」のモデル事業を強化し、小学生から高校生までのがん教育教材を作成(来年度活用)、一方で、がん教育には専門家(医師等)の活用も必要であり、かつ、単に児童生徒にがんの知識を教えるだけでなく、がんという病気を通じて健康といのちの大切さを気付かせるということも、がん教育の目標としていることから、医師や経験者を活用する際のガイドラインも作成中です。
 モデル事業等の結果も踏まえ、いよいよ2017年度から小中高でがん教育が全国展開となります。
 佐賀県のピロリ菌検査は、これらと連動した胃がん撲滅への大きなムーブメントとなります。

佐賀県内、中3全員ピロリ菌検査 全国初
来年度 除菌費、自己負担も助成

佐賀新聞(2016年02月02日)
 佐賀県は、県内の中学3年生全員の約9000人を対象に、胃がんの主な原因とされるピロリ菌の感染検査を実施する。検査はあくまで任意だが、本人の了解を得た上で、学校健診の尿検査の試料を用いる。感染している生徒の除菌治療費の自己負担分も助成する。健康増進課は「都道府県単位での取り組みは全国初ではないか」としている。2016年度当初予算案に関連経費約2570万円を盛り込む方針。
 県によると、14年の75歳未満の人口10万人当たりの胃がん死亡率は全国ワースト2位だった。ピロリ菌の除菌は早いほど胃がんの発症リスクを減らせる。「胃がんは予防できるがんなのに佐賀では多くの人が亡くなっている。全国に先駆けて撲滅に向けて取り組みたい」と意義を強調する。
 ピロリ菌の検査には採血や呼気などさまざまな方法がある。原則、成人の場合は最終的に内視鏡で胃の状態を確認し、除菌治療には保険が適用される。
 県は公立や私立、特別支援の全中学で実施されている尿検査の試料の残りを用いることで負担感なく感染を調べる。感染疑いの生徒には追加で検便を実施し、感染の有無を確定する。
 除菌には胃酸を抑える薬と抗生物質を組み合わせた飲み薬を1週間ほど服用する。この薬の対象が中3の15歳以上となっている。
 県は1人当たりの検査に6000〜7000円、治療費の自己負担分として4000〜5000円の助成を見込む。小児科系の学会の調査によると、中高生の5%程度が感染しているとされ、県内は約300人と推定している。検査事業では、佐賀大学医学部附属病院の小児科との連携も検討している。
 世界保健機関(WHO)の専門研究組織は14年、胃がんの8割がピロリ菌の感染が原因と発表した。特に日本人に多い胃の入り口(噴門部)以外の胃がんでは9割を占めている。