東日本大震災が発生し、福島原発の重大事故が起きて、今年の3月で丸5年が経過しようとしています。
 この節目に、井手よしひろ県議は公明党を代表して、3月3日、県議会で橋本知事に対して代表質問を行うことになりました。このブログでは、東海第2原発の再稼働をめぐる茨城県議会公明党の基本的な考え方を整理してみたいと思います。

東海第2原発の再稼働は事実上不可能!
 東海第2原発は日本原子力発電(原電)が運営する110万キロワット級の沸騰水型原子炉です。1978年11月28日に運転を開始しました。2011年3月11日、この東海第2原発の取水口付近にある高さ6.1メートルの防護壁に、最大5.4メートルの津波が襲いかかりました。単純計算だとあと70センチ、津波が高ければ防護壁に守られた冷却用ポンプ3台が水没し、非常用発電機が使用できなくなりました。全電源喪失という福島第1原発の悪夢と同じ状態となった可能性もあります。
 地震後、原電は「仮にポンプが全滅しても、原子炉は幸い無傷。炉心溶融は防げた」との見解を発表しましたが、同時に「外部電源を2日間喪失し、原子炉格納容器を守るため内部の蒸気(微量の放射性物質を含む)を放出するベントは不可避だった」ことを認め、一歩違えば重大な事態に発展していた認識を認めています。
 東海第2 原発の運転再開に必要な原子力規制委員会の審査は1年半以上も停滞しており、再稼働をめぐる県内関係者の議論も低調です。
 今年1月に行われた東海村議会議員選挙では、強固に再稼働に反対していた共産党の現職が落選するなど、再稼働容認派が過半数を確保して話題となりました。茨城新聞の記事を参考のため添付しました。
東海第2原発 茨城県は東海第2原発の重大事故に備えた広域避難計画を策定し、昨年3月24日に県防災会議に報告しました。30キロ圏の住民約96万人のうち44万人は県内30市町村に避難し、残り52万人は隣接5県に逃げる計画です。しかし、昨年内を目標としていた県外避難先は結局決まりませんでした。
 仮に、避難計画が決まったとしても、実際に避難をするためのバスをどのように調達するのか、自家用車での避難が実際に可能なのか、入院患者や施設に入所している患者や障がい者、お年寄りをどのように避難させるのかなど実効性ある避難体制を確立することは、まず不可能と言わざるを得ません。
 また、立地・周辺市町村と進める安全協定の見直し作業も具体的には進展が見られません。現状では、再稼働への同意は茨城県と東海村が認めればよいことになっていますが、周辺の市町村では、その同意の範囲の拡大を強く求めています。
 さらに、原電は防潮堤やフィルター付きベントの設置など、2016年6月までに終える予定でしたが、こうした安全対策工事の完了時期も、ずれ込む可能性が高くなっています。

公明党は原発ゼロの社会を目指します
 公明党の原子力発電に関する基本的な考え方は、原発への依存度を徐々に減らして、将来的に「原発に依存しない社会・原発ゼロ社会」をめざすということです。そのために原発の新規着工は認めない方針です。また、建設後40年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用するとしています。
 できるだけ速やかに原発ゼロ社会をめざすために、省エネルギーや、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入推進を図り、火力発電の高効率化を進めていきます。燃料電池など新たなエネルギー源の開発を進めます。
 既存の原発の再稼働については、原子力規制委員会が策定した新しい規制基準を満たすことを大前提に、国民の理解と原発立地地域の住民の理解を得て再稼働するか否かを判断します。

 一方、東海第2原発については、たとえ新たな安全基準を満たしたとしても、先に述べたように、重大事故に対して30キロ圏内の住民96万人の避難体制が整備できない限り、再稼働は認められないと考えています。
 さらに、東海第2原発が営業運転を開始して以来すでに37年が経過しています。東日本大震災以降、茨城県ではソーラー発電や風力発電など自然エネルギーの開発が進み、東海第2原発の発電量を上回る電気が、新たに供給されています。常陸那珂港に隣接する火力発電所は、原発2基分の能力があります。鹿島港で計画されている洋上風力発電も計画が順調に進めば、東海第2原発の出力を上回ります。
 2012年の法改正で運転開始から40年を過ぎた原発は、原則的に廃止することが決まっています。今後15年の間に運転開始40年を迎える原発は、国内に現存する48基のうち30基に上り、多くの原発が、これから廃炉の判断の時期を迎えます。
 昨年までに、日本原電、関西電力、中国電力、九州電力、四国電力の国内5電力事業者は、福島第1原発を除く老朽化原発5基の廃炉を決めました(敦賀第1、美浜第1、美浜第2、島根第1、玄海第1、伊方第1)。これらの決定は、原発依存度を可能な限り低減させる政府方針に沿う第一歩となるものです。また、再稼働や運転延長に係わる出費が多大で、採算性が悪い原発の廃炉が進んでいくものと思われます。
 再稼働にかかる700億円を超えるといわれる投資を考えると、「再稼働させずに廃炉」という選択が、経済的に考えても合理的です。
 茨城県のイメージ戦略を考えても、茨城の県の歌に謳われた「世紀を開く原子の火」という認識を卒業しなくてはなりません。一昔前は、原発が立地する地域は、ある意味で科学技術が集積した地域とのプラスのイメージがありました。しかし、現状は「原発立地」はマイナスのイメージに他なりません。原発を卒業した地域というイメージは、茨城県のイメージを大いに高める結果になると確信します。

国の責任で日本原電の新しいビジネスモデル構築を
 仮に東海第2原発を廃炉にすると、原電は全ての事業用原発を失うことになります。その雇用や、地域経済への影響が懸念されています。原電に新たなビジネスモデルを提示し、東海村を中心とする地域の活性化を図る責任が、現在まで原子力行政を進めてきた国にはあると考えます。
 茨城県議会公明党は、ポスト東海第2原発の地域経済活性化策として、本格的な更新・廃炉の時代を迎える原子力発電の中にあって、必要な技術の研究・開発や作業員の雇用、使用済み燃料の保管など、廃炉に関する事業をビジネスとして確立すべきと主張しています。その先進事例を東海地区に展開すべきです。

東海村議選 原発推進派増え過半数 再稼働議論低調
茨城新聞(2016/1/26付け)

■原電社員も当選
 日本原子力発電(原電)東海第2原発が立地する東海村の村議選(定数20)が24日投開票され、新議員が決まった。選挙戦で再稼働に関する議論は終始低調だったが、原電労組が初めて擁立した新人が上位当選を果たすなど、当選人数で原発推進派が反対派を上回った。次期任期中には再稼働をめぐって重い判断を迫られる可能性があり、推進派との議席差が拡大した反対派は危機感を募らせる。
 原電社員の新人、寺門定範氏(59)は、連合茨城の推薦も受け2位で当選。「組織がまとまり、地域の後押しも加わった」と述べ、東海第2については「安全性を第一に考え、避難計画も住民の目線で見ていきたい」と語った。
 同じく初当選した笹嶋士郎氏(59)は「原子力産業を衰退させないことが重要だ」と強調。26歳の新人、新垣麻依子氏も「安全と避難経路の見直しを前提として共存していく」と再稼働を容認する考えを示した。
 この新人3人に、当選した推進派2会派の現職9人を合わせ、原発推進派は計12人で過半数になるとみられ、改選前より議席を増やす結果となった。
 東海第2は、再稼働の前提となる安全審査が原子力規制委員会で進められているが、2018年11月には「原則40年」の運転期限を迎える。再稼働や運転延長には安全協定に基づく村の同意が必要で、今回の結果から議会が再稼働に賛成する可能性が高まった。
 反対派は、反対派の中心として活動していた現職から後継指名を受けた新人の阿部功志氏(61)や、東海第2廃炉や脱原発を主張する村上達也・前村長の支援を受けた新人の清宮寿子氏(67)が当選を果たす一方、共産党の現職が落選した。
 阿部氏は「再稼働に対する態度を明確にする候補が少なく、争点にならなかった」と指摘。賛成派が増えたことに「数の力で押し切るのは民主主義の否定だ」と危機感を示し、「最終的には住民投票に訴えるしかない」と話す。
 今後は改選後の会派編成をめぐる動きが活発化する。既に推進派の一部では会派統一を模索する動きがあり、反対派の一部からも「推進派に対抗できる組織を」との声が上がる。