益城町の被災状況
 熊本地震で大きな被害を受けた熊本県益城町と西原村では、5月1日より家屋の被災状況を証明する罹災(りさい)証明書の発行受付が始まりました。
 罹災証明書は、災害により被災した住家等について、その被害の程度を、市町村が証明したものであり、災害対策に関する市町村の自治事務の一つとして、災害発生時に被災者に交付されてきたものです。
 こうした罹災証明書は、現在では、被災者生活再建支援金の支給や住宅の応急修理、義援金の配分等の支援措置の適用の判断材料として幅広く活用され、被災者支援の適切かつ円滑な実施を図る上で極めて重要な役割を果たしています。
 しかし、市町村によっては、罹災証明書の発行の前提となる住家被害調査の実施体制が十分でなかったことから、東日本大震災に際しては、罹災証明書の交付に長期間を要し、結果として被災者支援の実施そのものに遅れが生じた事例も少なくありませんでした。
 こうした状況を受け、平成25年6月21日に災害対策基本法が改正され、罹災証明書を遅滞なく交付することを市町村長の義務として、位置付けるとともに、これを実効あるものとするため、住家被害の調査に従事する職員の育成や他の地方公共団体等との連携確保など罹災証明書の交付に必要な業務の実施体制の確保を平常時から努めることを、市町村長の義務としました。
 罹災証明書の証明事項については、罹災証明書が被災者生活再建支援金の支給や住宅の応急修理といった住宅被害に着目した被災者支援措置の適用に多く活用されています。また、これまで市町村において交付されてきた罹災証明書においても住家の被害状況が一般的に証明事項に含まれている事実を踏まえ、住家被害を必須の証明事項としたものです。
 このため、住家以外の不動産被害や家財等の動産被害、被災住民の人的被害等については、法律上必ずしも証明事項とすることが求められないところですが、被災住民の利便の観点から、多くの市町村が「被災証明」等の名称で、地震被害があったことを証明する書類を発行しているところです。
 罹災災証明書の受付にあたっては、通常、申請者の氏名、住所、連絡先、罹災した人の氏名、住所、連絡先、被災の状況、持ち家か借家かの種別、などを記載して申請します。被災状況を証明するための写真や本人確認のための免許証や保険証などを持参することが求められます。(写真がなくても申請は可能です)
 罹災した本人がケガや高齢などの理由で申請できない場合は、家族などが代理で申請することも出来ます。事前に任意の委任状を書いておくことが必要です。(市町村によっては、罹災証明書の申請書に委任の欄がある場合もあります。

益城町の被災状況
罹災証明の受付時には、住民基本台帳との照合が最低限必要!
 さて、益城町ではじまった罹災証明書の申請で一つ気になることがあります。それは、申請時に住民基本台帳上の住所と現住所を照らし合わせて、受付けていないということです。
 本来であれば、法改正の主旨に則り、平時から大規模災害時の被災者支援システムを構築しておく必要性がありました。しかし、現にこれだけ大きな地震被害が発生したわけですから、そのことを徒に批判しても意味がありません。
 東日本大震災や関東・東北豪雨被害の経験から、住民基本台帳上の住所と申請者が申告する現住所とが違う場合が多数発生しました。
 特に、今回の熊本地震被害では、住家被害調査は申請の有る無しにかかわらずスタートしており、この調査結果と申請された在家を突合(照合)させる作業の多大な労力と時間が掛かる可能性があります。最低でも、住民基本台帳上の住所と氏名を申請時に確認できるよう、システムの構築を急ぐべきです。