オリーブの夢(ワン・ウェンチー)
 8月8日から10日までの3日間、井手よしひろ県議は、茨城県北芸術祭の開催に当たって、全国の地域芸術祭の先進事例ともいわれる「瀬戸内国際芸術祭」を視察しました。
 「瀬戸内国際芸術祭」とは、2010年よりスタートした3年に1度開催される(トリエンナーレ形式)現代美術の国際芸術祭です。歴史的に水上交通の要衝としての役割を担ってきた瀬戸内海の島々には、伝統的な文化や美しい自然環境が残っています。しかし、それらの島々は高齢化、過疎化により活力を失いつつあります。島の住人と世界中からの来訪者の交流により島々の創生り、島の伝統文化や美しい自然を生かした現代美術を通して瀬戸内海の魅力を世界に向けて発信することを目的に瀬戸内国際芸術祭は企画されました。
 3回目となる今回の芸術祭は、瀬戸内海に浮かぶ14の島々(直島 / 豊島 / 女木島 / 男木島 / 小豆島 / 大島 / 犬島 / 沙弥島[春のみ] / 本島[秋のみ] / 高見島[秋のみ] / 粟島[秋のみ] / 伊吹島[秋のみ] / 高松港・宇野港周辺)を会場として開催されています。会期は3つに分かれていて、春会期(2016年3月20日〜4月17日:29日間)、夏会期(7月18日〜9月4日:49日間 )、秋会期(10月8日〜11月6日:30日間)の総計108日間となっています。瀬戸内が『希望の海』になることを目指し、テーマを「海の復権」と掲げています。また、アート作品や建築の公開やイベントの開催に加え、瀬戸内の食を味わう食プロジェクト、アジアを中心とした世界との文化的交流、県内や瀬戸内の他地域との連携に力を入れています。総合ディレクターを務めるのは北川フラム氏。「ローカルであることは、グローバルであること。食には島々の特色が色濃く出ている。そして、アートもまた食という基盤の上に成り立つもの」と語り、豊かな海山の食材に恵まれた瀬戸内の食を発信していく意向を、企画発表会で表明しています。
花寿波島の秘密(康夏奈・吉田夏奈)
 瀬戸内国際芸術祭の源流は、人口3000人強の小さな島・直島(なおしま)です。直島では、1980年代後半から、福武書店(現ベネッセグループ)が南部地域の土地を購入し、「直島文化村構想」のもと、1992年にホテル・美術館の「ベネッセハウス」建設。「直島文化本村地区の「家プロジェクト」など、地域と一体となったイベントが始まります。そして地中美術館の建設などを経て、2005年には地中美術館、2010年には李禹煥美術館がオープンしました。
 瀬戸内国際芸術祭は国内最大の地域芸術祭で、100万人の来場者があります。この芸術祭は、瀬戸内の島々で開催されるという特徴を持っているがゆえに、列車や車で簡単に訪れることができません。島々の行き来はフェリーや高速船で行うために、輸送量に限界があります。小さな島なので、宿泊施設や飲食施設、トイレなど施設も限りがあり、多くの観光客を滞在させることもできません。それでも、会期を3つに分け、一時期に観光客が集中することなく、まんべんなく集客を図ることを戦略としました。(ゴールデンウィークやシルバーウィークなどは意図的に会期から外されています)

段山遺跡群(久保寛子)
 交通不便なことが逆にプラスに働いている面もあります。来場者の平均的な宿泊日数は、2.48日になっており、ホテル・旅館・レストランなどに大きな恩恵を与えています。県外からの来場者の比率が61.3%と過半数を大きく超え、特に関東からが17.8%となっており、様々な交通機関に対する貢献も見逃せません。
 外国人も割合も会毎に高まり、今回は20割を超えるのではと予想されています。
 芸術祭の地域への波及効果は、金額ベースで132億円(芸術祭2013の経済波及効果:日本政策投資銀行の試算)と投下した予算の10倍を超えています。なお、香川県の負担額は約2億円です。
 また、この魅力が高まった島々には移住を希望する人も増え、男木島では一端休校となった男木小中学校が再開されました。

太陽の贈り物(チェ・ジョンファ)
 県北芸術祭を企画した茨城県にとって、瀬戸内国際芸術祭は大いに学ばなくてはならない先行事例です。素晴らしい自然環境を持っているという点では共通するものがありますが、その環境は、余りにも対照的です。県北芸術祭の開催まで1カ月あまり。茨城県は実際に芸術祭を実施しながら、瀬戸内の事例を学んでいかねばなりません。