瀬戸内国際芸術祭<小豆島>
 瀬戸内海の島々を舞台にした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2016」の夏会期が連日盛況です。3年に1度トリエンナーレ形式で開催される瀬戸内国際芸術祭は、今年で3回目。ユニークな作品や工夫を凝らしたイベントで、国内外から訪れるファンが増え続けています。8月8日から10日にかけて、井手よしひろ県議は、9月17日から開催される「茨城県北芸術祭」の参考事例として現地調査しました。
 瀬戸内海に浮かぶ大小の島々。そこでは、古くからさまざまな生活が営まれ、独自の文化が形成されてきました。近年の急速な高齢化と過疎化によって、島の暮らしやコミュニティーの存続が危ぶまれている中、「海の復権」をテーマにした瀬戸内国際芸術祭は、現代アートで島の活性化を図るのが狙いです。
 開催は春、夏、秋の3会期に分かれ、7月18日に開幕した夏会期は9月4日まで。香川県の直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、高松港、岡山県の犬島、宇野港の7島9会場を舞台に、国内外のアーティストによる166作品が展示されています。

 国内の芸術祭で、最も成功した事例と言われる瀬戸内国際芸術祭から、茨城の県北芸術祭が学ぶ点は数多くありますが、ここでは以下の4点にまとめてみたいと思います。招聘する作家や作品そのもの内容については、芸術祭の実行委員会(ディレクターやキュレーター)側の責任であると考えますので、この場では、行政や地域の住民の立場で指摘してみました。
1.地域の自然と現代アートが融合して放出されるエネルギー
2.地域芸術祭を支える地元住民の力
3.会場と会場をつなぐ有機的、効率的な移動手段の確保
4.単発的なイベントから継続的な運動に
今回のブログでは、前半の2項目について少し詳しく述べます。

直島の風景2
1.地域の自然と現代アートが融合して放出されるエネルギー
 芸術の持つ力は、それが展示される場所によって、周りの人によって大いに増幅されることを発見しました。瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクター北川フロム氏は「美しいものを見る“観光”から、幸せを感じる“感幸”になりたいというのが芸術祭の出発点。アートによって島の特色を明らかにしようとしてきたが、実際、船に乗って会場の島々を巡り、島ごとに違う文化に出合った驚きがリピーターを呼び込み、1回目が93万人、2回目が107万人という過去2回の来場者数につながったと思う」と語っています。何もなくても美しい瀬戸内の風景なのですが、現代アートの作品がそこ加わることで、劇的にその風景を感動的に昇華することが出来ることを体感することが出来ます。

太陽の贈り物(チェ・ジョンファ)
 例えば、もはや直島の象徴とも言える「赤かぼちゃ」と「黄かぼちゃ」。いずれも草間彌生氏の作品です。瀬戸内海の美しい海には感動します。しかし、その海の広がりの中で、こうした現代アートがまさにアクセントとなり、絶対に忘れられない印象的な風景をつくりだしています。高松港に立つ、高さ8メートルもの2本の柱。大巻伸嗣さんの「Liminal Air -core-」という作品も、これから瀬戸内の島々に出かけるワクワク感を、いやが上にも盛り上げてくれる作品です。「オリーブの島」として親しまれる小豆島の玄関口・池田港に、オリーブの葉を王冠の形に仕立てた彫刻を設置されています。チェ・ジョンファ氏の作品「太陽の贈り物」です。
 地域の素晴らしさを象徴する作品は、まさにその地域のランドマークとなって、地域の魅力を何十倍にも増幅してくれています。
 翻って、県北芸術祭には地域のランドマーク的な作品が少ないのが残念です。長く地域の方や訪れる人々を歓迎してくれる作品も欲しいと思います。

160809瀬戸内国際芸術祭<直島>229
2.地域芸術祭を支える地元住民の力
 地域芸術祭は招聘された作家だけが、作品をつくり、それを見てもらえば良いというものではありません。作品それ自体の制作にも関わるサポーターや作品の説明をしたり、会場の案内や整備、清掃などを行うボランティアも必要です。さらに、観客の移動の支援や食事や休憩場所の提供など、地域芸術祭はその地域の総合力が試されます。
 直島では、1970年以降、国内外で活躍してきた建築家による約20の建築が手がけられ、世界中から注目を集めています。島の長い歴史の中で形作られた本村の住宅街そのものが芸術となっています。建築家が想像した見事な作品と、一般の住宅が見事に調和しており、住民の皆さんの協力なしではこの芸術祭が成立しません。島の皆さんや空き家を活用したレストランなど、見事な調和を醸し出しています。その中でも、特に、無料の無人休憩所には感動しました。自宅の車庫を改造して疲れた観光客が自由に休むことができる空間が用意されています。赤ちゃんを寝かすこともできるベビーベットも用意されていました。

160810瀬戸内国際芸術祭<大島>156
 ボランティの活躍も重要です。運営をサポートする「こえび隊」(https://www.koebi.jp/)の存在を絶対に忘れてはいけません。こえび隊は瀬戸内国際芸術祭のボランティアサポーターの名前です。全国・世界中の幅広い年齢層の方が、瀬戸内に集まり、島に渡って活動をしています。台湾やオーストラリアからの海外ボランティアも最近は参加しているようです。島が好き!アートが好き!芸術祭を手伝いたい!と思っている方なら、いつからでも、誰でも参加できます。瀬戸内国際芸術祭を支えるため、作品制作のお手伝いや、芸術祭のPR活動、芸術祭期間中の運営、各島での催しのお手伝いなどを行ってます。芸術祭を開催していない間は、「ART SETOUCHI」と題して、アート作品の公開や様々なイベントが行われています。こえび隊は、これらの活動に一年を通してかかわることで、島と人とのゆるやかなつながりを保つ役割を担っています。
 こえび隊は、NPO法人瀬戸内こえびネットワークが運営しており、その代表理事は北川フロム氏です。第1回の瀬戸内国際芸術祭が開催される1年前の2009年には発足しており、実行委員会と二人三脚で芸術祭を盛り上げてきたと言っても過言ではありません。
 こうした地域住民の力を結集する枠組み作りは、今回の茨城県北芸術祭では現在の所不十分です。常陸太田市の鯨が岡商店街などこれまでの地域おこしの流れの中から、住民との協働の形が生まれつつある会場もありますが、今後の大きな課題となることは明らかです。

参考:瀬戸内国際芸術祭から県北芸術祭が学ぶもの<2>
http://blog.hitachi-net.jp/archives/51636776.html

茨城県北芸術祭