ふるさとのイメージ 9月2日、総務省は選んだ自治体に個人が寄付をすると住民税などが軽減される「ふるさと納税」で、2015年の寄付額を反映して各自治体が失う個人住民税の税収額を発表しました。一部の自治体にとっては財源の流出となり、総額は998億5千万円となりました。
 全体として都市部から地方に税収が移る効果が表れています。返礼品を充実させている自治体に寄付が集まる傾向が鮮明となり、地方の自治体間でも収支に差が出ています。
 行き過ぎた返礼品競争を抑え、地方を応援する本来の趣旨に合う制度にすることが課題となっています。
 ふるさと納税制度は、自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った場合に、寄付額のうち2000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です(一定の上限はあります)。例えば、年収700万円の給与所得者の方で扶養家族が配偶者のみの場合、3万円のふるさと納税を行うと、2000円を超える部分である2万8000円が所得税と住民税から控除されます。
 住民税には「市町村民税」と「都道府県民税」があり、さらに「均等割」と「所得割」があります。所得割は市町村民税6%+都道府県民税4%=合計10%、均等割は市町村民税3000円+都道府県民税1000円=合計4000円となっています。そこで、ふるさと納税で住民税が控除されると、本来入るべきの住民税が市町村も都道府県もマイナスとなります。
 市町村は、ふるさと納税制度を使って積極的に寄付金を集めていますが、都道府県は返礼品等を使ったふるさと納税を行っている事例は少数派です。そのために、都道府県はほとんどがふるさと納税の収支がマイナスとなっています。流出額が最も大きかったのは、東京都の261億6千万円。東京都に次いで、神奈川の103億1千万円で、大阪の85億9千万円が続きました。
 一方、流出額が最も少なかったのは島根で1億7千万円。次いで鳥取が1億8千万円、高知が2億1千万円でした。

茨城県のふるさと納税:5億1500万円の赤字
 茨城県は、5億1518万円の赤字となっています。茨城県のふるさと納税は、大好きいばらき応援寄付金として行われています。特典は、5000円以上寄付をいただいた方に対し、アクアワールド茨城県大洗水族館など県内7施設のいずれかで使える共通招待券(ペア)、個人については、県内約600カ所の観光・お食事・宿泊などの協賛施設で割り引きが受けられる「漫遊いばらきファンクラブ会員証」の年会費(1年分)を免除するなどが用意されています。
 寄付の対象事業(メニュー)は、(1)がん対策の推進、(2)平成27年9月関東・東北豪雨による被害への対応、(3)震災の復興、(4)人づくり、(5)子育て支援、(6)安心安全な医療環境の整備、(7)日本一の農産地づくり、(8)文化・スポーツの振興、(9)その他県政全般などとなっています。
 9月20日に開かれた県議会総務企画委員会で、井手よしひろ県議は、寄付対象事業をさらに明確化、具体化して寄付を募ることを提案しました。例えば、アーカスプロジェクトや県北芸術祭などの文化芸術振興策、老朽化した障害者施設の改修、犬猫の殺処分ゼロなど動物愛護の推進、移住促進や農地(農場)レンタルなどの空き家、耕作放棄地対策など、具体的で成果が分かりやすい事業を選定すべきと主張しました。

茨城県と県内市町村のふるさと納税の収支
茨城県と県内市町村のふるさと納税の収支(平成27年度決算ベース)