年金のイメージ 9月28日安倍晋三首相は、衆議院本会議の公明党井上義久幹事長の質問に答えて、年金の受給資格を得るのに必要な加入期間を25年から10年に短縮することを来年10月から実施する方針を改めて言明しました。公明党が参院選で重点政策に掲げた「無年金者対策」を具体化することになります。臨時国会に提出し、成立すれば、来年10月から新たに約64万人が年金を受け取れるようになります。
 来年10月は9月分を支給し、それ以降は偶数月に2カ月分をまとめて支給します。支給額は保険料納付期間などに応じて決まります。予算は年間約650億円の見込みです。受給資格期間短縮により、将来、無年金になる人を減らす効果も期待できます。
 年金受給資格期間の10年への短縮は、2012年の民主、自民、公明3党による社会保障と税の一体改革で決めた施策です。17年4月の消費税率10%への引き上げで財源を確保し実施する予定でしたが、引き上げの2年半延期を受け、実施延期が懸念されていました。
 早期実施を一貫して訴えてきた公明党は、6月21日の党首討論会で、安倍晋三首相から「今後の予算編成の中で、最大限努力したい」との答えを引き出していました。
 諦めていた公的年金を受け取れるようになれば、老後の暮らしに対する不安は少しでも和らぐに違いありません。
 政府は26日、年金を受け取る資格を得るために必要な加入期間(受給資格期間)を10年に短縮する「年金機能強化法改正案」を閣議決定し、衆院に提出しました。
 今国会で成立すれば、来年10月から新たに約64万人が年金を受け取れるようになります。加入期間が短縮されることで、将来、無年金となる人を減らす効果が期待できます。この国会での法案の成立が不可欠です。
 法案の提出までには、数々の曲折を経ました。もともとは2012年の民主、自民、公明3党による社会保障と税の一体改革で決めた施策であり、2017月に消費税率を10%に引き上げることで財源を確保する予定でした。しかし、税率引き上げの2年半延期を受け、無年金者対策は先送りされかけました。
 この事態に「待った」をかけたのが公明党でした。自公政権が進める経済政策(アベノミクス)の効果が低所得の高齢者にまで及んでいない中、年金の受給資格期間の短縮を求める国民の声は大きなものがありました。このため公明党は、今年6月に発表した参院選の重点政策に無年金者対策の推進を明記。その後に開かれた党首討論会では、山口那津男代表が安倍晋三首相に対し、消費税率の引き上げを待たずに年金の受給資格期間を短縮するよう主張しました。
 安倍首相は「今後の予算編成の中で最大限努力したい」と応じ、翌7月の記者会見で正式に2017年度中の実施を表明しました。
 法案の成立後は、新たに年金を受け取れるようになる人に対して「支給請求書」が送られます。これを返信することから手続きが始まります。ここで注意しなければならいのは、対象者が書類を見逃したり、申請を忘れたりすると、自動的には支給されないということです。
 また、受給資格期間が10年に短縮されるとはいえ、当然、加入期間が短ければ受け取れる年金は減額されます。

■年金受給額の計算方法
 年金額の計算式は以下の通りです。老齢年金額=老齢基礎年金額+老齢厚生年金額です。平成28年度の場合、老齢基礎年金額は780,100円✕20歳〜60歳までの保険料納付済月数/480(480カ月納付すると満額もらえます)。老齢厚生年金額は厚生年金加入期間中の平均標準報酬額×(5.481/1000) ×厚生年金加入月数です。

■加入期間が25年と10年における受給額は?
 では、年収500万円の会社員を例に、年金の加入期間によって受け取れる年金額がどのくらい変わってくるか確認していきましょう。20歳以降の厚生年金加入期間による、65歳からの概算年金額は、次の通りとなります。
 加入期間25年の場合は、老齢基礎年金:488,000円 +老齢厚生年金:674,000円=1,162,000円となり、受給額は一月あたり96,833円となります。一方、加入期間10年の場合は、老齢基礎年金:195,000円+老齢厚生年金:270,000円=465,000円で、受給額は一月あたり 38,750円となります。

■国民年金のみの場合は?
 国民年金(老齢基礎年金)のみで見てみれば、10年に短縮され年金がもらえるようになると、年間支給額は780,100円✕120カ月(10年)/480で年額195,000円で、ひと月にすれば1万6000円ということになります。

 これでは、何の足しにもならないとの声が聞こえてきますが、老後になって生活苦に陥る「老後破産」なんて言葉も生まれているように、定年退職後に優雅な暮らしを送れている人は限られています。65歳以上になって毎月1万6000円の収入を増やそうとするのは、かなり困難なことだというのは容易に想像できます。そして、生きている限り何歳でももらえるお金があるということは、どれほど安心できることでしょう。ちなみに80歳まで生きたとすると総支給額は、1,170万1,500円という大きな金額となります。
 「自分の老後は自分で守る」ための第一歩の公的年金。何より国民年金に加入し、保険料を払うのは紛れもない「義務」なのです。10年年金の実施が、年金の重要性を多くの人が再認識できる機会になると確信します。