東大病院中川恵一准教授 10月は、「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン月間」です。公明党が主導して、2006年に「がん対策基本法」が成立して以来、受診率は着実に伸びています。ただ、欧米諸国に比べると決して高くはありません。さらなる受診率向上へ、次なる課題を東京大学医学部附属病院の中川恵一准教授の公明新聞(2016年10月9日付け)のインタビュー記事よりまとめました。

 がん対策基本法成立の成立から10年がたちました。基本法は、がんという病気を国民病と定め、国を挙げて取り組むことを決めた画期的な法律です。今では著名人ががんを告白したり、テレビ・週刊誌でも度々取り上げられたりと、がんが当たり前のように語られる社会になりました。基本法の成立を主導した公明党の役割は、非常に大きかったといえます。
 がん検診の受診率―がん検診受診率は30〜40%台まで上がってきました。無料クーポンの発行や、自治体から郵送や電話などで個別に受診を勧める「コール・リコール」など、公明党が力を入れた具体的な施策が後押ししたのは間違いありません。
 ただ、現状はまだ欧米諸国の半分程度にとどまっています。日本では、男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんにかかっているにもかかわらず、受診率の向上に必ずしも結び付いていない現状があります。特に女性特有の がんの受診率の低さが課題です。
 車の運転に例えると、生活習慣の改善は安全運転、シートベルトが、がん検診に当たります。いざという時に命を守ってくれるのががん検診です。今、がんが発見されても、全体で65%程度、早期がんなら、ほぼ100%治ります。
がん検診受診率
焦点は職場と学校、働く女性への対策がカギ。
 乳がんは40代後半、子宮頸がんは30代前半に多く発症しています。その結果、54歳までは女性患者数の方が多い。がん検診の受診率を上げるためには、 身近な女性を誘って、「一緒に検診に行きましょう」という積極的な声掛け運動が重要となります。
 胃・肺・大腸がん検診の60%以上が職場で受けられており、職域でのがん検診が非常に重要です。しかし、乳がん・子宮頸がんの受診率は40%台と低いのが課題で、さらに精密検査を受けない人が多いのも問題といえます。
 厚生労働省が熱心な企業や健康保険組合をホームページで紹介したりする「がん対策推進企業アクション」を展開しています。こうした事例がさらに広がることを期待します。

検診に並ぶがん予防の柱として、がん教育も注目されています。
 文部科学省は来年度から、がんに対する正しい知識と命の大切さの理解を深めるため、小・中・高校での がん教育を全国展開する方針です。子どもたちの身を守ることはもちろん、受診率向上への効果も期待されます。私が関わったモデル事業の中でも、教育を受けた子どもの90%近くが「保護者に検診を勧める」とのアンケート結果も出ています。
 学校でのがん教育を開始してから、大人の検診受診率が上がったとの自治体の報告もあります。
 来年(2017年)6月には、がん対策推進の新たな基本計画が決まる予定です。今後は、難治性のがん対策や、職場と学校での教育が焦点です。国や自治体での取り組みが着実に前進するよう、公明党の活躍に期待します。
 東京都豊島区は、2012年度から、全国で初めて全区立小・中学校で、独自の教材を使ったがん教育を展開しています。
 埼玉県熊谷市は、2014年度から、がん体験者らと協力し、小・中学生を対象にした「生命の授業」を行っています。熊谷市のがん検診受診率は、この授業が後押しとなり、実施前に比べて5〜7ポイント増加しました。
 また、東京都八王子市では、大腸がん検診と特定健診のセット受診を促そうと、特定健診の前年度受診者に、大腸がん検査キットを同封する施策を実施。2014年度のセットでの受診率は前年度に比べて28.3ポイント増の66.1%となりました。
 国は今年度から、胃がん検診に関する指針を改定し、胃部X線検査(バリウム検査)だけでなく、胃内視鏡検査(胃カメラ)も選択できるようになりました。今月から、名古屋市や北九州市などが先行して実施しています。

企業、健診項目にがん検診を組み込む
 がん対策推進企業アクションの一環として、昨年の全国大会で第1回の企業表彰が行われました。厚生労働大臣賞を受賞した株式会社ワコールホールディングスでは、胃・肺・大腸がん検診を年1回の健康診断の受診項目に組み込んでいるほか、乳がん・子宮頸がんについては検診車を事業所に付け、就業時間内に受診できる環境を整えています。乳がん検診車は自社で購入したもので、他の企業などにも貸し出しています。
 がん対策推進パートナー賞(検診部門)には株式会社古川とリコー三愛グループ健康保険組合が選出されました。古川では社内勉強会を開き、がんに関する知識を深めるとともに、従業員・配偶者の検診費用を全額、会社が負担しています。リコーでは検診結果データを健保組合と事業主側の産業保健スタッフが共有しています。