あいちトリエンナーレ/愛知県美術館
 10月18日、19日の両日、井手よしひろ県議は、愛知県で3年一度開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の視察のために、名古屋市、豊橋市などを視察しました。2010年から始まり、3回目を迎えたあいちトリエンナーレ。地域芸術祭の先進事例として、その目的や開催概要、課題などを調査し、現在開催中の「茨城県北芸術祭」の次回開催への参考することが今回の視察目的です。
 あいちトリエンナーレは、2007年に県知事選で再選を果たした神田真秋氏が、マニフェストの一つに掲げた「国際芸術祭の開催」がその淵源。愛知万博の以降、中部国際空港の開港などを受けて、国際的に愛知県を発信するイベントとして計画が進められました。現代美術に加えて、ダンス・演劇・オペラなどの舞台芸術が同時に展開されています。また、まちなかでの作品展示やさまざまな普及教育プログラムがあることも大きな特色です。
 開催の目的は以下の3点です。1.新たな芸術の創造・発信により、世界の文化芸術の発展に貢献する。2.現代芸術等の普及・教育により、文化芸術の日常生活への浸透を図る。3.文化芸術活動の活発化により、地域の魅力の向上を図る。
 第1回(2010年)は、テーマに「都市の祝祭 Arts and Cities」を掲げ芸術総監督は、当時国立国際美術館館長を務めていた建畠晢氏が務めました。来場者は当初目標30万を人大きく超え、57万2013人が訪れました。
 第2回(2013年)は、東日本大震災を受けて「揺れる大地−われわれはどこに立っているのか:場所、記憶、そして復活」をテーマとし、五十嵐太郎氏が(東北大学大学院工学研究科教授)芸術監督を務めました。約62万人が訪れました。
 3回目となる今回は、「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」がメインテーマ。芸術監督は、写真家・評論家(著述家)、多摩美術大学教授の港千尋氏が務めています。会期は2016年8月11日(木)〜10月23日(日)までの74日間です。
あいちトリエンナーレ/愛知県美術館
 あいちトリエンナーレは、毎回異なったテーマを掲げ、芸術監督やキュレーターなどが総入れ替えになる特徴があります。展示する作家も、過去に紹介した作家は起用しないという原則があるそうです。常に新鮮な作家、作品を展示できる魅力はありますが、ネームバリューがある作家、地元愛知県の作家や継続して地域との連携で作品づくりを進めていくような作品が招聘されない欠点もあります。
 今回は、県内11カ所に用意された会場(名古屋、豊橋、岡崎の3市)で、世界38カ国・地域から参加している119組のアーティストが現代美術に加え、ダンスや演劇などの舞台芸術を展開しています。また、このイベントは、子どもをはじめ、参加者がアートを体感できる創作プログラムも盛り込み、文化芸術の普及、そして教育プログラムにも力を入れています。
 10月18日井手県議は、愛知県芸術文化センターで、あいちトリエンナーレ実行委員会の久保見順(事務局主幹)、渡辺展仁(事務局担当)両氏から説明を受け、意見交換を行いました。
 今回の総事業費(2014年度〜2016年度)は13億6000万円で、愛知県が8億9000万円、名古屋市が2億1000万円を負担します。入場券などの事業収入、企業からの寄付金などが2億5000万円などとなっています。内、国から(文化庁など)の補助金は2億円です。
 今回の来場者数は、開催日数が前回より短くなったこともあり、60万人台に乗るか注目しているようです。22日の会期末を控え、18日、19日は平日にもかかわらず、各会場はかなり賑わっていました。
 あいちトリエンナーレを推進している県の「国際芸術祭推進室」は、開催年次には40名体制。2014年度11名、2015年度25名であったそうです。名古屋市から2名、豊橋市や岡崎市からも3名の職員を受け入れています。
 会場運営をサポートするボランティアは、1100〜1200名で、毎回の開催を楽しみに待っている方も多いとのことでした。

豊橋市と岡崎市でのまちなか展開
豊橋市水上ビル会場
 前回の名古屋市と岡崎市に加え、今回から路面電車の走る豊橋市が新たに会場として加わりました。2013年にオープンした、「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」を起点に、駅前大通の開発ビル、水上ビルの一部などが会場として使われています。
 愛知県が主催する地域芸術祭ですので、県内の主要として広域開催することは理解できます。愛知県というと大都市名古屋やトヨタ自動車の豊田市がすぐに思い浮かびますが、独自の文化や歴史を有する地方都市に光を当てることは重要な視点であると思います。
 また、日本経済の牽引力ともなっている中京地域にあっても、産業構造の変化などで地域の活力が失われている場所もあるのは事実です。名古屋市内の長者町繊維街、豊橋市の老朽化した商業ビル街など、アートの力で新たな方向性を模索する、愛知県や地元市町村の考え方は、茨城県の県北芸術祭とも共通するものでした。
 ただし、こうした広域開催の考え方も、名古屋市と豊橋市が80キロ近く離れていることなどを考えると、今後どのように統一感を持って開催していくのか、工夫が必要です。また、他の市町村との兼ね合いも検討することも重要です。