賃金が物価以上に下落する時は賃金に合わせて支給
現状では減額なし “カット法案”は誤り

 この臨時国会には、年金額改定ルールの見直しなどが盛り込まれた国民年金法改正案が上程されています。この法案は年金の持続可能性を高めるものであり、民主党など野党の“年金カット法案”との批判はまったく当たりません。このブログでは、年金額改定ルールの見直しの内容を確認してみたいと思います。

年金額改定のルール
【見直しの内容】
 年金額は、その実質的な価値を維持するため、賃金や物価の上昇率に応じて年金額の改定(スライド)が行われます。これから年金を受給する新規受給者の年金額は賃金上昇率で、既に年金を受給している既受給者の年金額は物価上昇率で改定が行われます。
 また、少子高齢化の進行に対応するための年金額の調整も実施されています。これが、現役世代の減少(公的年金全体の被保険者の減少率の実績)や、平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)を年金額の改定に反映させ、年金改定率が抑制させる仕組み(マクロ経済スライド)です。
 このマクロ経済スライドは、賃金や物価がある程度上昇している場合はそのまま適用されます。
 しかし、過去にリーマン・ショックなどで賃金が顕著に下がった際、それに見合った年金額に下げなかったため、(将来の給付を“先食い”する形で)現在の年金水準が高くなっている現状があります。このままでは現役世代が将来受け取る年金額が下がってしまうので、それを防ぐため、「物価の下落以上に賃金が下がる」「物価は上がっても賃金が下がる」という場合には、賃金に合わせて年金額を定める仕組みに改めることとしました。
 賃金が下がるような事態を繰り返さぬよう、政府は経済再生に取り組み、実際に賃金は上昇している。新ルールは、あくまでも将来世代の年金給付を守るため、物価以上に賃金が下がるような事態に備えておくもので、直ちに年金が減るわけではありません。
年金額改定のルール

【民進党の試算】
 民進党は、過去10年間のデータに新ルールを当てはめると年金が5.2%減るとの独自試算を示し、政府案を批判しています。厚労省は民進党の求めに応じ、一定の仮定の下で機械的に試算したところ、今の年金水準が3%(基礎年金で1人当たり月2000円)下がるという結果となりました。
 この差は、民進党の試算が、2021年に新ルールが始まる前の2017年で終了している毎年の厚生年金保険料アップ(可処分所得の減少)を織り込んでいるため生まれるものです。 一方、厚労省試算では、将来の水準は7%程度(5000円)上昇する結果となっており、新ルールで将来の給付が確保されることも示されました。
 ちなみに、賃金変動に合わせた年金額の変動を徹底する新ルールを批判する民進党の前身・民主党の年金制度改革案も、年金改定ルールについて、賃金の連動を基本としており、賃金が下がった際には、年金額も下がるとしていました。

【低所得者対策】
 仮に、下落する賃金に年金額を合わせる新ルールが適用されるような状況になったとしても、年金受給者の暮らしへの影響が最小限となるよう、新ルールは、低所得・低年金の方に最大月5000円を支給する福祉的給付を2019年10月にスタートさせた後に実施することにしています。