熊本地震<益城町の被害状況>
 自然災害前からのローンに加え、生活再建や事業に向けた新たな借金も背負う「二重ローン問題」。被災者の重い負担を防ぐため、すでに抱えているローンを金融機関が減免する新たな制度が、公明党の働きかけなどで、今年(平成28年)4月から動き出しました。現在、昨年9月に発生した関東・東北豪雨被害や熊本地震被害者への適用が進められています。
 この制度は、2011年の東日本大震災の被災者を対象につくった制度を他の災害に広げるため、全国銀行協会(全銀協)などが昨年12月にガイドラインをまとめ、4月から制度をスタートさせた。対象は災害救助法の適用を受けた地域で住宅や事業などのローンを払えなくなった被災者。熊本地震の場合は同法が適用された熊本県だけでなく、大分県などでも被災者の事情に応じて金融機関が対応する。
 減免が認められれば、生活再建に必要な現金や預金(上限500万円)を手元に残し、残りでローンの一部を返済し、返しきれない分は減免される仕組みです。自己破産と異なり、ローンを払えなかった記録が残らず、新規ローンやクレジットカードの契約もできることが特徴です。
 全銀協は2016年5月、福岡市と熊本市で金融機関向けの説明会を開きました。「義援金で返済条件を変更した場合はどう扱えばいいのか」などの質問が出されました。説明会には大分県の銀行も出席。自宅が壊れた県内の被災者から住宅ローン減免の相談を受け付けました。全銀協の担当者は「新しい制度なので金融機関も手探りで動き出している」と語っていました。
 二重ローンは東日本大震災でも問題になりました。自宅が再建できずローンだけが残ったり、自己破産に追い込まれたりするケースもありました。11年8月には東日本大震災の被災者を対象に減免制度が始まりましたが、利用は約1300件にとどまりました。
■減免手続きの流れ
 ガイドラインによると、個人の被災者は最も多額のローンを借りている金融機関に減免手続きを申し出ます。その際、〆匈欧留洞舛埜気亮擽發鯤屬擦覆き∈盪詐況を借入先に適正に開示している破産手続きなどと同等額以上の回収見込みがあるなど借入先にもメリットがある、などの各要件を満たす必要があります。
 被災者はその後、弁護士などが務める登録支援専門家の無料支援を受けながら財産目録などの必要書類を全ての借入先に提出。免除額などの計画を立てて協議します。全ての借入先同意のを得たら簡易裁判所に特定調停を申し立て、手続きの内容を確定させます。

■「二重ローン」問題にかかわるガイドライン:共済組合からの借り入れがある場合に大きな課題
 ところが、実際にこのガイドラインを運用してみると、様々な課題が浮かび上がっています。公務員などが加入している共済組合からの借り入れがある場合は、この二重ローン救済の枠組みがまったく機能していません。
 ある方からを通して相談をいただいたのは、住宅ローンと自動車ローンがある公務員の事例です。住宅ローンは熊本銀行、共済組合からの借り入れもありました。
 相談に乗ってくれた弁護士が、書面で金融機関と共済組合に整理の方針を伝えたところ、共済組合からガイドラインには応じませんとの返事が来ました。断ってきた理由は、「地方公務員等共済組合法施行規程15条」です。
地方公務員等共済組合法施行規程
(債権の放棄等の制限)
第15条  組合の債権は、その全部若しくは一部を放棄し、又はその効力を変更することができない。ただし、債権を行使するため必要とする費用がその債権の額をこえるとき、債権の効力の変更が明らかに組合に有利であるとき、その他やむを得ない理由がある場合において主務大臣の承認を受けたときは、この限りではない。

 今回のガイドラインは金融庁が所管する銀行などの金融機関が対象です。総務省などが所管している公務員や教員、警察官などが加入する共済組合は、原則債権の放棄を認めおらず、ガイドラインの効果も及ばないことになります。金融機関への債務と共済組合の債務がある場合、金融機関の債務だけを整理するということはできません。共済組合を含めて、債務がある団体の同意がなければ二重ローンの解決にはならないわけです。
 債権の放棄ができないということをうたった「地方公務員等共済組合法施行規程15条」のも「主務大臣の承認を受けたときは、この限りではない」と規定にもあるように、政府が大規模災害時の新たな整理の枠組みを共済組合にも認めなくては、この問題は解決できません。
 被災地の現場の議論では解決できない課題ですので、井手よしひろ県議は公明党の政務調査会へ課題として提案するとともに、関係する国会議員にも早急の対応を強く求めました。