図1:GDPに対する高等教育費の公的支出の割合
 相対的貧困、所得格差の拡大、子どもの貧困などが日本社会の大きな課題としてクローズアップされています。そこで、公明党は大学生らに対する返済不要の「給付型奨学金」の創設を強力に推進しています。これを受けて、政府は「2017年度予算編成過程を通じて制度内容について結論を得、実現する」方針で、今後、与党での議論も本格化する見通しです。給付型奨学金の意義や制度設計の論点について、東京大学大学総合教育研究センター・小林雅之教授の公明新聞(2016年11月7日付)記事をもとにまとめました。

「貸与型」だけでは低所得世帯に限界、失望招かぬ規模確保を
 日本の学生への経済的支援策のうち、実質的に給付型の要素を持つのは主に授業料減免制度だが、低所得世帯にとってそれだけでは進学に踏み込めないのが実情です。
 大学や専門学校などへの進学は、授業料はもちろん、生活費も大きな問題です。高校卒業後すぐに働かなければ生活が成り立たない状況にある人もいます。そんな人が貸与型だけでは、借り入れが多額になり、返済に苦しむことになる。だから、どうしても「給付型奨学金」の創設が必要です。
 現在制度化されている日本の奨学金制度は、有利子または無利子の貸与型奨学金です。奨学金を受給して大学を卒業しても、その返済のために大変苦労する社会人も多くいます。公明党は奨学金の有利子から無利子に、そして返済不要の給付型への移行を力強く進めています。
 給付型奨学金の―制度設計に当たり、重要なポイントは「経済的理由で進学が難しい子どもの背中を押せる制度」かどうかです。特に進学先の少ない(大学・専門学校などが少ない)地方に住む低所得世帯の子どもをどう支援するかが議論の一つの出発点になります。そうした子どもたちは、自宅から通えず進学費用がかさむ上に、学習環境が不十分で、相対的に学力が低いことも多い状況です。成績要件を高くしてしまうと進学が難しくなってしまいます。
 一方、大学側が単位認定を厳格化している中で、たとえ入学できても卒業できることも重要です。無条件で成績要件を外すことも問題があります。逆に一定の成績要件をつけても(例えば、内申書の平均を4以上などとする)、学校間の成績格差が大きな高校をどのように評価していくかなど難しい課題もあります。
 一部報道では、給付額について月額3万円という案が報じられています。この金額では、進学を後押しする額なのか、少し少なすぎると思います。世界の例を見ても年間50万〜60万円(4万〜5万円)が最低限必要ではないでしょうか。ただ、財源に限りがある中で、額を大きくすれば対象人数が減ってしまいます。家族の収入に応じて給付額に段階を設けるなどのきめ細やかな制度設計が必要です。
 金額の多寡は重要な課題ですが、まず作ることが最も大切です。小さく生んで効果を検証しながら、大きく育てる。これは大事な発想です。
 公明党は教育の格差是正や、今回の「給付型」創設など奨学金制度の拡充に向けて、さまざまな提案を行い、熱心に取り組んできました。
(図1:GDPに対する高等教育費の公的支出の割合で、OECD諸国の中でも日本は最低水準にある)
参考:ゼロからわかる「奨学金問題」〜負担すべきは、国か、親か、本人か〜対立する“3つの教育観” (東京大学大学総合教育研究センター・小林雅之教授)