イメージ
 アパート経営に関する住民相談が増えています。ここ数年、畑や空きに次々、アパートが建っています。人口減少が著しい日立市内でも真新しいアパートが目立ちます。今年9月の貸家の着工戸数は、昨年比で12.6%と11カ月連続で大幅に増えています。
 人口は減っても、なぜアパートは増えるのか。その背景にあるのは、相続税が増税と低金利が続いていることのようです。
 アパートを建てるというとお金持ち、資産家の話しのようですが、ご相談を受けた方は普通のサラリーマンです。親の住んでいる家と土地(築50年の立派な家屋と300坪の土地)があり、自分はすでに他県にマイホームを建ててしまっている。もし、残った母親が亡くなると相続税の負担を心配していました。そこに、アパートの事業者が訪ねてきて、「銀行から借り入れをしてアパートを建てると、相続税の計算上、負担が大幅に減ります。今なら、超低金利で、銀行も積極的に貸してくれます。建てたアパートの部屋は一括で借り上げます。その家賃は30年間保証します」と誘われ、アパートを建設しました。
 ところが、4年目に賃料を大幅に下げるよう要請され、銀行ローンの返済もできないと断ると、今度は契約を解除すると言われた。という相談でした。今の家賃を維持するためには、ソーラー発電の施設を家主の負担で設置するよう勧誘されたとも言っていました。
 土地の所有者が建てたアパートなどを、アパート業者が一括で借り上げ、入居者に貸し出す仕組みを「サブリース」と呼びます。入居者集めや管理は業者が行い、空室に関係なく毎月一定の家賃を支払います。不動産取引では通常、業者に様々なリスクの説明を法律で義務づけていますが、この「サブリース」はその対象になっていません。個人の大家も不動産事業者とみなされ、対等な業者間の取引とみなされるため、「消費者契約法」の保護対象にならないのです。「消費者契約法」では、「絶対にもうかります」と断言したり、不都合なことを隠したりして、勧誘することは禁じられています。その場合、消費者側(大家さん)は、アパートを建てるという契約をさかのぼって、取り消すことができます。
 ところが、「サブリース契約」では家主は、「事業者」とみなされて、こうした救済策が受けられないのです。
 本来なら勧誘を受けた場合、事業者が言う収支計画をそのまま信じるのではなく、経営者になるという自覚をもって、立地のいい場所かどうか、長期的に収支があうかどうか、慎重に検討する必要があったのです。
 近年、個人の大家を中心に「契約時に『30年一括借り上げ』『何もせずに安定した家賃収入』などと言われたのに途中で強引に減額された」「業者から契約解除を要求された」などの苦情が急増。日本住宅性能検査協会には過去5年間に477件の相談があったと報道されています。
 国交省もやっと対応に乗り出しました。登録制度に参加する3735社に対するルールを改正し、今年9月から施行しました。これまでは、将来的な家賃減額などのリスクを説明する義務は明示されていませんでしたが、これを契約時に口頭や書面で行うように明記しました。2018年7月からは違反業者を公表します。
 しかし、国への登録は任意で、全国3万2000あると見られている事業者のうち、10%程度しか登録されていません。しかも、違反しても業者の公表以外の罰則はありません。
 抜本的には、家主といっても、多くは、事業者に「何もしなくても、安定して収入が入ってくる」と勧誘された「素人経営者」なのですから、こうした大家さんは「消費者」とみなすよう保護するべきだと思います。
 こうした問題を専門に扱っている被害対策弁護団もあります。思いあたる方は、なるべき早めにこうしたところに相談する方が良いかもしれません。

国土交通省「サブリースに関するトラブルの防止に向けて」
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/tintai/pdf/saburi-sutoraburubousituuchi.pdf
サブリース被害対策弁護団
http://sublease-bengodan.jimdo.com/