高齢者を含め検査体制の確立急げ:上村直実・国府台病院長に聞く
国府台病院長 公明党の尽力で2013年2月から、胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌治療に対する保険適用が慢性胃炎にまで拡大されました。今や除菌治療を受ける人は年間約150万人にまで増え、胃がんによる死亡数も減少しつつあります。
 保険適用拡大の効果について、国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実病院長のインタビューを、2017年1月4日付け公明新聞より転載します。

◆保険適用の拡大で、胃がんによる死亡数に変化はあったか?
 厚生労働省が毎年発表する人口動態の調査から、胃がんによる「死亡数」と、国立がん研究センターによる「死亡数予測」を比べたてみると、日本の胃がん検診は、1970年代から2000年までの30年間は、バリウム検査しかなく、胃がんによる死亡数は毎年5万人で推移していた。2000年から、胃潰瘍と十二指腸潰瘍の消化性潰瘍に対するピロリ菌の除菌治療が保険適用となり、死亡数が少しづつ減少を始めた。
 そして13年からは、公明党の推進で慢性胃炎についてもピロリ菌の除菌治療が保険適用となったのを契機に、死亡数の減少がより顕著となった。(平成26年:4万7903人、平成27年:4万6659人)
 これらの結果から、医療保険による除菌治療が可能となったことが胃がん死亡者数の低下に影響を与えていることは明らかだ。
◆死亡数が減少した主な要因は。
 国立がん研究センターが、がんの罹患者数や平均余命などの項目を加味し死亡数を予測しているが、実際は14年、15年ともに予測数より3000人ずつ少ない結果となっている。
 正確な要因はまだ定かではないが、一つ言えることは、「内視鏡検査」の機会が増えたことで、胃がんの早期発見につながっているのは確かだ。保険診療で除菌治療を行う場合に必要となる内視鏡検査で、胃がんが見つかる人が増えている。
 胃のバリウム検査をはじめ、最近、注目されている胃がんリスク検診などを通し、できるだけ多くの人を内視鏡検査に誘導することがとても重要だ。

◆ピロリ菌の感染率も下がっていると聞くが。
ピロリ菌罹患者 その通り。やはりこの点が大きな要因だ。70歳以上の高齢者の感染率は70%以上と高いままだが、中年から若年世代の感染率低下が顕著だ。この感染率の推移と並行するように、胃がんによる死亡数も著しく減っている。80歳以上の死亡数はまだ増加しているが、若い世代の感染率の低下が死亡数の減少に大きく関連しているのは間違いない。従って、今後、胃がん死を抑制していくためには、中高年への対策がより重要だといえる。
(日本人のピロリ菌感染率は世界的には中間レベル。しかし、先進国の中ではきわだって高率です。世代別では、上下水道などの衛生環境が十分に整っていない時代に生まれ育った人ほど感染率が高く、50代以上では80%程度なのに対し、10〜20代では20%前後と著しく低くなっている。日本人全体の感染率は、2030年頃までにはほかの先進国並みに低くなることが予想される)

◆今後の課題は。
 胃がんは早期発見によって、ほぼ100%助かる、がんだ。今後、死亡数をさらに減らすには、ピロリ菌の有無を調べる検査体制の確立とともに、高齢者をがん検診へと導く取り組みが急務だ。例えば、今も多くの国民が受けているバリウム検査においても、ピロリ菌のチェックは十分可能だ。一刻も早く検査に追加してほしい。
 全国どこでも除菌治療ができる体制はほぼ整っているので、一人でも多くの国民にピロリ菌の感染を知る機会があれば、胃がんで亡くなる方はもっと減るだろう。
 またピロリ菌を除菌した後も、胃がんのリスクが残っているため、定期的な検査は必要である。

公明党が、がん対策をリード
 慢性胃炎におけるピロリ菌の除菌治療に対する保険適用は、公明党の粘り強い主張が実ったものです。2011年2月、党がん対策推進本部の秋野公造参院議員が質問主意書で、ピロリ菌の感染が胃がんの発生原因であると政府は初めて認めました。その後も、国会質問や党員らによる100万人を超える署名簿を厚労相に届けるなど、除菌への保険適用拡大を強く訴え続けた結果、13年2月に承認されました。  
 除菌治療の流れは、内視鏡で「慢性胃炎」と診断されてから、呼気検査などでピロリ菌の有無を調べます。感染が確認された場合、除菌治療は「抗菌薬」と「胃酸の分泌を抑える薬」を組み合わせて、1週間ほど服用すします。現在、保険適用によって、窓口での支払いが3割負担の人で、6000円前後の負担で済むようになりました。

上村直実(うえむら・なおみ)1951年、福岡県生まれ。広島大学医学部卒。専門は消化器病学、特にピロリ菌と胃がんの研究。日本ヘリコバクター学会副理事長、日本消化器病学会理事などを兼務。国立国際医療研究センター国府台病院長