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 1月16日警察庁は、2015年に起きた75歳以上のドライバーによる死亡事故のうち、アクセルとブレーキペダルの踏み間違えやハンドル操作の誤りなど操作ミスが原因となった事故の割合が、75歳未満の約2倍に上るとのデータを公表しました。身体機能の低下が原因とみられます。
 一方、夜間や人口密集地での事故は比較的少なく、衰えを補う形でこうした危険な時間帯や場所を避けるような運転行動もうかがわれます。
 全体の死亡事故は年々減少傾向にある中、75歳以上は横ばいの400件台で推移し、割合は上昇傾向にあります。警察庁は16日開催の有識者会議に分析結果を提示。高齢運転者対策を幅広く検討し、6月をめどに提言をまとめることにしています。
 15年の死亡事故は全体で3585件。うち75歳未満が3127件、75歳以上は12.8%に当たる458件で、警察庁が事故内容を比較分析しました。
 原因別で、75歳未満の操作ミスは468件の15%だったのに対し、75歳以上だと134件の29%に達しています。ペダルの踏み間違えが原因の死亡事故は同年までの5年間で226件あり、うち75歳以上が約半数、65歳以上だと8割近くに上っています。
自動ブレーキや急発進抑制装置など自動車の安全装置開発も不可欠
 道路交通法が改正され、高齢者の認知症検査など、免許更新時の検査などが強化され、都道府県警察でも免許を返上する高齢者への様々な特典付与などを取り組みも進んでいます。
 しかし、茨城県のように公共交通が未発達な地域では、自動車なしには買い物や病院などに通うことに支障が出てしまいます。車の運転が生活そのものに大きな影響を与えます。
 こうしたことを考えると、車自体の安全性の向上策が強く望まれます。
 運転ミスなどによる悲惨な事故を防ぐための手段のひとつとして期待されているのが「自動ブレーキ」です。おととし1年間に販売された新車のうち、自動ブレーキを搭載した車はおよそ4割となり、急速に普及が進んでいます。自動車メーカーは拡大する需要に応えようと、新しい機能の開発や性能の向上を進めています。
 スバル(富士重工業)は9年前、自動ブレーキ機能“アイサイト”をいち早く実用化しました。当初は一部の車種に限ったオプションでしたが、需要の高まりを受けて現在では多くの車種に標準装備しています。
 バックミラーの両脇に取り付けられた2つのカメラが、まるで人間の目のように前を走る車や歩行者をとらえ、その距離を認識します。対象と衝突するおそれがあるときは、車内で警報が鳴り、ドライバーがブレーキをかけないと、車が自動でブレーキを作動させる仕組みです。
 実用化が始まった9年前に比べて、カメラの認識範囲は4割ほど改善。100メートル先の歩行者も見分けることができ、時速50キロまで衝突を回避することができるといわれています。自動ブレーキを搭載した車は、搭載していない車よりも6割事故が減ったということです。
 一方で、このシステムは、横方向からの飛び出しに弱い、という欠点もあります。カメラは車の前方を中心に認識するため、進行方向に向かって横の範囲は死角となってしまい、このため、交差点でのカーブなどで歩行者や自転車が急に飛び出してきた際、対応できないケースが発生します。
 自動ブレーキ技術では遅れを取っていたトヨタですが、新型プリウスに“セーフティセンスP”と呼ばれる新しいシステムを投入しました。オプション設定で、8万6400円程度割高となります。セーフティセンスPの実力値は、停止車両なら50キロ程度、歩行者だと35キロ程度だと専門家は語っています。(ちなみに、このブログ管理者も自家用車の乗り換えに際して、このセーフティセンスPをオプションで取り付けました)
 高齢ドライバーの運転ミス、その中でもアクセルとブレーキの踏み間違いは、時に重大な事故を招きかねず、大きな問題になっています。ダイハツ工業は、こうした事故を防ぐための「誤発進防止」機能の開発に力を入れています。
 この機能は、アクセルを強く踏み込んだときに作動します。この際、前方に壁や車などの障害物があると、車がエンジンの出力を自動で抑えます。車内では8秒間にわたって警報が鳴り響き、その間にドライバーがブレーキをかけるよう促す仕組みです。車の後方には音波で近くの障害物を検知するソナーがつけられていて、バックでも運転ミスによる急発進を防ぐようになっています。
 軽自動車を運転する高齢ドライバーも多いだけに、価格や燃費だけでなく安全装備の充実が、消費者の判断基準になってきているそうです。ダイハツによると、自動ブレーキをつけるための追加費用は6万円かかりますが、およそ8割の購入者が追加するということです。
 自動ブレーキのない車でも、あとから機能を追加できる装置も登場しました。車用品販売のオートバックスセブンは、誤発進防止の機能をあとから取り付けることができる装置を部品メーカーと開発しました。通常、自動ブレーキを搭載したい場合は車の組み立て段階から専用の部品を取り付けないといけないため、新車を購入する必要があります。しかし、オートバックスなどが開発した装置は、国内メーカーの乗用車であれば1日程度の作業で“後付け”することができるのが特徴で、価格も4万円程度と比較的割安に抑えられています。
 装置を取り付けると、時速10キロ以下でアクセルを強く踏んでも車が急発進しないようになります。装置の中のセンサーがアクセルの異常な踏み込みを感知すると、その電気信号を自動で遮断する仕組みです。ゆっくり踏むと、車は通常どおり発進します。去年12月の発売以降、2週間で予想の2.5倍の注文があったということです。
 今後の検討の中には、高齢者の運転については、こうした安全装置のついた車両の義務付けを考える必要もあるかもしれません。