ボランティアによる譲渡活動
 昨年12月の茨城県議会で、いばらき自民党が中心となり議員提案された「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」が、全会一致で可決成立しました。
 犬や猫は、人間に最も身近な動物の一つであり、家族同様の存在として私たちの生活に癒やしと潤いを与えてくれています。しかし、その一方では、飼い主の犬や猫の習性に対する理解不足や、身勝手で無責任な対応によって、飼養放棄、県民からの苦情や相談に基づく犬の捕獲等により、多くの犬や猫が殺処分されています。
 茨城県は、犬の殺処分頭数が、平成17年度から24年度まで全国ワースト1位、平成25年度以降は全国ワースト2位と、長年にわたり全国上位に位置するなど、深く憂慮すべき状況にあると言えます。
 このような状況を踏まえ、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すため、適正な飼養及び保管に関する関係者の責務などを定め、殺処分となる尊い命を生じさせない取組みを推進し、県民が犬や猫などのペットと共に幸せに暮らせる社会の実現に寄与することを目的として、「茨城県犬猫殺処分ゼロを目指す条例」が提案されました。
 この条例の特徴は、単なる動物愛護をうたうことではなく、犬及び猫の殺処分ゼロを目指すことに特化したところにあります。
 まず、県の責務として、犬又は猫の飼い主に対しては、適正な飼養及び保管についての知識の普及啓発に努めるとともに、販売業者に対しては、適正な販売に関する指導を行う旨を規定しました。
 また、犬又は猫の飼い主の責務として、動物の福祉に鑑み、自らが所有する犬又は猫がその命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」、みだりに繁殖することを防止するための「不妊去勢手術などの措置」、自己の所有に係るものであることを明らかにするための「マイクロチップ装着などの措置」について、それぞれ努力義務として規定しました。
 さらに、販売業者等の責務として、購入者や譲受者に対して終生飼養を促すとともに、購入者や譲受者が終生飼養が困難であると認められるときには、犬又は猫を販売・譲渡しないよう努めなければならないと、規定しました。
 そして、県による、犬及び猫の命の尊さを学ぶ場の設定や、所有者がいない猫に対する取組への支援、関係施策を講じようとする市町村への支援などについても規定しました。
 県は、殺処分ゼロを目指すための施策を総合的かつ計画的に推進するため、ふるさと納税制度等を活用した寄付金の募集及び受入れ、基金の設置、その他の必要な財政上の措置を講ずるよう、努めるものとしました。 単なる理念条例ではなく、基金の造成などを明記したのは画期的だと思います。
 
ピースワンコ・ジャパンの保護施設
 さて、井手よしひろ県議は、茨城県と同規模で、民間団体との協力で犬猫の殺処分ゼロを一足先に実現した広島県を訪れ、広島県庁、認定NPOピースウィンズ・ジャパン、NPO犬猫みなしご救援隊などと意見交換を行い、現地調査しました。
 人口規模では、広島県と茨城県とはほぼ同じですが、広島県は政令指定都市である広島市と中核市である呉市、福山市が動物愛護の担当部署をもっています。
 広島県は、平成23年に犬猫の殺処分頭数が8340頭と都道府県でワーストとなったために、県をあげての殺処分減少を目指した取り組みが加速しました。平成27度からは定時定点引き取りを廃止したり、市町村の啓発運動に県が補助金を出したりする政策を実施しました。平成27年の収容頭数は5125頭、殺処分1924頭、譲渡返還頭数が3210頭でした。
 こうした状況の中で、平成28年3月、広島県神石高原町に本部があるNPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」(PWJ)が、広島県内で殺処分対象となった犬を全頭引き取ると発表しました。PWJは、平成26年9月の動物愛護週間に「1000日(今年6月15日)以内に、広島県内の犬の殺処分をゼロにする」という目標を掲げて「ピースワンコ・ジャパン」の活動を開始しました。広島県神石高原町とも連携して、犬舎の建設などの資金の募金活動を、「ふるさと納税制度」を使って展開。これまでにこの時点で2万4000人以上から8億円近くの寄付が寄せられました。PWJは、平成28年12月末現在、広島県内で収容された1045頭中650頭を保護しました。
 さらに、昨年8月には、NPO法人「犬猫みなしご救援隊」が、広島県動物愛護センターに保護された殺処分対象の猫を、全て引き取ると発表しました。救援隊はこれまでも広島市動物管理センターや呉市動物愛護センターに収容された殺処分対象の猫を引き取り、不妊手術をして飼ってきました。昨年8月からは県動物愛護センターも対象とし、県内全域の持ち込まれた野良猫や飼われなくなった猫を引き受けています。
他に東日本大震災や熊本地震の被災地からも引き取り、救援隊には現在、約千匹以上の猫が飼われています。平成28年12月末で、608頭の猫が収容され、その内413頭が救援隊に引き取られました。救援隊は飼育数の増加に対応できるよう、既存の施設を改修する計画で、費用は全国の支援者からの寄付などで賄っています。
 犬猫の殺処分をなくすためには、逃走したり、棄てられたり、飼い主が飼うことが出来なくなった犬猫を減らすこと=入り口対策。動物愛護センターに収容された犬猫を一般の市民に譲渡したり、終生飼養できる施設を設けたりする取り組み=出口対策。の両面が必要です。
 広島県では、犬猫各々に強力な出口対策を進める民間団体が名乗りを上げたわけです。結果的に、平成29年以降は、殺処分はなくなるとみられます。
 こうした先進事例を見てみると、殺処分ゼロを目指すためには、民間動物愛護団体との連携・協力と民間からの資金やふるさと納税などを含めた財源確保が最大の課題となることは明らかです。そして、地方自治体は、飼い主の一層の啓発事業や犬猫の販売業者への指導、地域猫などの入り口対策が非常に重要になります。

犬猫みなしご救援隊の保護施設
 茨城県の犬猫殺処分ゼロ条例は、全国から注目を浴びています。この条例をもとに、具体的にどのような行動をとるかが重要です。そこで、現状の茨城県における犬猫の殺処分の状況と、来年度予算では具体的にどのような施策を展開するか、茨城県の姿勢が問われています。
 この条例には、市町村の啓発事業等を支援する基金の創設が謳われています。県の責任として、来年度から速やかに事業がスタートできるよう、まず基金に財源を積み立るべきです。その上で、どのように基金を拡大し、どのような事業に活用するか、その具体像を明確にしなければなりません。
 さらに、条例が明確に出来たわけですから、この条例を所管し、茨城県における動物愛護の推進の司令塔となる組織を明確に位置付けるべきだと思います。例えば、動物愛護推進室のような組織を立ち上げ、犬猫殺処分ゼロに向けての具体的な行動を起こすべきです。