エコフロンティア笠間
 3月13日、茨城県議会防災環境商工委員会が開かれ、「エコフロンティアかさま」を運営する(一財)茨城県環境保全事業団の経営評価が報告されました。平成27年度に井手県議らが提案して実現した「レベニュー債」の償還が完了したために、財務の健全性が高まったことが報告されました。
 県環境保全事業団は、茨城県の第三セクターです。1993年に県が約8億円を全額出資して設立されました。2005年に公共関与の廃棄物の最終処分場と焼却施設を併設した「エコフロンティアかさま」を開業しました。その建設費約246億円のうち約182億円は、国の政策投資銀行などからの借り入れで調達しました。しかし、地元住民などの反対運動のために、10年間で事業を終了させるとの同意のもとに事業がスタートしたこともあり、毎年約20億円もの過大な借入金返済が発生することになりました。時期的にも、資源のリサイクルやゴミの減量化などが進む中で、処分されるゴミの量が著しく減少しました。1993年度に約144万トンだった県内の産廃の最終処分量は、98年度約59万トン、2003年度約20万トンと、10年間で約7分の1に激減しました。
 その結果、当初予定していた年間売上げ目標46億円は、約25億〜30億円と低迷し、施設のランニングコストが約15億円を要することもあり、毎年20億円にも上る借入金の返済が大きな負担となってきました。
 県は(1)民間金融機関からの借入金に関しては、茨城県が損失補償契約を締結、(2)返済原資に比して単年度の返済額が過大であることから、資金不足を茨城県からの短期貸付金で対応する──といった、いわば小手先の対応を繰り返してきました。このスキムでは、万一、事業団が破綻した場合は、その損失を県が負担しなければならなくなりました。最終的には県民の税金で補填しなくてはなりません。
 その後、茨城県は地元住民と粘り強い交渉を行い、10年の事業期間を埋め立てが終了するまでと大幅延長することが出来ました。それを前提に、県の損失補償に依存しない超長期資金を、調達する方法を模索しました。当初は民間金融機関からの超長期資金調達を検討しましたが、償還20年以上の希望に各金融機関とも門前払いの状況でした。

エコフロンティア笠間の事業実績
井手県議が新たな資金調達の枠組みを提案、日本初の「レベニュー債」が実現
 このような状況下、2010年6月の県議会総務企画常任委員会で、井手県議は「レベニュー債」という全く新たな仕組みでの資金調達法を提案しました。県の財務担当部署は、その年の夏には、世界最大の投資銀行であるゴールドマン・サックス銀行と接触。将来の処分場の収益を新生信託銀行に信託して証券化して、優先して利益を受ける権利(優先受益権)をゴールドマンサックス社に譲渡して投資家に販売、約100億円を調達する内容で合意しました。償還期間24年以内で調達金利は2.51%と決まりました。
 レベニュー債とは、上下水道や電力といった公益事業、病院、公営住宅、有料道路などの利用収入を元利返済に充てる債券で、アメリカでは一般的な地方の資金調達法(地方債)となっています。
 県環境保全事業団がレベニュー債を発行する最大のメリットは、従来の資金調達には民間銀行から借り入れていた約90億5000万円に、県の損失補償契約(返済が困難になった場合は、県民の税金で補填するという契約)がつけられていましたが、レベニュー債導入で損失補償を外すことができた点です。また、投資家が信託受益権を保有していることで、今後事業に無駄が生まれないような監視がされ、財政規律が高まったことです。業績好調の場合は、繰り上げ償還が比較的簡単だということです。
 レベニュー債導入により、県環境保全事業団の財務内容が大幅に好転しました。毎年の返済金額は約4億円程度に圧縮されました。初年度である2011年度は、返済予定の約3億円に対して、震災による売上増も相まって、15億5500円も返済することが出来ました。
 その後も経営は順調に推移し、12年度24億5300万円、13年度24億900万円、14年度18億7800万、15年度17億500万円を償還し、2015年度末で借入額を全額返済しました。
 24年間での償還予定をわずか5年で償還したことになり、その利息の縮減額は24億4500万円にも達しました。
エコフロンティア笠間のレベニュウー債償還実績

 今後は、県からの長期借入金の繰り上げ償還を積極的に行い、財務体質の強化と県の財政健全化に資することが重要です。
 エコフロンティアかさまの埋めてて容量は240万立方メートルです。平成27年度末の埋め立て進捗率は47.9%です。今後、処分する廃棄物の量を削減することは重要ですが、完全にゼロにすることはできません。最終処分場は県民の生活や産業にとってなくてはならない施設です。残された処分容量を大切に活用しながら、健全な経営に努めていただきたいと思います。