大規模太陽光発電施設を視察する井手よしひろ県議ら
太陽光発電施設の急増を受け、未着工による弊害解消へ/悪質な“計画転売”も防止
 太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を、事前に決めた価格で電力会社が買い取る制度が「固定価格買い取り制度(FIT)」です。2011年8月に成立した「再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)」により、12年7月から実施されています。このFITのあり方を大幅に見直す改正FIT法が1日に施行されました。FIT改正法のポイントをまとめた。
 FITは、家庭や企業の電気料金に上乗せされる「賦課金」を原資に、大手電力会社が再生可能エネルギーで発電された電気を発電事業者から買い取る仕組みになっています。
 FIT開始当初、発電設備の導入を促すため、政府は買い取り価格を高めに設定。その結果、設備整備が比較的容易な太陽光の発電設備の導入が急激に進みました。
 経済産業省資源エネルギー庁によると、2016年10月末時点で国から認定された事業用(非住宅用で10キロワット以上)太陽光発電の設備量は全国で7550万キロワット。住宅用(10キロワット未満)も合わせると約8000万キロワットに上り、全ての再生可能エネルギーの認定設備量の約9割を太陽光で占められています。
 一方で、認定されたにもかかわらず、発電設備の導入計画が未着工のまま放置されているケースも目立ちます。特に事業用太陽光発電で顕著で、実際に運転を開始した設備は約2670万キロワットにとどまっています。
 資源エネルギー庁によると、電気の買い取り価格が高かった初期の計画に、未着工のものが多いのが現状です。
 計画が国から認定された当時の買い取り価格は、その後も変わらず維持されます。そのため、設備の部材価格が下がるまで建設を先送りし、導入コストが下がるのを待って事業を始めれば、より大きな利益が得られるのです。
 しかし、こうした理由による未着工計画が増えると、再生可能エネルギーの発電設備の導入がどれだけ進んでいるのか分かりにくくなります。その結果、将来的な国民負担の予測も困難になり、適正な買い取り価格の設定ができなくなるという弊害があります。
 中には、初期の高額な買い取り価格の計画を丸ごと第三者に転売するような悪質な事例も見られると資源エネルギー庁は指摘しています。
 こうした現状を踏まえ、改正FIT法が16年5月に成立し、4月1日より施行となりました。FIT改正法では、16年6月末までに認定を受けながら4月1日の時点で電力会社と送電設備の使用契約を結んでいない計画については、国の認定を取り消します。同時に、低価格で安定的に発電を行う後発事業者の参入を促すことにしています。

太陽発電の固定買取価格、賦課金
電気料金への上乗せ抑制/競争入札導入で価格低下促す
 再生可能エネルギーを最大限に活用するため、将来的に太陽光や風力などによる発電量を増やしていくと、大手電力会社の買い取りコストが高くなり、電気料金に上乗せされる賦課金も膨らむため、家計の負担が増すことになります。
 国民の負担増大への対策資源エネルギー庁によると、コスト高の再生可能エネルギーによる発電を支える賦課金は、平均的な家庭で毎月675円に達しています。再生可能エネルギーはまだまだ導入したい、しかし、国民負担は抑制したい。そこに大きなジレンマがあります。
 改正FIT法では、電気料金に上乗せされる買い取り費用を抑制するための対策を盛り込みました。
 発電能力2000キロワット以上の大規模な太陽光発電を対象に競争入札を導入。調達発電量と買い取り価格の上限も設定し、低い価格で応札した計画から認定を行うようにします。
 経産省は、FIT開始時の12年度に1キロワット時当たり40円だった事業用太陽光の買い取り価格を、16年度には24円まで下げました。18年度以降の価格については現時点では決まっていませんが、今後も安くしていく方針です。現行31円の住宅用太陽光の買い取り価格については、19年度に24円に下げることになります。
 風力も17年度に初めて値下げを行います。大型の陸上風力について現行22円の買い取り価格(1キロワット時当たり)を段階的に見直し、19年度には19円へと引き下げます。
 洋上風力や地熱、小規模水力、間伐材などに由来する木質バイオマス発電については、発電設備の完成まで長期間を要するため、19年度まで価格が据え置かれます。